第04話 魔法少女
ポップしたのはミノタウロスだった。
よっす、さっきぶり。
「じゃないよー! なんで狂敵が2連続で出てくるんだよー!!」
狂敵とかゴリゴリにダンジョンに挑んでるガチ勢でも1ヶ月に1回出会うかどうかだよ!? 2連続って……しかも狂敵の出現自体が激レアな第01階層で……!!
「ヴオォォォォーー!!!!」
ミノタウロスが巨大な刀を掲げ咆哮を上げる。不死の効果でスタンは一瞬で解除されたが、声がデカくてうるさい。
漫画だったら『ドドン! ミノタウロス!』と、背景に筆字で書いてそうなカッコいいポーズを決めているミノタウロス。くそう、この世界は漫画じゃないし、おまえ登場2回目だからな。
「まずい……今度のミノタウロス"大刀"装備じゃん」
第01階層に限らず、【地下迷路ダンジョン】での狂敵はミノタウロスが定番である。
ミノタウロスは出現するたびに装備が違い、持っている武器によって戦闘難度が上下する。
もっとも戦いやすいのは素手、2番目が金棒、3番目が大斧、4番目が大刀、5番目が大鎌……だったと思う。
一番厄介なのは腕が6本でブレス(炎)を吐いてくるパターンらしいが、それはもうミノタウロスと呼んで良いのか謎である。
今回は大刀。青龍刀を2倍サイズにしたようなバケモノ武器を持っている。大刀タロスは先ほどの金棒タロスよりも難易度がはるかに高い、らしい。
というか単純に『斬撃』がヤバい。
打撃武器である金棒の攻撃は相打ちを狙えたが、斬撃を受けた場合の私の身体がどうなるか『?クエッション?』なのだ。
不死なので真っ二つになっても死なないだろうが、胴と脚が離れた場合の『動けなくなる可能性』がヤバいのである。
≪可能性その1≫
上半身と下半身で真っ二つになるが、瞬時に胴体から下半身が生えて再生する。
こうなればOK。マズさ0%。下半身が色々丸出しになるが、とくに問題なく相打ち戦法を継続できる。
≪可能性その2≫
胴体と下半身が真っ二つになっても再生しない。胴と脚をくっつけるまで回復せず動けなくなる。
かなりマズい。マズさ80%。胴体だけでは歩く走るなど全ての移動行動が封じられる。戦うことは無理、時間稼ぎならギリいけるか?
≪可能性その3≫
真っ二つになった時点で死亡扱いになり、目の前が真っ暗に……しかし不死の力で自動的に蘇生して回復する。
HPが0になった時点で機能停止して、ある程度回復再生してから意識が戻るパターン。絶望である。全滅不可避。私が気絶している間にご主人様は殺されるだろう。
うーん、とにかく検証が足りない。
さっき契約したばかりだから仕方ないけど、不確定要素が多すぎる。少なくとも実際に死ぬほどのダメージを受けた場合(HPが0になった場合)自分がどう回復するのかだけでも知りたい。
「とりあえず、ご主人様には逃げてもらって……」
ミノタウロスへの注意は切らさず、私はご主人様の方へ視線を向ける。
――その時、薄暗かった地下通路に、とてつもない光が照らされた。なにこれ眩しい!
「逃げなくも大丈夫っす!」
その光の中心に、
「ウチが戦うっす!」
ご主人様が立っていた。
しかし、その姿は、先程までとはまるで別人だった。
茶のかかっていた黒髪は煌めく銀色に。
漆黒だった瞳は淡い藤色に。
着ていた制服は可愛らしい純白のドレスに変わり、小さな羽が付いている。
所々受けていた外傷はまったく見当たらない。すべて治っているようだ。先ほどまでの満身創痍の姿とは違いキリリとした爽やかな表情をしている。可愛い。
てか全身輝いていてまぶしい!
誰コレー……ってなりそうだけど、間違いなくご主人様だよね? 語尾に「すっ」ってついてたし。
私の拙い記憶によると、たしか希少職に【魔法少女】というジョブがあったハズだ。変身することで大きな力を得て敵を倒す、そんなジョブだった気がする。初めて見たが、なんかこのメルヘンな感じは魔法少女で間違いないと思う。たぶん。
「マジカル☆……」
ご主人様が金属バット(先程までと同じものだがリボンが付いてる)で宙に円を描く。空中にいくつもの魔法陣が浮かび上がり、そこからポコポコッとぬいぐるみのような小さな熊が現れる。
「トゥインクル☆……」
ご主人様の詠唱(?)は続く。子熊は全部で10匹。身長は80cmくらいで各々葉っぱで作られた可愛らしい服を着ている。
「ベアーミー!!」
『マジカル☆トゥインクル☆ベアーミー!!』
ベア、アーミー。
ベアとは日本語で熊のことである。
アーミーとは陸戦部隊、もしくは陸軍のことである。
ご主人様が召喚したのは、熊の兵隊だった。
クマ陸軍だった(・(ェ)・)。
可愛いクマのぬいぐるみにしか見えないがアーミーだった。葉っぱの服だと思ったものは機能性を追求したギリースーツだった。よく見たらヘルメットとか実に陸軍っぽい装備だった。
さらに子熊達は全員ゴツい鉄砲を持っている。ライフル銃、機関銃、バズーカ砲。銃火器には詳しくないので細かい種類はよく分からないが、どれもイカツくて大きい。重さでフラフラしているクマもいる。
子熊達はご主人様を中心に輪を作り、輪形陣を組んで銃口を構える。ミノタウロスは突然の展開に戸惑っているようだ。ちなみに私も戸惑っている。
陣の中心に陣取ったご主人様が右手を上げて、大きな声で号令を上げる。
「マジカル☆一斉掃射!!!」
一斉掃射!?
え!? ファイアってそういうコトだっけ!?
子熊達の持つ銃火器から一斉に光の弾丸が発射される。
通路を埋め尽くすほどの大量の光弾は一気にミノタウロスを飲み込む。
ドドドドドドド!!!!!ドパーン!ドパーン!
子熊達は容赦なく銃弾を撃ち込んでいく。機銃兵、ライフル兵、バズーカ兵、弾を撃ち尽くす度にリロードを挟むが、連携によってミノタウロスが動くスキをまったく与えない。
見事な波状攻撃だ。
「ヴオォォォォ……!!!」
ミノタウロスは魔法の弾丸に撃たれ続け、その場から動けず、なすがまま、苦しみの声を上げることしかできない。
私も目の前を通り過ぎていく輝く銃弾をただ見ていることしかできない。この光る弾丸の一発一発が攻撃魔法なのだろう。キラキラしていてもはや「キレイダナー」という感想しか出ない。なんか大量の打ち上げ花火を連続でひたすら撃ち続けてる感じである。威力はもちろんソレの比ではないが。
「とどめっっすーー!!」
最後にご主人様が叫びながらバットを振り上げ、ミノタウロスの脳天を打った。
パーン!! という音と共に、ミノタウロスは魔石の雨となって消えていった。
いやいやいやいやいやいや、強すぎだろ。
……これが【希少職】。
私のように第01階層でチマチマと小物を狩って日銭を稼ぐ【底辺探索者】とは違う。
真の意味でダンジョンに挑み、強敵を狩り続け、奥へ奥へと階層を進み、未知を探索する。その資格を持つ者。
「やったー! やったっすー! レベルもめっちゃ上がったっすー!! ばんざーい!!」
ばんざーい! ばんざーい! と言いながらスカートをヒラヒラさせながら飛び跳ねるご主人様。子熊達も各々一仕事終えた感で一服している。か、可愛いやないか…!
「あ、そうだ。先輩もコレをまくっす!」
飛び跳ねていたご主人様が何やら小袋を渡してくる。中身はカラフルな小さい紙の束だった。
え? なにこれ? もしかして紙吹雪?
「『狂敵』初勝利を祝いまして! ばんざーい! ばんざーい! っす!」
っす、じゃねえ。と思いながら渡された紙吹雪を撒く私。なんだこのノリは。やりたくないけど頼まれたら断れんのよ、忠犬的に。あと、初勝利じゃなくてご主人様の戦果は2体目だからな。
『ピロロン、ピロッロ〜!』
『【祝福の紙吹雪】の効果で取得経験値が2倍になります』
―――――アイテム―――――
【祝福の紙吹雪】《消費》
戦闘終了時に撒くことで取得経験値が2倍になる。
市場価格300万円
――――――――――
「え!? ヤバっ! めっちゃ神アイテムじゃん!! って300万!? なんつーもん使わせるんじゃご主人! こんなもん売れよ! 売れよー! 使うなよー! わーーーん!!!」
「やったー! やったっすーーー!!」
狂敵との戦闘が終わり静寂を取り戻したダンジョンの地下通路に、ご主人様のばんざーい三唱と、子熊達の拍手と、半狂乱になった私の泣き声が木霊するのだった。
…
……
………
――こうして私はご主人様と出会った。
2年間、第01階層から進むことのなかった私の探索はようやく進み始める。
これは、
忠犬少女の私と、
魔法少女なご主人様が、
現代に現れたダンジョンをゆるーく攻略する物語である。
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