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試験と反対

「試験内容だが、私と戦ってもらう。」


「学園長自らですか?」


「不満か?」


 試験内容は模擬戦だと予想していたのでヒッポは驚きはしなかったが、その相手がまさか国でも5本の指に入る程の実力者である学園長だとは思わなかった。


「まさか。そこまで僕の事を評価してくれて嬉しい限りですよ。」


「当たり前だろう。化けた聖者に常人と戦わせても傷を一つつける事を出来ず、体力切れで負けるのがオチだ。まぁ、君の場合、長期戦にしなくても倒せるだろうけどね。」


 騎士を目指す息子がいるとエレファからヒッポの特殊性と才能を聞いてからナイサイト学園長はそこからヒッポが戦う上での課題とどんな戦闘法なのかを考察していた。

 そして、結界に関してはどこまで化物なのかは分からないが、肉弾戦に関してはヒッポの肉体を見た瞬間に何とか分かって、ヒッポの胸筋を触って確信した。

 そして、その実力もおおよその予想もできた。


「ちょっと待てください!」


「あ?」


 そんなこんなで試験を始めようとしたら、観客席から待ったが掛かった。

 いい加減、試験を始めたかったナイサイト学園長はドスの効いた声で相手を睨んだ。


「ひっ!」


「なんだ、お前か。」


 ナイサイト学園長は観客席にいる相手を見て、呆れた様な声を出した。ナイサイト学園長の睨みに怯んでいた相手は自分に喝を入れて負けじと声を上げた。


「私達はまだそこの男が学園に入学する事に納得がいってません!」


「お前な……それを今、試験で決めるとこだろう。」


 落胆調の声でナイサイト学園長はその相手を宥めようとした。


「そんなもの!形式的なものですよね!母上は!もうその男を入学させるつもりでしょう!」


「学園では学園長と呼べと言っているだろう。何回目だ……まったく…入学して一年になるだからいい加減慣れろ。」


 ナイサイト学園長に抗議していたのはナイサイト学園長の実の娘だった。

 その娘は抗議しながら終始ヒッポを睨んでいた。

 当のヒッポは我関せずでこれから始まる試験に向けて集中していた。


「この歴史と名誉ある学園に男を入学させるなんて!」


「……だから、貴方はダメなのです。」


「っ!」


 ナイサイト学園長の失望の目、何も娘に期待していない様なそんな目をナイサイト学園長は向けていた。


「そんなに言うなら貴方が僕と戦いますか?」


「ヒッポ君、それでは試験の意味はない。確実に君が勝つ。」


「いいでしょう!私が直々に貴方に引導を渡して差し上げましょう!」


 ヒッポは学園長の娘にそんなに不満なら自分で試験したらいいじゃんと提案したが、ナイサイト学園長がヒッポにそれは試験として成り立たないと否決しようとした。

 娘はそんなナイサイト学園長を見てヒッポの提案に易々と乗ってしまった。


「はぁ………分かった…なら、ワッサー!お前も降りてこい!」


「え?!私も?!マークだけいいじゃん!」


 娘が闘技場に降りるとナイサイト学園長は渋々許可した。

 でも、娘一人では力不足が過ぎると考えてもう一人追加する事にした。

 ワッサーは凄く嫌々感を出しながら闘技場に降りてきた。


「マークでは力不足だ。正直、生徒なら生徒会長レベルじゃないと試験にならないんだが、まぁ、お前ら二人ならマシにはなるだろう。」


「あの男を凄く評価しているのですね。」


 マークは凄く暗い顔でナイサイト学園長を見ていた。

 これまでの話からヒッポはなんとなくこの親子関係を察した。


「必ず勝って証明する。」


「そう気負うなよ。マーク、相手はナイサイト学園長が認める男なんだからな。」


 力みすぎなマークにワッサーは緊張を解かそうしていた。

 それを聞いたマークはヒッポを睨みながら冷静になろうとしていた。


「もう始めていい?」


「あぁ、いつでも始めろ。」


「さぁ、何処からでも掛かってきて良いですよ。」


 ナイサイト学園長が試験開始の合図をしたので、ヒッポは早く掛かってきてねと挑発していた。

 舐められていると感じたマークは一気に切り掛かった。


「ちょっ!待って!マーク!」


「死ねぇ!!!」


 マークの渾身の力を乗せた剣は観客の大半がヒッポの死を感じるのに十分な気迫と威力を持っていた。

 でも、ヒッポは一切ビビる事なく冷静に対処した。


「うそ………」


「流石に、可笑しいやろ。」


「ふむ、服も切れないのですね。ガッカリです。」


「グハっ!」


 ヒッポの首へ目掛けて振り下ろされた剣は皮膚の皮一枚切れる事なく、ヒッポの纏っている結界に阻まわれてしまった。

 それを残念そうに見たヒッポは剣を止められて放心しているマークのガラ空きな溝内に一撃拳を叩き込んだ。


「マーク!」


「う、ぐっ!な、なに、この力……」


 吹き飛んだマークを壁にぶつからない様にワッサーが受け止めた。

 その威力は男が出したとは思えないものだった。


「まさか、魔法で強化しているのか?」


 この威力は生身の身体では不可能な破壊力だった。それが筋肉ダルマの様な肉体だったとしても無理なのだ。

 でも、男のヒッポがこのレベルの強化率を産む強化魔法が出来る筈がないとワッサーは推測した。


「解せない。そう思ってる?」


 ヒッポはワッサー達の困惑を見て自分の秘密を教える事にした。隠さなくても良いことでもあるしね。


「僕は結界を己の身に纏って防御力を上げると一緒に結界を使って拳の威力も上げているんだ。」


 ヒッポは結界を使って自身の拳の射程を上げるとともに相手を殴り飛ばすと同時に結界を移動させる推進力も追加して破壊力を上げていた。


「そんな事をしたら君の拳も腕も……」


「うん、壊れるけど、そんなのすぐ治るからね。」


 ヒッポはほらと自身の返り血で少し汚れた服と完璧になっている拳を見せていた。

 それを見たワッサーはこれは確かに化け物だとヒッポの評価をあげてこの試験に臨む事にした。

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