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10話  作者: マグciel
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緑風竜王の眷属を討つために目覚めた力

 アウストロの放ったブレスの跡には、何も残っていなかった。それと同時に、少し離れた所で声がした。

「…え?白⁉なんで……。」

そこにはシエルを抱えていた白が居た。

シエルはブレスを食らう覚悟であったため、白が自分を助けてくれた事に驚いていた。

「わ、私にも分からないけど、シエルを助けるために速く行かないとって思って。でも間に合ってよかった。」

白は風を纏っており、この現象については白自身も分かっていないようであった。

それでも間に合ったことには安堵し、シエルを降ろした。

「ごめん。白に頼まれてたのに…」

「大丈夫、もう絶対にシエルに攻撃させないから。今度こそ安心して……って言っても信用できないと思うけど…。」

「白のせいじゃないよ!それに信用してるから、私こそ今度は任せて。」

白とシエルが話していると、アウストロは再び飛び上がり雨のように羽を撃ちだしてきた。

白は妖術で壁を張り、シエルは再び力を溜め始めた。

霖青りんしょう

水の壁がシエルを守り、白自身は刀をその場に刺し、壁の横から勢いよく飛び出てアウストロに妖術を放ちながら注意を引いていた。

三連流槍さんれんりゅうそう

3つの水の槍がアウストロに放たれるが、アウストロはそのすべてを避けると、風魔法を放ってきた。

白はそれを避けつつ、自分の拳に水を纏ってアウストロに攻撃した。

「水纏…えーと名前思いつかないしとりあえず殴る!」

アウストロは白に殴られると、地面に墜落した。

しかしすぐに起き上がると、自分を中心として無数の風の刃を放った。

白はその刃を身軽に避け続け、さらに妖術を放った。


 シエルは白がアウストロの相手をしている間、先程のように想像した。

するとシエルの周りの空気が揺らぎ、シエルの魔力が高まっていった。

「(大丈夫、白が信じてくれてるんだから。……魔力を集めて束ねるようにすれば、でも私の中にある魔力だけじゃ足りない。周りにある元素も使うイメージで……)」

シエルがさらにイメージを固めると、凄まじい風がシエルを覆った。

その時、アウストロは白を再び遠ざけると、シエルの方に向かってブレスを放とうとした。

しかし、白はそれを冷静に対応し、地面に刺していた刀の場所へと転移すると、刀を抜いてアウストロの方に向かった。

風纏ほうてん:こがらし

白は風を纏った刀でアウストロを下から攻撃すると、放とうとしたブレスは中断された。

するとアウストロは白たちに対し、羽を矢のようにして攻撃をした。

風旋はんせん

白は羽の矢に向けて風を起こし相殺させると、刀を地面に刺して更に妖術を放った。

檻水かんすい

白はすかさず妖術により、水で出来た檻でアウストロを閉じ込めた。

その時、白の後ろから声が聞こえた。

収斂しゅうれんせし風の奔流よ…」

シエルが魔法の詠唱を始めると、アウストロは自身の位置と白の位置を入れ替え、シエルに対して脚の鉤爪で攻撃を仕掛けた。

白には突然の出来事であったが、またも刀の位置に転移し、その刀で攻撃を受け止めた。

白が攻撃を受け止めていると、アウストロは翼で白を叩き飛ばした。

「風神の矛と化し…」

シエルは魔法の詠唱を続けていたが、それを気にする様子もなくアウストロはシエルに向けて再び風球を放った。

しかしシエルに風球が当たることはなく、かき消されてしまった。

白は急いでシエルの元に戻り、アウストロと対峙した。

「はぁ、はぁ…。霖青を張っといてよかった。でも、そろそろ……。」

するとアウストロはシエルではなく、白に対して攻撃を仕掛けてきた。

鉤爪で白に襲い掛かると、白は的確に刀で防いでいった。

アウストロは攻撃の手を止めることなく、上空に魔法陣を展開すると、その魔法陣から無数の風の刃が白に襲い掛かった。

「風纏:白疾風(しろはやて)

アウストロの攻撃を捌くのに精一杯だった白だが、刀に風を纏わせて上空から襲い来る風の刃に向けて斬撃を放った。

放たれた斬撃は、風の刃を打ち消していき、上空にある魔法陣までも切り裂いた。

しかしそれにより隙ができ、アウストロの鉤爪により、横腹辺りを切り裂かれてしまった。

「ッ⁉がはっ…」

切り裂かれた勢いのまま白は地面に転がってしまった。

血を吐き、横腹を押さえていた白は、ゆっくりと飛びながらシエルに近づき、ブレスを放とうとするアウストロの様子が見えた。

それと同時にシエルの魔法が完成する様子も…。

「…穿滅せんめつせよ。エセリアル・グングニル!!!」

アウストロは溜めていたブレスを一気に解き放ち、シエルは完成させた最上級魔法を放った。

シエルが放った魔法は巨大な槍の形をしており、濃縮された風元素や魔力、さらに僅かだが、『特殊な力』も込められていた。

アウストロは強大なエネルギーのブレスを放ったのだが、最上級魔法に撃ち勝つことはできず、そのままシエルが放ったエセリアル・グングニルによって体ごと貫かれて消滅した。

消滅したことを確認したシエルはその場に倒れてしまった。


 どのくらい時間が経ったか分からないが、いつの間にか気絶していた白がゆっくり目を覚ますと、シエルが横に居た。

「白っ心配してたんだよ!!」

「ごめんね。でも私はシエルの方が心配だったけどね。無理言っちゃったし。」

「私は魔力切れしただけだし、全然大丈夫だよ。」

白とシエルが話していると、翔がこちらに近づいてきた。

「2人とも、合格だ。まさかアウストロを倒すことが出来るとはな。」

翔が2人にそう伝えると、2人は嬉しそうな表情を浮かべた。

そして翔はシエルに対し、宝玉を渡すように伝えた。

「シエル、その宝玉を我に。」

シエルは言われた通りに宝玉を翔に渡すと、翔は宝玉に力を込め始めた。

すると次縹つぎはなだの宝玉はさらに青く輝きだした。

力を込め終えると、翔はシエルに宝玉を返した。

「これでいいだろう。」

「この宝玉ってどこで使うんですか?」

「お前たちが持つ『6つの宝玉』は狭間の世界:イングスティアスにある魔界の扉を開く為に使われる。」

翔が宝玉の使い道について話した。

白もシエルもそれを聞くと、疑問が頭をよぎったため、シエルが翔に質問をした。

「6つって言ってたんですけど、私たちは5つしか持っていないんです…」

「…そう言えばガイアは郷華に託したと言っていたな。ホルスは自分で持っていった故、ガイアも自分で保持していると思っていた。故に賢者の試練をこなしたお前たちはすでに手に入れてるものだと。」

「ガイア…ホルス…って、ホルス・ガイアって1人の賢者じゃなくて、2人の賢者だったんですか!?」

「え!?賢者って5人じゃないの?」

2人は今まで賢者が5人だけだと思っており、もう一人いることに驚いた。

その様子を見た翔は、そう思うのも仕方がないといった感じで話し始めた。

「ガイア……ガイア・ガルフィールドは暗黒神アザトースを封印したのち、世界の人々から自身の記憶や、残された記憶を抹消した後、普通の地土族ヒロントとして生まれ変わり、生涯を過ごしたと聞いている。今やつを覚えているのは神、竜王、旧賢者達だけである。お前たちが知らないのも無理はない。なぜ奴がそのようなことをしたか、詳しくは我にも分からぬが、郷華なら何か知っているかもしれん。」

突然の話に理解が追い付いておらず、少しの間静寂が辺りを包んだ。そして白がふと気が付いた事を翔に尋ねた。

「どこかで聞いたことあるなって思ったんだけど、『ガルフィールド』って3年くらい前までやってたフェルゼン地方の戦争の首謀者の名前だよね。大罪人って言われてる。何か関係してるの?」

「そうだな、ガルフィールドというのは名ではなく、性の部分である。奴は“ローク・ガルフィールド”。シエル、お前の叔父にあたる者。ガイアの子孫である事は間違いない。」

「…ってことは私と兄さんもガルフィールド家になるって事?」

「否。お前たちは母親の性である『セレスティア』を受け継いでいる。セレスティアはホルスの性であり、お前たち兄弟は2人の賢者の子孫ということになる。」

翔は2人が知らないであろうことを多く語った。

白にはあまり関係ない話であったが、シエルには自分の親の事でもあり、知っておく必要のある事柄であった。

「そうだったんだ。兄さんは知ってたのかなぁ。」

「ソイルは知っていたであろうな。それと、ガルフィールドという言葉は気軽に発しない方がよいだろう。」

「大罪人のイメージがあるし、そうした方が良さそうだね~。」

「うん、分かった。詳しいことは兄さんに聞いてみるよ。」

「ではお前たちをエンスタシナ王国に転送する。よいな。」

「おっけ~」

「はい、大丈夫です。」

そう言うと翔は白とシエルの2人を、最初に約束した通りにエンスタシナ王国へと転送し、2人が無事に戻って来た時には空が暗くなっていた。


 白とシエルが世界樹に戻り大部屋に入ると、ソイルと見たことのない少女がいた。

「ただいま~…って何この子!かわいい~」

「お疲れ~。あーこいつはゼータ。結機族オートマタだ。レイネールに行ったんだが、付いてきたいって言ったから連れて来た。」

白はいつも通り幼い姿の少女に張り付き頬ずりをしていた。

ソイルは特に気にすることもなく2人にゼータの紹介をした。

「兄さんただいま〜、もう帰ってきてたんだね。あの3人はまだ?」

「ああ、俺しか帰って来てないな。」

「…そろそろ離してほしいんだけど。」

「あ、ごめんね。おっと、自己紹介がまだだったね。私は白、んでそっちにいる空翼族エールの子がソイルの妹のシエルだよ。」

「わざわざ私の紹介までしなくても大丈夫なのに。…シエルだよ、よろしく。」

「ん、ゼータ。よろしく。」

シエルはソイルに対して少し冷ややかな視線を向けていたが、白がゼータを離すことなく自分とシエルの紹介をした事で、気を戻した。

「そういえば竜王の秘境はどうだったんだ?」

「まぁまぁ大変だったけどシエルのおかげで何とかなったよ。」

「まぁまぁって……白は結構大変だったでしょ。私は魔法を撃っただけだし。」

「私は注意を引いてただけだよ?試練に合格できたのはシエルのおかげだって~」

ソイルが竜王の秘境について聞くと、白もシエルもお互いに謙遜し合っていた。

ソイルはその様子を見て互いの中が深まっていることに安心した。

「さらに仲良くなったのは分かった。お前ら疲れてるだろ?今日は遅いし休んだらどうだ?俺もそのうち寝るからな。」

「そうさせてもらおうかな。ゼータちゃん!私と寝よ~」

ソイルは2人が疲れていることを察していたため、すぐに休むように促した。

白はゼータと一緒に寝ると言い出し、ゼータは困った様子でソイルの方を向いていた。

「いいんじゃね?白は変な奴だが悪い奴じゃないからな。」

「ねー、“変な奴”は余計じゃない?」

「いや、兄さんの言う通り白は変だよ。自分から敵に突っ込んで行ったりするし。」

「シエルまで!?」

「ん、じゃあゼータは白と寝る。」

白は兄妹から変だと言われてショックを受けていたが、ゼータが一緒に寝てくれるということには喜んでいた。

ゼータを自分の部屋に連れて行った白を見送った後、シエルとソイルもそれぞれの部屋で眠りについた。

翌日の昼頃になると4人は大部屋でくつろいでいた。

「ゼータ、私とおいしいものでも食べ行かない?」

「…行こうかな。」

白に誘われたゼータはどうしようか考えた末、白と共に外出することにした。

ソイルはふとイリスがいないことが気になったため部屋の外に居た使用人に聞いてみた。

「作業中すまんな。イリスは今ここに居ないのか?」

「大丈夫ですよ。イリス様は今は急用で別の国へと行っており、帰るのは夜になるとのことでございます。」

「そっか、ありがとな。」

そしてソイルは大部屋に再び戻りソファに座ると、シエルが横に座って話し掛けてきた。

「ねぇ、お兄ちゃん…」



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