結婚決闘
ヒッポが入学して一週間、慌しかった入学式とは違って教師陣が警戒する様な事は起きず平穏は日々が続いていた。
それもこれも入学式でのヒッポの問題発言を学園長が協議の結果、決闘制に決定した。
その為、乱闘騒ぎが連日連夜行われる様な暴動が起こる事はなかった。
「おはよう〜」
「おはよう。遂に来たわね。」
「ええ、今日から解禁日。そして、実践科目が追加されますね。」
教室は表面的には和やかな挨拶を行われている中で腹の底では各々が虎視眈々と探り合っていた。
この学園では入学から1週間を施設見学や他の科目の説明などに使われるのである。
だから、怪我や病院送りも続出する実践訓練は最後に回される決まりになっていた。
そして、ヒッポの結婚決闘(訳して結闘)システムとして申し込みの優先権として実践訓練での成績優秀順となっていた。
今日、皆々が殺気を時が経つにつれて漏れ出ているのはその為だった。
「あんな筋肉ダルマのどこが良いのよ?」
勿論、みんながヒッポ狙いな訳がなく、実力者でもこの状況を冷ややかに見ている者もいた。
このいかにもな貴族タイプなツインテもその一人だった。
「でも、あの人、賢いよ。自分の価値を分かってやってる。」
「それって?どういう事すか?」
中にはヒッポの意図を正確に読み取った者も存在した。
眠たげな子に対して元気っ子が疑問を投げかけた。
「あの人は騎士の好むタイプである事を理解してあの宣戦布告をしてる。」
「そんなの当たり前でしょう。」
何言っているの?というツインテが怪訝そうに言った。
それを眠たげな少女はそうじゃないと頭を軽く振って否定した。
「アリサが思っているのはモテない子がモテる環境になって浮かれてやっている調子に乗った行動じゃない。あの人がしているのは値踏み。」
「値踏み?すか?」
元気っ子が眠っ子の意見が理解できない様で聞き返した。
「あの人は自分を強くするために強者を探してる。効率的に探す為に自分を餌にして釣っているの。アリサの様に嫌いな餌である人もいるけど騎士にとっては大半が食いつく好物である事をあの人は分かっている。」
「何よ、それ。………ムカつくわね。」
アリサはヒッポに値踏みされている事が気に食わなかった。
その上、最初から自分の事が眼中にない様な選別方法が何よりムカついた。
貴族の名門生まれで才能に溢れて注目の的だったアリサはその自分を無視するヒッポに屈辱を合わせたかった。
そこである事を思いついた。
「そうよ。アタシが実践訓練で首席を取って決闘をした上でアイツを振ってやるわ!」
アリサは一人で盛り上がっているのを元気っ子は何も理解せずわぁーーと拍手して眠っ子は冷ややかに見ていた。
「それもあの人の計画通りって言ったらアリサはどうするのかしら?」
貴族の娘、しかもこの名門学園に通う優秀な者は大体がプライドが高いと分かっているので結闘の意味を知った者は自身の事を眼中に入っていない態度が気に入らないと判断して結闘レースに参加すると予想していたのである。
その事にも気がつくとはヒッポは思っていなかった。
だから眠っ子はかなり頭が良いのだろう。
「アリサちゃんは優秀だけど?僕に勝てるの?」
「へぇ、言うじゃない。サイ、当たり前でしょう。それに貴方の首席に推薦者は入っていないのよ。」
眠っ子、ウトウトしていると何故か、二人が煽りあってバチバチし出している。
元気っ子サイは入学試験の実践科目で首席だった。
その自分を前にして首席宣言は自分の実力を軽視していると見て忠告したのである。
アリサはそれを自然と自分の方が強いと言ってのけたのである。
「活気盛んだね。」
ふぁ〜と欠伸をしながら授業が始まるまで寝ようと睡魔に身を任せて眠っ子は寝た。




