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第18話 西門ジロウ


――4月30日 午前10時45分――

――モナズコーヒー 曇山くもりやま店――


「そうだ先輩! この前の動画できたんで見て欲しいっす! 先輩の最終チェックが終わったらすぐにでもアップしたいらしいっす!」


動画……といえば、先日の『イベント部屋』で撮影したヤツだね。もう完成したんだ。動画の編集作業は大変だと聞くけどそんなでもないのかな? そこまで編集に力を入れてないのかも知れんけど。


「ネムちんも自信作って言ってたっす! ウチも見たけどすごい出来だったっす!」


ご主人様がスマホを見せてくる。ゾンビみたいなクマのストラップが沢山ついてる。かわいい。


動画が始まると、やや雑なクマと犬の3Dアニメと共にチャンネル名(?)が表示された。


『【放課後⇒探索女子チャンネル】』


結構長いチャンネル名である。これなら『女子』がない方がスッキリするのではないだろうか? 矢印もいる? チャンネルも『ちゃんねる』と平仮名にした方が丸みが出るのではないか? 編集はネムに全部丸投げしたので文句はないが、多少気になる。


「めっちゃ可愛いチャンネル名っすよねー。動画撮影がんばろーって気になるっす!」


ご主人様にそう言われると素晴らしいチャンネル名に思えてきた。『⇒』は放課後、学校からダンジョンへの道程を表現してるし、『女子』という単語は付けるだけで世の男性方の興味を引ける。『チャンネル』も平仮名にすると某掲示板を連想して逆に中年臭さが出るかも知れない、ふつうにカタカナでベストだ。


その後、動画は『イベントキューブに触る』→『コロシアム転移』→『大量のゴブリンとの戦闘』といったぐあいに進行した。戦闘シーンではゴブリンの血肉が飛び交いだいぶグロい。


「かなり表現キツメだね。探索の戦闘動画はグロ多めがふつうだけど、女子二人で殺ってるってのはショッキングかもね。少なくとも妹には見せられないよ」


「そっすねー。なるべくグロすぎないように注意して編集したらしいっすが、二人とも接近戦主体だからしゃーないって感じらしいっす」


「カメラワークが天才すぎるのは白餡しろあんなん?」


「白餡っす」


なんでもできるなこの白饅頭しろまんじゅうオバケ。ドローンを超越ちょうえつした素早く精密な動きで戦場を縦横無尽じゅうおうむじんに飛び回り、私達を見事な画角で撮影している。ふだんはフヨフヨ浮いてるクセに撮影では手ブレが一切ない。白餡の存在を知らなければ誰にも撮影方法は分からないだろう。


「あとはこの絶世の美少女の隣に映り込んでる、珍竹林ちんちくりんな女子高生にモザイクをかけるだけだね」


「それ先輩っす! ぜんぜん珍竹林ちんちくりんじゃないっす! むしろカッコイイっす!」


「えーでも、けっこう被弾してるしなー。ご主人様と比べられても恥ずかしいしー」


「そんなコトないっす! 動画を見れば、先輩がいかにウチを気にかけてフォローしながら戦ってくれているのか一目瞭然いちもくりょうぜんっす! 分かる人には分かるっす!!」


「え? そう? うふふふふ」


ご主人様にめられて喜ばない犬はいない。


うふふふふふふふふふふふ。


私がご主人様の言葉を全身で堪能たんのうしていると、野太い声のオッサンが私達に話しかけてきた。


「おー、二人とも待たせたなー! 祭りの準備で遅くなってな! すまんすまん! ハッハッハ!」


ムキムキな筋肉質の身体にパイナップルヘアー。10日前にキャンプ用品店で出会った探索者のオッサンである。


「サイモンのおっちゃん久しぶりっす! こんにちはっす!」


「こんにちはー、サイモンさん。今日はよろしくお願いします」


「おう、任せとけ! ハッハッハッ!」


このオッサンの名前は西門さいもんジロウ。曇山ダンジョンをメインに活動するベテラン探索者である。レベルは72だ。


私とご主人様は防具を買うためのアドバイス要員としてめちゃ有能そうなこのオッサンを呼び出したのである。


まあ、ご主人様がメッセランでオッサンにアドバイスを求めたら(いつの間に連絡先を!?)、オッサンが無理やり私達の買物についてくると言ったのだが。


身元がしっかりしてるから大丈夫だとは思うけど(超有名クラン所属)、もしもの時は私がご主人様を守護まもる!


「お、二人でなに見てんだ? 動画か?」


オッサンが目ざとく私達が見ていたスマホに気づく。女子のスマホをのぞくなんてひどい。減点10。


「ふっふっふ、そうっす! これはウチラの探索動画っす! 今日シカチューブにアップするつもりっす! ついに先輩が世界進出するっす!」


いや私じゃなくてご主人様ピックアップしよ?

私なんてゴミくずだよ?


「ハッハッハ! やるな〜嬢ちゃんら! よし、見せてみな! 面白かったら俺が宣伝してやるよ!」


ゴツいオッサンに宣伝されてもどーなん?

複雑な心境である。


しかも今から見るの?

その動画20分以上あるんだけど?


「いいっすよ! 先輩の勇姿を見るっす!」


ご主人様がオッサンにスマホを渡す。オッサンは最初、ニヤニヤしながら見ていたが、動画が進むと徐々に真剣な表情になっていった。



――30分後――



「つまり妹はサイコーなんだよご主人様! クイズ番組とかふつうに全問正解しちゃうし、料理番組とか完全再現しちゃうし、パーフェクトシスターなんだよ! これって控えめに言って神じゃない? やだ私の妹神じゃない!?」


「さっきから話が無限ループしてるっすが、先輩が神とたたえる妹さんにウチも早く会いたいっす」


「そうなんだよな〜。でもな〜。ご主人様が妹にれちゃうかもだからな〜。正直会わせたくないって言うか、会わせたくないんだよね〜」


「ええーーー!? わわ、私は先輩一筋(ひとすじ)だから、だだだ大丈夫っすよー!!」


そんなこんなで私とご主人様が妹トークをしていると、オッサンがようやく動画を見終わったらしい。


「おう、見終わったぞー。すごかった!!」


すごかった!! ……小学生並みの感想じゃん。


「ハッハッハ! まあ、細かく感想を言うと、まずゴブリンだけのモンスターハウスを初めて見た。あれは晴町はれまちの第01か? 第01でイベントキューブが出るという情報だけでも貴重な動画だな」


貴重な動画だった! たしかに第01階層でイベントキューブが出現するなんて私も知らなかった。


「あとは、嬢ちゃん達はホントに女子高生なのか? 近接戦の動きもそうだが、連携がとくにベテラン探索者並みに見えたぜ。よほど二人の相性が良いのか……ゴブリンが相手とはいえ、見事な戦いぶりだった」


二人の相性が……良い……だと???


この瞬間、私の中でオッサンの評価は爆上がりした。


「それに、やっぱり女子高生は華があるな! 嬢ちゃん達はめちゃくちゃ可愛いし、むさいオッサン共の戦闘動画よりも1000倍は見ごたえがあったぜ!!」


むさいオッサンがソレを言うか。

絶賛されて嬉しいけど。


どちらにしろサイモンさんの評価は改めなければなるまい、評価点プラス120です!!


「あと、一応言っておくが9∶07のところと、13∶35のところ……チラッと下着が見えてるから修正しておいた方が良いぞ。嬢ちゃん達の年齢だとバンされる可能性もある」


はーーーい!! マイナス300でーーす!!


ヘンタイデーース!!!


「ししし、下着っすか!? ///」


どうやら動画の9∶07に私の、13∶35のところでご主人様のパンチラが一瞬映っているらしい。さすがベテラン探索者だ、動体視力がすごい。


まあ、


13∶35のご主人様チラは、私も気づいてたけどな!!


「なんてこったっす! パンチラしないようにネムちんが厳しくチェックしたハズっすが、見落としがあったっす!」


チェック抜けがワザとじゃないことを祈る。

まあパンツくらい見えても良いけどさー。


「ハッハッハ! 修正すれば問題ない! 動画の内容は素晴らしかった! 今日上げるのか? 宣伝しておいてやるぞー! ハッハッハッハー!」


「やったっす!」


ご主人様嬉しそうである。


オッサンがどれほどの宣伝力を持っているかは知らないが、私達の初めての探索動画が評価されたのは素直に嬉しかった。


「サイモンさん、ありがとうございます」


私はちゃんとお礼を言える子なのだ。


……

………


後で知ったが、


サイモンさんのSNSフォロワーは80万人いるそうだ。


私達の探索動画は公開初日でバズったのである。



よろしければ、

↓の★応援&ブクマ登録よろしくお願いします!


☆★☆(^∇^)ノ♪☆★☆


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