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ドクターストップ

すみません、時間がなくて2話投稿ができませんでした。

「だから、言ったでしょう。アンタじゃ、私に勝てないのよ。」


「はぁ…………はぁ………」


 アリサとサイの戦いは一方的にアリサ有利に進んでいた。

 サイの拳は全て躱されてアリサの斧が一方的に当たる結果になっていた。その結果、サイは肩で息しているのに対してアリサは余裕で構えていた。

 他者から見た二人にあまり実力差はない事は理解できた。

 それなのにこうも一方的な結果になるには訳があった。


「私は入試を見ているのよ。アンタ、入試を全力で頑張っていたわね。お陰でアンタの実力を正確に分かったわ。」


 アリサが自信満々に勝利宣言していたのはサイの戦法や強みを理解していて、サイはアリサを理解していないところから判断してのことだった。

 アリサは元から首席を目指していた。

 実技科目の内容も事前に知っていたので、出来る限り省エネで終わらせないと同じ推薦組との戦いが満足に出来ないと予想していた。

 だから、前もって相手の情報を集めていたのだ。


「これで分かったでしょう。戦いは始まる前から始まっているのよ。ただ強いだけで勝てるほど戦いは甘くない。」


「はぁ、はぁ、はぁ、くっ!はああああ!!!」


「………馬鹿ね。」


 サイは身体強化を高めた。明らかに今のサイの身体に負担が掛かりすぎる強化率にアリサは今勝利する為の次の試合を捨てる行為は愚かだと発言した。

 ただこのまま受けたら自分もタダでは済まないと判断したアリサは警戒してやり過ごす事にした。


「はぁ?!」


「あまり僕を甘く見るな!」


 アリサは一切サイから目を離していなかった。

 冷静にサイのさっきまでの身体能力と魔力の総量から無理した身体強化の結果を導き出していた。

 それなのにサイの予想を超える身体能力に驚いて反応を遅らせてしまった。

 なんとかサイの拳を斧で防ぐ事は出来たが、斧から伝わった威力も予想を超えていた。


「アンタ何してるのよ。明らかにおかしいじゃない。」


「言う訳ない……」


「そりゃそうね。じゃあ、見せてもらうわよ。」


 防戦に回ったらサイが勢いづいて負ける事はなくても深手を負うと判断したアリサはこの戦いで初めて攻勢に回った。

 斧での息が吸えない猛攻にサイはただでさえ息絶え絶えなのに、なんとか防げてはいるがこのままでは目の前が暗くなるのは目に見えていた。


「だぁ!」


「弱い!早く諦めなさい!!」


 苦し紛れの一発も弱々しくアリサに簡単に避けられてそれを見たアリサはそろそろサイの限界が来るなと予想していた。

 それでサイはアリサの猛攻の中を正確に間をぬって拳を繰り出していた。


「諦める訳ないよ。目の前の一勝を諦める人が頂点になれるわけがない………よ。」


「そうね。でも、今回は諦めなさい。アンタじゃ、私には勝てない。」


 最大出力の斧での一撃がボロボロなサイに振り下ろされそうになった。

 サイは思った。

 負けたくない、負けたくない。負けたくない!

 一矢報いるだけじゃない。勝利のための賭けに出た。


「チッ!そういうこと。」


「はぁ………はぁ、出来た。」


「魔食。相手の魔力を相手に触れた瞬間に掠め取る技。実用性がないって話だった筈だけど、実用化した人がいたんだ。」


 眠っ子事スンは昔に見た本に書かれていた技術を思い出していた。

 大抵のものは一口が小さい為、実用的なレベルでの魔力を奪う事が出来ない点と喰らった魔力を己がものにするのに時間がかかる点があって実戦では使われてこなかった技術だった。

 その技術の特徴から誰もが格上を倒せる事が可能という部分が子供の頃に大人を倒す為に一度は試す騎士を目指す者は通る道だった。

 スンの場合、昔から賢い事があってこんな事を試すよりもっと良い方法があると試す事がなかった。


「さっきから回復してる様に見えたのは私の漏れ出ている魔力から掠め取っていたのね。」


 魔食は厳密に言えば皮膚に触れてなくても相手の魔力に触れていれば掠め取る事が可能であり、避けていたアリサや斧から食えたのはその為だった。


「まだ、戦いはこれからでしょう。っ!」


「………ちょっと!アンタ何してるのよ!!!」


 サイの闘志はまだ衰えて無かった。

 やっと見えた勝ち筋に心を燃やしていた。

 アリサはそんなサイを見てこっちもテンションを上げていた。

 皆が固唾を飲んでいた。

 そんな時、ヒッポがいきなり割り込んでサイを気絶させた。あまりにもいきなりの展開に思考が追いついてなかったアリサは少しばかり思考停止した後、試合を汚されたと思いヒッポを睨みつけ怒鳴った。


「ドクターストップ。これ以上やるにはこの子は持たない。」


「はぁ?!どういう事よ!」


 確かにサイはボロボロだったが、まだやれるとアリサは感じ取っていた。

 そんな中のヒッポからのドクターストップは訳が分からなかった。


「彼の判断は正しい。彼がしてなかったら私がやってた。」


「スン、アンタはコイツの肩を持つの。」


 友人のスンがヒッポの肩を持つ発言が気に食わなかったのか、スンにも睨みを効かせていた。


「はぁ……魔食で取り込まれた貴方の魔力がこの子とは相性が悪い上に強かった為消化出来るレベルではなかったのです。」


「つまり、消化不良による食あたり。それも他人の魔力を長くそのままにしておくのは危険。だから、彼は叩くと同時に治癒魔法でアリサの魔力を打ち消した。」


「………………ふん!良いわ!」


 アリサは未だに怒りは治まっていなかったが、納得はした為、スンを連れて次の試合に行った。

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