入学式
コロナも治って気力と体力も戻ってきたので投稿を再開していきます。宜しくお願いします。
「え〜、この入学式を無事迎えられたことを感謝して私の祝辞とさせて頂きます。」
なんやかんだあって今は学園の入学式である。
長々と国の代表やお偉いさんの祝辞を消化しながら粛々と終わっていっていた。
大半の生徒は子守唄代わりの祝辞を聞きながら仮眠をとっていた。
全員が目を開けながら平然と眠る技術を体得している。
これは見張りの際に敵に眠っている事を悟らせない為に発展した技術であり、今では無駄な時間を消化するのに使われる社会に出るのに必須の技能であり、この国の民なら誰もが体得しているメジャーな技術である。
「では、続きまして入学者代表としてヒッポ・ナイティーに宣誓してもらいます。」
この学園では入学者代表にこれからの学園生活の目標や決意を宣誓する伝統があった。
大半は騎士としての規律の全うや騎士としての力を示す決意を中心とした宣誓をするのである。
中にはこの場で全生徒に宣戦布告した事例もあるが、そんな事は10年に一度くらいなど今回はないだろうと先生達は楽観していた。
「宣誓!私は男性として!清く正しく聖者の誇りと騎士の誇りに賭けて!戦場を癒し、血に染める事を誓います!」
さっきまでの眠りはどうしたのかとヒッポが壇上に立つと一斉に物音を立てる事なく起きた。
そして、ヒッポの宣誓を大人しく聞いていた。
ヒッポの宣誓はそんな特別おかしいものはなく、代表者らしい聖者の誓いを交える男性特有の言葉を合わせるという素晴らしいものだった。
「そして!此処に宣言します!私を負かした人と婚約を結び!速やかに結婚する事を!」
波乱が起きた。
それを聞いた女どもは僅かな静寂と共に会場を一瞬にして殺気が包んだ。
我先にとヒッポに襲い掛かろうとするのを教師達は力づくで黙らした。
「馬鹿野郎!何言ってんだアイツ!」
「先輩!そんな事より確認しないといけない事があります!」
暴徒と化した生徒を鎮圧しないといけない教師がふざけた宣誓をしたヒッポを叱ろうとするのを教師の中でも今年から赴任した新入りが此処は自分がと前に出てヒッポに叫んだ。
「さっきの誓いには先生も対象に入りますか?!」
「そこじゃねぇ!!馬鹿か!お前は!」
「そうだぞ!新入り!その場合!すぐにピー!!してピーーー!する事は可能か?!」
「変態は黙ってろ!そんな事をした瞬間!ナイティー家と戦争だよ!!」
教師間でも大混乱である。
それを起こした張本人は壇上でクスクスと笑っている。
自分で争う者達を見ながら選別していた。
ヒッポにとって学園は通過点でしかない。自身が騎士になるための唯一の通過点であり、その為に色んな者を見定めているのである。
「落ち着け!!」
「学園長………」
流石のこの学園のトップであり、王族の血を引く者である。
この混乱に動じる事なく堂々としている。
山のようにどっしりとしたその姿には皆からの敬意が表わしていた。
そして、ヒッポに叫んだ。
「未亡人も対象に入るか?!」
「お前も何言っているだ!!」
会場中の人間から総ツッコミが入った。
学園のトップが何、変態共と一緒に確認をとっているのだ。
「……やれるものならやってみてください。」
やった瞬間、母がどうするのか分かりますよねと無言の圧と共に相応の代価は支払ってくれるなら良いですよと言っているのである。
「…………友人が怖くて据え膳食わないなんて女が廃るだろう!」
「しっかりしてください!学園長!!」
こうして波乱の入学式は幕を落とした。
この発言はエレファの耳に入って国を揺るがす大喧嘩に発展するのだが、それはまだ先の話である。




