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第17話 クラン


5月を明日に控えた日曜日の朝10時。


私とご主人様は隣町にある『曇山くもりやまダンジョンセンター』にやってきた。二人の防具を一新して晴町はれまちダンジョン攻略を盤石ばんじゃくの体制とするためである。


今日は学校帰りでないため二人とも私服である。

ご主人様は水色のワンピース。

私はデニムシャツに短パンを履いている。


――モナズコーヒー 曇山店――


「そういうことなんで、『マジックバッグ』はネムちんが買い取ってくれたっす。現金一括で2500万円っす。お金は私が預かってるっす」


ご主人様が高級豆100%のアイスコーヒーを飲みながら教えてくれた。この店で一番高いコーヒーを価格を気にせず買えるようになるとは……私達もブルジョアになったものだ。高いモノは当然美味い。


「おお、めっちゃ色つけてくれたね。相場(2000万)よりかなり高いし。さすがご主人様の親友だね」


ありがとうネム。感動した。

そして、なんでキミそんなにお金持ってるの?


「えへへ、そんなコトないっすよー。『デザインが可愛くてグッド!』て言ってたっす。ダンジョン産はなかなか良デザインがないから、見た目が可愛いだけで付加価値があるらしいっす」


「なるほどなー。そういう見方もあるのか」


『それでも500万は上がらんじゃろ』とは思うので、ご主人様を気づかってのやさしさだろう。防具を買うって教えたらしいし。めっちゃ良い親友を持ったねご主人様。


「あと【クラン】を作るように勧められたっす」


あ、本命があった。


クランかよ。


『クラン』とは簡潔に言うと、探索者が集まって作る会社である。数人で作られた小クランから、数百人が所属する大クランまで、小中大さまざまなクランが存在する。


クランのメリットとしては、


①出費を抑えられる。

②保険になる

③パーティーの幅が広がる

④役割を分担できる。

⑤秘密を共有して隠せる。

⑥魔石、LPポーションを融通できる。

⑦素材の確保。

⑧ドロップを絞れる。


他にもあるかも知れないが私が思いつくトコだとこんな感じである。


①〜⑧まで、ひとつひとつ細かく解説すると長くなるのであとがきに回そうと思う。そうしよう。


「クランね。たしかに『LPポーション』が安定して手に入るようになれば、ネムにもお裾分けしようと思ってたんだよね。早めにクランを作っておくのも良いかもね」


LPポーションの取引は探索者協会が管理しているため、個人間のやり取りは完全に禁止されている。パーティー内などの狭い範囲なら黙認されているが、本来は例え無料の譲渡であっても、LPポーションを他人に渡すコトは犯罪なのだ。クラン内ならばこれがOKになる。


「はいっす! ネムちんもクランに入れば、本人が探索に出なくても『魔道具のレシピ』が手に入りやすくなるっす! きっと喜ぶっす!」


ダンジョン内で手に入るドロップアイテムはパーティーメンバーに依存する。例えば武器がドロップするさいにパーティーメンバーが装備している武器種は落ちやすくなるのだ。これがクランでも当てはまる。


私達の場合だと『クランメンバー』に『魔道具師』がいれば、例えそのメンバーが探索に出ていなくても『生産レシピ』のドロップ時に『魔道具のレシピ』が落ちやすくなる。


ネムというご主人様の親友もいることだし、クランを作って『魔道具レシピ』にドロップを固めるのも良いかも知れない。


『武器のレシピ(鍛冶師)』とか『付与のレシピ(付与師)』とか、使えない(使える人のいない)レシピが連続でドロップしても仕方ないからね。


なによりもご主人様の親友は大切にしてやりたい。

いつもお世話になってますって言いたい。


「わかった、クランを作ろう。初期メンバーはとりあえず三人ということになるけど『設立申請』はネムにお願いして良いのかな?」


言い出しっぺに丸投げしたい。今後もダンジョン探索は私達、ネムは事務作業&生産、という役割分担になるハズだ。


「もちろんっす! ありがとうっす! やっぱり先輩好きっす!」


ご主人様が嬉しそうに笑っている。

ネムを心配していたのだろう。


たしかにネムが『私達のパーティーに入ってダンジョンを探索する』なら、クランを作る必要は一切ない。クランはもっと大人数で作ってこそ意味があるのだ。


今回の件はネムの『探索したくない!』というかたくなな気持ちを、私とご主人様が尊重そんちょうしただけである。


ネム自身も自分にかなり有利な要求をしていると理解しているため、マジックバッグの買取価格を500万円も上乗せしたのだと思う。策士だ。


ん? てか、いま私告白されなかった? 気のせいか? 気のせいなのか!? えー!? 私またなんか聞き逃しちゃいました!? 人生にバックログ機能欲しいー!!


とりあえず、追加でストロベリー&ホイップパンケーキを注文する……うん、落ち着け。動揺どうようした時は甘いものにかぎる。


私がパンケーキを食べているのを見て、ご主人様が【食べたいモード】に入った。めっちゃ『食べたいっす、食べたいっす』と甘えてくるのだ。仕方ないのでいっしょにシェアして食べた。


ご主人様うれしそう。もぐもぐ。


「もぐもぐ、でも、クラン名はどうするんだろうね? ご主人様はなにか聞いてる?」


「もぐもぐ、いえ、ウチは聞いてないっす。ネムちんが勝手に決めるんじゃないっすか?」


「もぐもぐ、てきとーだなー。やっぱり自分達のクランだしカッコイイ名前がいいよ」


「もぐもぐ、例えば、どんなのっす?」


「例えば……【ご主人様とゆかいな仲間たち】とか?」


「ダサいっすー!? カッコよさの欠片もないっすー!! しかもウチがメインとかないっすーー!!」


「【熊と犬】」


「ひえー! 純文学っぽい!! かつてないほど地味な名前っすー! 実際にクラン名として存在してたらゴメンなさいっすー!」


「【晴町はれまち四天王】」


「は・れ・ま・ち・してんのうっすー!? 晴町ってCランクっすよー!? そもそもウチラ四人いないっすし……ん!? 先輩、ウチ、ネムちん、白餡、たしかに四天王っすー!!」


「【スターベア・エイトクラウド】」


「ぎゃーー!! それもしかして、ウチの名前っすか!? やめて欲しいっすー! 恥ずかしくて吐きそうっすーー!!」


ヨシ! 計画通り! いま上げたクラン名はすべて本気で考えたものではない。自分の通したい意見がある時は布石ふせきを敷くことが大切だ。ショボい名前を並べたあとの本命! これなら私の意見が通るハズである! くらえ!!


「【深淵の探索者(アビス・シーカー)】、なんてどうかな?」


「ないっすね」


ないっすねーーー!!??


ツッコんですらくれないだとーー!!?


あかん、この名前のカッコよさが分からないなんて……ご主人様はダークロマンに対しての教養が足りないのか!? カッコええやん……深淵とか超カッコええやん……なんてこった……なんてこった……まあよし、がんばってご主人様に布教してこ。


その後、私達はパンケーキをおかわりした。


二人で食べるパンケーキはとても美味しかった。


もぐもぐ。



――ツカサちゃんのクラン解説!――


『クラン6大メリットとデメリット』


①出費を抑えられる。


売り買いの時に仲介業者を省いて手数料を節約できる。例えば魔石の売却価格は1800円だが、購入する場合は1個2000円かかる。


同じクランの探索者から融通して貰えればこの200円を浮かせられる。たかが200円と思うかも知れないが、質の高い武器や魔道具を作る場合、平気で100個とか1000個とか魔石を使うコトになる。200円でもだいぶ変わる。


生産職が作った武器や防具、魔道具などもクラン内で直接やり取りすれば安く手に入る。



②保険になる。


大ケガをした療養中など、働けない時も収入が保証される。上位のクランでは『呪い』や『欠損』などで探索できなくなった人に対する『LPポーションの保証制度』なんかもある。クランによって契約内容はさまざまだ。



③パーティーの幅が広がる。


クランの人数が増えていろいろなジョブの探索者が所属すれば、それだけ探索パーティーの幅を広げることができる。例えば魔法が効きやすい敵に対しては『臨時の魔法パーティー』で挑む、トラップが多いダンジョンでは『レンジャーを派遣する』など、戦略的対応がしやすくなる。



④役割を分担できる。


戦闘が得意なジョブ(戦士、魔道士など)、戦闘が苦手なジョブ(生産職、補佐職など)、それぞれの得意分野に合わせて仕事を振り分けられる。非戦闘職が無理やりダンジョンに突入して死亡する事故がなくなる。



⑤秘密を共有して隠せる。


少なからず上位と呼ばれるの探索者は秘伝の裏ワザをいくつか隠している。スキルであったり、アイテムであったり、攻略情報であったり、それらをクランのみで共有して独占することで、他の探索者に対して大きなアドバンテージが取れる。



⑥魔石、LPポーションを融通できる。


魔石とLPポーションはダンジョン協会の管轄になっているため、個人でのやり取りは一切禁止されている。ダンジョンセンターに売却する以外は、クラン内でのやり取りのみが認められている。


ドロップしたモノをパーティー内で分け合う程度ならば黙認されているが、それ以外は、例え友人が相手であろうとも魔石とLPポーションの取引(金銭が発生しなくても)は罪となる。怖いオジサンが来るぞ。



⑦素材の確保。


ダンジョンの素材はかなり人気があるため国や企業が買い漁り、個人での大量仕入れは難しくなっている。魔石が1000個欲しいと言ってもダンジョンセンターはすぐには売ってくれないのだ。2ヶ月待ちとかふつうである。


そんな時はクランの保管庫に行こう。ほとんどのクランは生産職のために魔石やモンスター素材をある程度確保している。なくてもクランメンバーに依頼して優先的に集めてもらえば良い。基本的に生産職はクランに入って損はないのだ。



⑧ドロップを絞れる。


ドロップとはダンジョンで手に入る『宝箱』や『モンスターのレアドロップ』のコトである。パーティーの項目でも触れたが、所属するクランメンバーの内訳によって、ドロップアイテムの抽選確率が変化する。


例えば生産職の魔道具師がクランに所属していると、レシピ系がドロップしたさいに『魔道具のレシピ』が抽選されやすくなる。レシピ系自体のドロップ率が上がるワケではないので注意。



追記、クランのデメリット。


クランは所属人数によって『定期的にダンジョン協会に魔石を売却する義務』が発生する。これはダンジョン協会の魔石のストックが枯渇しないための処置である。3人なら年9000個がノルマだ。売却なので当然お金は貰える。


クラン解説終わり!


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