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プロローグ

 警備員。それは守護(まも)ることに特化した職業。

 特別な権限は持たないが、己の知識や経験、技能を活かして様々な事案に対処する、民間人における特殊技能者(スペシャリスト)である。


 ……なんて、そんなの一部の大企業か、物語の中だけの話だ。

 大多数の警備員は、まともに教育など受けてないし、訓練なんてしたこともない。

 たぶん。いや、少なくとも俺はそうだ。

 所属した会社で受けた新任教育だの現任教育だのは、かなりおざなりな内容だった。

 ちょっと動画を見たり、教本眺めたり、お茶したり雑談したり。

 護身術とかの動画を眺めるのはそれなりに楽しかったけど、それ以外の知識を詰め込むための教本読みなんかはめんどくさいだけだった。

 そんな俺でも警備員として勤められるんだから楽な仕事だ。


 楽そうだからという理由で飛びついた求人が、夜間の施設警備員だった。

 そこに情熱も何もありゃしないし、楽に金が貰えるならそれでよかった。

 実際楽だし。

 拘束時間長い?

 知らん知らん。

 暇な時間は遊ぶだけだ。


「罠置くぞー」

『ほーい、誘導すっぞー』

『はいかかった! 叩け叩け!』

『っしゃ部位破壊終わり。トドメいつでもどーぞ』


 今日も今日とて、動きが無い監視カメラをチラチラと見つつ、ボイスチャットをしながらゲームに没頭していた。


『にしても堅斗よぅ、お前仕事中だろ? こんな遊んでていいのかー?』

『そうだぞー不良警備員。ちゃんと仕事しろー』

「うっせぇなぁ、会社にも一応確認取ってるっつの。つーか何度目だこのやり取り」

『定番ネタになってるから諦めろ。それより次のクエ行くぞ』

「あぁ、スマン、ちょっとトイレ行ってくるわ」

『はいよ、装備見直しながら待ってるわ』


 連続プレイ時間も長くなり、トイレついでに少し一休みと思ってコントローラーを置いて監視カメラを見ると、映像に奇妙な光が浮いているのを確認した。

 現場を確認するために、めんどくさいと思いながらも警棒やベルト等の装備を着用し、カメラが映していた現場へと向かう。


「ったく、どこの馬鹿だこんな時間に……どっから入ったか知らんが、俺の貴重なゲームタイムを邪魔しやがって」


 誰に聞かせるでもない文句を言いつつ、懐中電灯を灯し、適当に周囲を照らしながら歩く。

 他の現場は知らんが、少なくとも俺の現場では異常が見つかったら即時巡視に行けと言われている。

 何か変なものがカメラに映れば現場に急行しなければいけないのだ。

 警備している施設から依頼される付帯業務(雑用)が無いのはいいが、そこだけは徹底しろと言われているので仕方がない。

 文句を言いつつもやる事はやることにしている。


「誰かいるのかー?」


 現場の部屋に到着した俺はやる気のない声を上げながら扉を開け、内部に不審者がいないかを確かめる。

 懐中電灯を振り回し、死角になってる部分も見て異常が無いかを確認するも、特に何も見受けられない。

 何もないならそれでいい。むしろ無い方がいい。面倒が少ないからな。

 義務は果たしたとばかりに踵を返したところで、微かに声のようなものが聞こえた。


「……テ」

「? やっぱり誰かいるのか?」


 見落としたのだろうかと再度室内を全体的に確認しても、やはり何もない。


「聞き間違いか……?」


 しばらく耳を澄ましながら待機したが、それ以上何かが聞こえることもなかった。


「……戻るか」


 これ以上待っても何も無いだろうと見切りをつけ、当直室に戻ることにする。

 ドアノブに手をかけ、扉を開いて外に出ると、


「……は!?」


 そこは、見知らぬ中世っぽい村だった。

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