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第21話 曇山ダンジョン②


――曇山くもりやまダンジョン 第01階層 森の奥――


「ついたっす! ここがウチラが襲われた場所っす!」


ご主人様が元気よく案内してくれたのは、森の奥にかなり進んだ(ご主人様にとっての)いわくつきスポットである。


曇山くもりやま第01階層の正規ルートとは真逆の方向で、木々が茂り、薄暗く、なぜか森中に突然存在する高さ10メートルの巨大な岩石(・・・・・)(山?)と相まって、視界がまったく通らない、そんな場所。


もし、こんなところで誰かに襲われでもしたら完全犯罪は確実だろう。


「ここがうわさのボコ☆スポットか……」


ご主人様が男探索者2名をボコった場所。

通称『ボコ☆スポット』である。


「先に襲って来たのは向こうっす。ウチはただ自衛のために反撃しただけっす。悪くないっす」


ご主人様が口をとがらせて反論する。私のつけた名前『ボコ☆スポット』があまり気に入らないようだ。


「その件についてはご主人様が全面的に正しいよ。ダンジョン内で襲ってきた時点で彼らは『盗賊』だし、モンスターと同類だよ。ボコして問題ない」


こんな可憐なご主人様(プラス1名)に、一体なにをする気だったのか。クソ男ども絶対許せない。


「たぶん死んではないと思うっす。一応、出口の係員さんに報告しといたっすし」


動けないくらいボコったようである。良いぞ。係員さんが救助してくれていれば生還しているだろう。まあ、彼らが持ち場を離れて盗賊ごときの救助に行くかどうかは疑問ではあるのだが。


あんまり深くは考えないでおこう。

盗賊はモンスター。盗賊はモンスター。


「それにしてもここはモンスターが少ないっすね。さっきから白餡しろあん索敵さくてきにも引っかからないっすし。ここに来るまでも1匹しか出会わなかったっす」


曇山ダンジョン第01階層では【ウィルオウィスプ】という精霊系のモンスターが出現する。光る風船みたいなモンスターだ。森中をふわふわと飛んでおり、探索者を見つけると急に素早い動きで体当たりしてくる。当たるとかなり痛い。複数匹に囲まれるとめちゃ危険である。


ウィルオウィスプもゴブリンもドロップは同じ魔石1個である。しかしウィルオウィスプの方がモンスターとしては圧倒的に人気がある。斬っても返り血が飛ばないからだ。汚くないし臭くないのだ。


しかも人型のゴブリンと違って風船みたいな見た目なので、殺すことに対しての忌避感きひかんが少なくてすむ。


「正規ルートから外れるとモンスターの出現率が落ちるみたいだね。その分、採取を安全に行えるんだけど、ご主人様にとっては物足りなかったかな」


今回、私達がわざわざ人気のないボコ☆スポットまで移動したのには理由がある。新スキルの検証のためである。


ご主人様が新しく覚えたジョブスキル、


―――――ジョブスキル―――――

◇マジカル☆トゥインクル☆ベアトラス《条件》

 巨大な光る熊が出現する。

 ※魔法少女に変身中のみ使用可能

――――――――――


の検証をするのだ。


『マジカル☆トゥインクル☆ベアトラス』


ベアとは熊のことである。

アトラスとは神話時代の巨人の名前である。


モンスターハウスをクリアした時のレベルアップで覚えたのだ。試しに晴町はれまちの第01階層で使ってみようとしたところ、


『使用するには広さが足りません!』


と、メッセージが出て使えなかった。


たぶん地下迷路の通路でこのスキルを使うには『空間の広さが足りなかった』のだろう。予想ではあるが、めっちゃデカいクマが召喚されるのだと思う。


「それじゃあ、変身して使ってみるっす。召喚したら打ち合わせ通りこのデカ岩を攻撃してみるってコトで良いっすね?」


「うん。どれぐらいの威力か試さないとね」


ここを選んだ理由その2だ。

なんかデカい岩がある。


ご主人様がボコった時もこの巨大な岩を確認している。曇山ダンジョンの森の中にはこんな感じのバカでかい岩が所々何個も配置されているのだ。


大岩が邪魔で迂回うかいしなければならなかったり、けっこうウザい存在らしい。


「いちおう白餡には撮影しておいて貰おうかな。あとで動画でも確認したいし」


たぶん巨大なクマが召喚されるのだろうが、クマのスキルとかいろいろ記録しておきたいからね。自らの手札を知りし者こそがいくさを制するのだ。


「わかったす! それじゃあ『魔法少女変身』っす!」


ご主人様が、スキルを発動するとその全身がまぶしい光に包まれる。変身シーン、何度見てもとうとい……


ご主人様の服が消えて(光によって裸体は見えないが、身体のラインはバッチリ浮かんでいる。いつも思うけどなんなのこの光。めっちゃ邪魔なのだが。一瞬でも裸が見えないかめっちゃ動画とか確認したけど1コマも見えなかった。信じられない。ふつうなら一瞬くらいおこぼれがあっても良いじゃん。なんで見せてくれないの? 謎の光マジでうざい。近くで見てる私には生殺しなんよ。生き地獄なんよ。いやご主人様の身体のラインが見えるだけでも天国ではあるんだけどさ。天国ではあるけどもさー。不死で再生能力上がってなかったら血涙けつるいを流しているところだぞおい。修正しろ)次の瞬間、魔法少女の姿に変身した。


銀色の髪と淡い藤色の瞳。

丸っこいハネのついた純白のドレス。


かわ、かわ、可愛い…………!!


尊い……!! ハア、ハア、ハア………!!


ご主人様は「シャキーン!」と可愛らしいポーズを決めている(変身後はポーズを決めるように私が頼んだ)。


「それじゃ、使ってみるっす! マジカル☆トゥインクル☆ベアトラス!!」


私の息が荒くなっていることも気づかず(気づかせるワケないやろがーい)、ご主人様がスキルを発動する。


ヴォン……という低い音とともにご主人様を中心に、足元に大きな魔法陣が出現する。そしてご主人様が光の粒子をまとって宙に浮かび上がると、魔法陣が大きく発光した!


ピカーーーー!!!


まぶし!


「こ、これはっ……!?」


魔法陣からの発光が徐々に消えていく。


そこには、


巨大な光るクマとなったご主人様がいた。


大きさは10メートル以上はあるだろう。

巨岩よりも頭ひとつ大きい。


ヌイグルミちっくなゆるキャラフォルムではあるが、黄金に輝く巨大な姿は神々(こうごう)しさすら感じる。


かつて東大寺の大仏様は黄金に輝いていたそうだが、かなりの迫力だったであろう。今ならそれが分かる。


「せんぱぁぁいぃぃ。ちっこいっすぅねぇぇぇ。ウチィでぇっっかくぅぅなっったっっすぅぅぅ」


巨大クマのご主人様が喋った。しゃべったあァァ!? 若干ゆっくりではあるが人語を喋れるようだ。


ちっこい発言はふだんなら戦争であるが、今のご主人様からしたら、すべての人類はちっこい存在だろう。


それにしてもまさか、召喚ではなく『ご主人様自身が変身する』とは……魔法少女変身からさらに巨大クマに変身というのはコンセプト的にどーなのかと疑問に思う。まあなんか強そうなのでヨシ!


「それじゃあぁ、ぶん殴って、みるっっすぅぅぅぅ」


ご主人様がぐぐぐっとクマのこぶしを振り上げる。動作はかなり遅くなっているようだ。素早いモンスター相手では使えなそうである。


「てぇぇりゃゃあーーっっすぅぅぅ!」


ドグォォォーーーンン!!!


ご主人様の放った右ストレートが巨岩に突き刺さる。巨岩は凄まじい威力を受けて森の木々を倒しながら転がっていった。


やべーー! 威力やべーー! 風圧と土煙で吹き飛ばされるかと思った! 近くに大きな樹があってそれの後ろに隠れなければ私まで転がってるとこだった!


「せぇぇんぱぁぁいー。だいじょおぉぶっすかー?」


「あんまり大丈夫くなーい。私まで風圧で吹き飛ばされるかと思ったー。威力すごすぎる。殴った岩どーなったー?」


あれだけのパンチである。真っ二つに割れてるか、少なくともかなり砕けてはいるだろう。こえー。かなりこえー。


「そっすねぇぇ……なんかぁぁ動いてぇいるっっすぅ」


「え?」


「こいつぅ、モンスタァーだったみたいぃっすぅぅ」


「ええーーーー!???」


―――――モンスター―――――

【タイタンロックサウルス】

普段は巨岩の姿に擬態して眠っているトカゲ。

一定以上のダメージを受けると目覚めて襲ってくる。

――――――――――


白餡が素早く鑑定してくれた。ありがたい。


ていうか、なんだこのモンスター!? 曇山の1層にこんなヤツいるなんて聞いたことないぞ!? 新種か!? 新種のモンスターか!? 発見者は我々か!?


「せんぱぁぁい、へぇんしぃんのぉぉのぉこり時間も少なぁいしぃ……とりあえずぅ、たおぉすっすぅぅ」


巨大に輝くクマ(これが私のご主人様!)が戦闘態勢に入る。巨岩トカゲも尻尾をブンブン振って威嚇いかくしている。これは……まずい!


私はその場から全力で逃げ出した――


2匹の巨獣は森を巻き込んで戦いを開始する。


激突の余波で森に地響きが起こる。


木々は揺れ鳥達は飛び去る。


彼らの前では森の木などあってないようなものだ。


巻き上がる土煙に飛び交う樹木。


森に暴風が吹き荒れているようだ。


私はその2匹の戦いを背に、全力で逃げている。


巻き込まれても死なないが、ふつうに巻き込まれたくはない。


巨大なトカゲが『ギャオオオー!』と鳴き声を上げると、黄金のクマも負けじと『ぐまーー!』と声を上げる。


ご主人様、ノリノリすぎない!?


2匹の決着はすぐについた。


黄金のクマが巨大トカゲを押さえつけ、口からいた光のブレスによってトドメをさしたのだ。岩のトカゲは無数の魔石となって消えた。


黄金のクマも「ぐまーー!」と棒読み気味の雄叫おたけびを上げて消えていった。


森に静寂せいじゃくがもどった。


良かった。


……

………


しばらく曇山ダンジョンセンターでは『黄金のクマと巨大なトカゲの戦い』が話題になった。


あの怪獣大決戦が幾人かの探索者に見られていたのだ。


正規ルートとは逆の森だったのでそれほどの目撃者はいなかったようだが、(望遠で鮮明な映像ではないが)動画も撮られていたようだ。


黄金のクマと岩石トカゲについて色々と憶測が飛び交ったが、その正体は把握されていない。


私とご主人様はあの後、防具の性能チェックを行うことも忘れて早々にダンジョンから脱出した。なんか人がたくさん集まってきそうで焦ったのだ。


そしてこの件については今も沈黙をつらぬいている。


ネムからの指示である。


「一番いいタイミングでネタバラシ動画をアップするよ!」と、我らの軍師は高々とそう宣言したのだ。



よろしければ、

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☆★☆(^∇^)ノ♪☆★☆


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