【プロットタイプ】俺に下さい
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
恋じゃないんですよ。敬なんですよ。
――生まれてから病弱だったせいか、周りにいた家族達が甲斐甲斐しく世話を焼いていた。
――其れをウザったいやら、面倒やらと思った事は無い。けれどもだからこそ、誰に凭れずに生きていける奴を人一倍、羨ましく思う。故に執筆という趣味に益々倒錯するのもその一つで。
――生涯、俺の頭を埋め尽くすのは執筆で、其れに取って代わるものは無い。其れは友人であっても恋人であっても言える事。
――故に生涯誰かを恋する意味で好きになる事はきっとない。しかしあえて好みを上げるならば、俺の世話を甲斐甲斐しく見るような奴ではなく、俺が居なくても生きていける奴だと思う。
結婚前の挨拶に訪れると、嫁となる女と瓜二つな母が俺を出迎えてくれた。
出会った時からハイテンション。此方の言葉さえ奪って話をする様は、根っからの話好きなのだと察した。逆に隣に立つ無骨で目付きの鋭い男は、ただ寡黙に此方の様子を伺っている。
「ねぇねぇねぇ!! 瑠衣たん!!」
「その前に部屋に上げてやれよ」
井戸端会議を開始する前に、無骨な旦那は嫁に釘を刺す。すると悪びれる事のない謝罪を飛ばして、俺を部屋の中へと招き入れてくれた。
旦那の振り向き様に俺と目が合う。目付き自体は鋭く、相手を威圧する様な空気があるが、僅かに気遣いを感じさせる。どうやら思っていた以上に歓迎されていたようだ。
「出会いは何処なのー!! やっぱ高校!! 高校だよねー!!」
「何処デート行ったのー!!」
「ねぇねぇねぇ!! キョーカの何処を好きになったのー!!」
「おい……せめて、一つづつ投げ掛けろよ……」
「それ本人がいる前で聞くの?」
リビングに案内され、四人がけのテーブルに着くなり、鏡花の母の言葉が弾丸の様に浴びせ掛けられる。此方が動揺しているのを感じ取ったのか、旦那と鏡花が止めに入る。それでも興奮が抑えられないのか、隣に座る旦那の体を平手で何度も叩いていた。
いくら母の生き写しで、性格も似ているとは言え、流石の鏡花も止める側に回っている。
「じゃあじゃあじゃあ!! キョーカの好きなところー!! パピーもキョーカも盛り上がる奴ー!!」
「強いところ……っすかね」
思っていた以上に、すんなりと言葉に出た。時が止まる。母の真っ赤になった表情も、旦那の鋭い目付きも、鏡花が唖然とする様も、全てそこから動かなくなる。
見掛けは母の生き写し。顔立ちも、声も、性格も。赤が似合って、奇抜で、何処かネジが外れている。激しく躍動する血のように生命力溢れた存在。
けれども其れは、なけなしの全てを使って吐き出された人格の一つに過ぎない。本当の人格など何処にもない。全て自分の駒に食わせてしまったから。だから本当は何も無い。空蝉でしかない。それでも。
「強いんですよ。問題に直面しても、自分で考えて立ち向かう。それでも駄目なら少しだけ相手の手を借りる。絶対に丸投げしないんですよ。依存しないんですよ。
俺は病弱です。きっと鏡花よりも早く亡くなると思います。でも、鏡花なら俺が居なくても大丈夫だと思うんです。一人でやってけると思うんです」
彼奴は『中身は死んだも同然』と言っていた。死の恐怖に立ち向かうのは、相応な恐怖がある事は、俺も身をもって知っている。でもそれさえ超えた奴だからこそ。同じように受け入れたからこそ。
「鏡花を俺に下さい」
今の今まで見て頂いた通り(最終回じゃないよ?)、鏡花は脆さを見せる事はあります。でも依存しないんですよ。
創作において、常に自分が上にあって、相手が下にあるんです。
『助けて下さい……』じゃなくて、『お前今から利用するから。ヨロ』なんですよ。
断っても聞く耳持ちません。何処までも我を通します。
そして『死んでいる』と称する程に、自分をぶっ壊しても、振り切って何かに打ち込む強さ。
他者を利用してでも我を通す傲慢性。
死に様をこの身に刻んでも目的を諦めないこの強さ。
これこそが瑠衣が惚れたところ。というか、敬ったところ。
瑠衣は生まれた時から病弱です。
だから頼らざるを得ない事も多かったと思います。
それ故に『依存しない人間』を選ぶのは最もかと。
憧れなんですよ。瑠衣にとって一人で生きていける人間っていうのは。
だから生涯、女にも男にも恋する事は無いけれど、あえて好きなタイプ(人間)を上げるなら、こういう人間だよ。
って話。
やっぱり足掻く人間が大好き。なりふり構わず必死な人間が大好き。
キョーカの両親の話もあるんですよ。
かーちゃん、認めた人には尽くす側なんですよ。