表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/9

源義経×ジャンヌ・ダルク&マキャヴェリ×老子〜小休憩の語らい〜

第一幕 ― 義経とジャンヌ:滅びゆく者たちの光


(あすかが小休憩を宣言し、場がやや和らいだ雰囲気に包まれる。照明は落ち着いた暖色に切り替わり、ジャンヌと義経は並んで座っていた)


ジャンヌ:(義経の方を見ながら、そっと口を開く)

……あなたの最期、聞いたことがあります。奥州で、討たれたのですよね。


義経:(うなずきながらも、どこか遠くを見るように)

ええ。家来とともに逃れ、最後には自ら命を絶ちました。

兄に背いた覚えはない。だが、“勇者”という名が重荷になったのでしょう。彼にとっては。


ジャンヌ:(静かに目を伏せて)

私も、王太子に尽くしたつもりでした。王として即位させ、祖国の土地を取り戻す助けをして……

けれど、私が捕らえられたとき、彼は私を迎えにも来なかった。


義経:(ゆっくりと)

あなたも……“戦が終わった後に、不要とされた勇者”だったのですね。


ジャンヌ:(わずかに唇を震わせ)

でも……私たちは、本物でしたよね?

戦いも、祈りも、命も、全部…

演技なんかじゃなかった。


義経:(力強く)

ええ、確かに。本物であろうとした。

だからこそ、たとえ語り継がれる姿が幻想であっても、その根にある“思い”は、決して偽りではない。


(少しの沈黙。やがて、義経がそっと口を開く)


義経:

……ジャンヌ殿。あなたが火に包まれたとき、恐くはなかったのですか?


ジャンヌ:(迷いなく)

ええ、恐かった。……でも、もっと恐かったのは、あの時、誰も立ち上がらなかったらどうなっていたか、ということ。

誰かが勇気を示さなければ、誰も次に続けない。


義経:(静かに目を閉じる)

……あなたの言葉は、まるで、もう一度“立ち上がれ”と言われているようです。


ジャンヌ:(微笑みながら)

あなたの剣も、私の祈りも、まだ誰かの中で生きてるはず。

滅びたように見えても、私たちは“始まり”だったんですよ。ね、義経さん。


(義経が初めて、少年のような笑みを浮かべ、深くうなずく)



---


第二幕 ― マキャヴェリと老子:支配と無為のあいだで


(一方、円卓の反対側では、マキャヴェリと老子が静かに向き合っていた。)


マキャヴェリ:(ワインを軽く回しながら)

……東洋の哲学者は、皆静かですな。

特にあなたの言葉は、いつも静かすぎて、少し不気味に思えるときがあります。


老子:(小さく笑いながら)

それは、そなたが常に“音”を求めているからです。

言葉で民を導こうとし、記録し、体系化しようとする。

だが、真の治めは、気づかれぬものです。


マキャヴェリ:(鋭く)

だが、それでは何も動かない。

国家というのは人間の“混沌”であり、それを束ねるには、明確なルールと力が要る。

あなたの“無為”では、戦火も腐敗も止められない。


老子:(静かに語る)

力をもって混沌を制しても、さらに強い力が生まれるだけ。

争いは、争いを引き寄せる。

私は、人が“足るを知る”ようになることこそ、治めの本質だと信じております。


マキャヴェリ:(ふと、グラスを置き)

……あなたの言葉には理想がある。そして不思議なことに、それが“怖い”と思った。

私は常に現実と戦ってきた。人の裏切り、暴動、野心……

あなたのような理想は、美しすぎて、脆く見えるのです。


老子:(そっと頷く)

理想とは、脆きものです。

だが、脆きものを育てる手こそ、為政者が本来持つべき“徳”ではないでしょうか。


(マキャヴェリ、しばし沈黙。やがて、低く笑う)


マキャヴェリ:

…あなたは、私が一番“信じたくない類の人物”です。

けれど、私は…その言葉を、羨ましく思ってしまう自分がいる。


老子:(目を細め)

ならば、そなたの中にも、きっと“道”は宿っている。

あとは、見えぬことを恐れぬことです。


マキャヴェリ:(やや苦笑しつつ)

それは政治において、いちばん難しいことだ。


(ふたりは見つめ合い、静かに杯を交わす。言葉なき理解が、そこに流れている)



---


幕間 終了――そして次章へ


(あすかが中央に戻り、声を整える)


あすか:

ありがとうございます。皆さんの言葉の一つひとつが、どこかで交わり、時を越えて響き合っているのを感じました。

それでは次のラウンドへと参りましょう。

「もし、現代に勇者が現れたら?」

今この時代に、皆さんのような存在が現れたら――社会は、どう反応するのでしょうか?


(照明が再び切り替わり、新たな対話の幕が静かに上がる)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 現実主義者の悲哀ですね。  理想での統治を実現させることができないからこそ、次善の策として力による秩序の構築に頼らざるを得ないわけで。義経やジャンヌも結局は力による改革の実行者という点で、それまでの…
韓非子ではなく、マキャベリと老子を 対話させちゃうところが非凡ですよね。 まあ韓非子には老荘も入ってますから、 対立点が曖昧になるからかもですけど。 マキャベリさんって、信仰については どんなスタ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ