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第12話 探索動画


私がんばる! とは思ったが具体的になにをすれば良いのか分からないので保留。ヘタレな私は先送りが大好きなのだ。


とりあえずはご主人様とのダンジョン探索をがんばるぞい!


――放課後――

――晴町はれまちダンジョン 第02階層――


「そいっ!」


ザックッッ!!


私が斧で斬りつけるとピクシーは砕けて消えた。よし。ゴブリン5匹&ピクシー3匹までならノーダメで対応できるようになってきた。私も強くなったものだ。


レベルは上がらなくとも技術が上がれば戦闘力も上がる。逆に言うと技術がなければレベルが高くても強くはなれない。


「先輩やるっすねー! どんどん強くなってるっす!」


ご主人様がめてくれた! よっしゃーー!

私の心の中のイマジナリー尻尾がブンブン振られている。


「ありがとう。でもご主人様に比べたらまだまだだね。あと2手は省略して戦えたはずだよ」


「めちゃんこストイックっす。向上心のカタマリっす。あれだけ危なげなければ十分だと思うっすけど……」


いや甘い。ゴブリンに対して放った蹴りを斧の斬撃に代替できればもっと素早く処理できたハズである。


ご主人様には内緒だが、私は勝手に『モンスターぶっ殺しRTAリアルタイムアタック』に挑戦している。RTAとはいかに素早くゲームをクリアできるか競う競技である。


最近の私は『ダンジョンのモンスターをどれだけ早く処理できるか?』をひとりで勝手に課題として挑戦しているのだ。


被ダメありの条件ならもっと早い手順もあるが、最近はもっぱら『ノーダメ』レギュレーション専門である。


「そうだ! 今度ご主人様の習ってる古武術教えてよ。あの動きもゲットしたい!」


選択肢が増えればそれだけ高得点につながるハズである!(ゲーム脳)


「わかったっす。『技』は時間がかかって難しいかも知れないっすけど、『心』の部分ならなんとか教えられるかも知れないっす。先輩の戦力アップにもなるかもっす。喜んで教えるっす!」


やさしい! さすご主!


『心』ってのがちょっと不安だけど。


「さーて、次はウチが戦るっすよー!」


少し歩くとまたモンスターが現れた。


ご主人様は私と同じ、ゴブリン5匹&ピクシー3匹の群れを、わずかバット3振りで殲滅した。


意味がわからねーと思うだろ? 私もわからない。


ダンジョンRTAには欠点がある!

素のチートには絶対敵わないということである!


……

………


「そういえば先輩に相談があるんすけど……」


二人でほどよくモンスターを虐殺しての休憩中。

珍しくご主人様がしおらしい感じで話しかけてきた。


「相談? お金以外ならなんでも乗るよ。ネズミ講はもちろん却下だけど」


「違うっす! じつは……ネムちんから動画を撮ってきてほしいと頼まれてるっす!」


ネムとはご主人様の親友の名前である。龍泉たつみネム。ご主人様といっしょに探索者になったが、極度の運動キライで『探索絶対イヤ!』を初日に宣言した猛者である。


「動画? それってネットで配信するってコト?」


探索者の【探索動画】はそれなりに人気がある。


探索動画とはその名の通り、探索者がダンジョンに入って探索するようすを動画で撮影したものである。


ダンジョン探索は探索者にとっては当たり前のことだが、ダンジョンに入れない一般人からしたらとても興味を惹かれるらしい。ダンジョン内はネットに繋がらないため生配信をするのはムリだが、録画でもかなりの再生数が回っている。


最近は飽和気味でよほど珍しいイベントが起こらなければ新規は注目されないだろうが、たしかに勝算がないこともない。


私達が女子高生二人組という点だ。


ひとりは美少女、ひとりはチンチクリン(自虐)と、キャラも立っている。


コレは…………いけるかも!!


「動画を撮って配信するのは良いけど、撮影は誰がするの? ネムが撮影してくれるワケじゃないよね?」


探索の動画は撮影するのが大変なのである。誰かがカメラを持つわけだが、パーティーは4人までなので、戦闘時に戦力がひとり減ることになる。


私達のパーティーは二人しかいないので、私かご主人様のどちらかがカメラを持つことになる。つか、私がカメラ係に決まっている。


どうだろう……? ご主人様ひとりでもイケルかな?


イケル! イケルッ! イケマス!(心の審判員)


ありがとう、心の中の私!

ついでにパーティーについての解説もしておく。


ダンジョンは【パーティー】を組んで探索できる。

パーティーの最大人数は4人である。


4人というのは『ダンジョンの決めたルール』である。

人数制限の側面も強い。


戦闘時に周囲に4人以上いる場合、経験値もドロップアイテムも貰えなくなる。魔石すら落ちなくなる。宝箱も空になる。


また、ボス部屋に入れるのもパーティーを組んでいる4人だけである。イベント部屋も同じくだ。


パーティーを組むメリットとしては、帰還石や転移石など、一部のアイテムをパーティー全体に対して作用させられるようになる点である。


さらに、アイテムドロップ抽選時にパーティーメンバーのステータスが参照されるのもメリットである。


例をいうと『大剣』を装備するパーティーメンバーがいる場合、武器ドロップ時に『大剣』がドロップする確率が上がる。具体的な数字でいうと『大剣』4人のパーティーなら武器抽選時に50%の確率で『大剣』が選ばれるのだ。生産職のメンバーがいれば、そのジョブに適したレシピも落ちやすくなる。


パーティーにとって必要な武器種が手に入りやすくなる、ありがたいシステムである。


このようにパーティーには多少なりとも恩恵おんけいがある。もちろん私とご主人様もパーティーを組んでいる。


――――解説終わり。


「いえ、撮影はこの子がいるから大丈夫っす! カモンっす! キャメラマン白餡しろあん!!」


なぜ『キャ』メラなのか? ご主人様の紹介とともに、白餡がビデオカメラを持ってバーン! と登場した。


「何でもできるねこの子。すごー」


「っす!」


白餡が褒められたのが嬉しいのか、ご主人様は笑顔だ。

可愛すぎる。ハグしたい。


その時……! 私に電流走る……!!


閃いた……!!!!


「白餡がちゃんと撮影できるか少しだけ心配だね。『ご主人様がモデルになって』カメラテストをしようよ」


白餡のカメラテクの確認と、ご主人様の可愛いらしい動画の撮影を同時にできる、一石二鳥の素晴らしい案である! まさか私がこんな悪魔的発想を生み出せるとは……我が目を持ってしても読めなかったわ!


「ええーー、ウチはちょっと恥ずかしいっすねー。先輩がやってくださいっすよー」


先輩がやってくださいっすよー。(エコー)

先輩がやってくださいっすよー。(エコー)

先輩がやってくださいっすよー。(エコー)


なんてこった。


終わった。


忠犬的に。


「それじゃあ先輩! 可愛いポーズおねがいっす!」


カメラを構えている白餡の前で、私は自分が思いつく精一杯の可愛いポーズを取る。ぐぬぬぬぬ、逆らえぬ! これがジョブスキルの力!?


「ヤッバ……!? 可愛いすぎっす……!! 今度はカッコいい感じでお願いするっす!!」


カッコいいってなんだ? こんな感じか? ハッズ! 可愛いポーズより恥ずかしいぞコレ!? 何で私にカッコいいとか求めるんだよー! キャーー!!


「ブハッ……! か、カッコよすぎっす……!! つつ、次は……セクシーなヤツ行っちゃいましょうっす!!」


は?


……

………


その後、ご主人様が『自分が私に命令している』という事実に気づき、泣きながら私に土下座するまで、撮影会は続けられたのであった。


モデルとなっていた少女は語る、


私はもう燃え尽きた……もしこのシーンが映像化されるなら、全カットご主人様の後頭部越しで、私の姿はいっさい見えないような演出でお願いします……それだけが私の願いです……



よろしければ、

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☆★☆ピャー(^∇^)ノ♪☆★☆


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