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死の片道切符

「ヤバすぎでしょう……」


 最終討伐日

 新人達は覚悟を決めて戦いに赴いていた。

 今回の討伐では殺傷許可が出ている。それはこの森の異質な生態系とこの街もすでに生態系の一つとしてある為である。

 此処での人との争いも自然な生存競争に組み込まれているのである。

 だが、それは出てくる魔物の量も質も今までの比ではないと言う事である。

 それなのに1日経った。

 今でも誰一人として死人が出ていなかった。


強制戦闘継続結界(ゾンビサークル)


「怪我しても瞬く間に治る上に致命傷は結界によってガードされる無敵だね。」


「調子に乗るなよ。ヒッポ様の負担が少なくなる様にいつも通り戦闘するんだ。」


 この結界は今まで使っていた結界とは負担が段違いである。

 結界内にいる味方を常に探知しながら体調から怪我など様々な不調を感じ取っては治療をし続ける。

 その上、結界によって道の補強、敵の攻撃からのガードなどあらゆるサポートを行い味方が快適に全力を継続して出せる環境を整える結界。

 それが強制戦闘継続結界(ゾンビサークル)である。


「ヒッポ様、結界展開してから一睡どころか一切微動だにしないですね。」


「この結界を展開している時は流石のヒッポ様も全身全霊を使わないと100%機能にしないの。」


「一歩どころか身体を揺らす事すらも集中を乱す行いを徹底的に省いて全ての力を結界に注ぎ込まないという話だ。」


 ヒッポの胆力と才能があってこそ出来る芸当の結界である。


「みんなも頑張っているのに私達は此処で待機していて良いのでしょうか?」


「待機ではない。ヒッポ様の警護だ。」


「ヒッポ様に警護がいるのですか?」


 サラビア達、新人は今、ヒッポの警護で街で一番頑丈な屋敷の奥に居る。

 それは1日内交代で行われているものであるが、こんな所にいるより戦闘に参加した方がヒッポの助けになるのではないのかと考えていたのである。

 それに結界のあるヒッポに警護が必要なのかと疑問に思っていた。


「この結界を展開している間のヒッポ様は完全無防備なのだ。だから、私たちが警護する必要性がある。」


「マジで?」


「マジだ。言った通り全身全霊なのだ。自分に使う力すら結界に使われている。だから、代わりに私たちが守るのだ。」


 それに戦う人が多いとヒッポの負担が多くなる。

 一定人数を維持して、余った人で他をサポートするのが最適となったのである。


「でも、何から守るのですか?」


「敵国だ。」


 先輩騎士が新人騎士の質問に答えていった。


「ヒッポ様はこの国にとってかけがえのない存在だ。それを狙って抹殺を考えようとしている国がいるの。そういう奴等は無防備のヒッポ様を狙ってやってくる。卑劣にな。」


 怒りを表しながら先輩騎士は語った。

 過去にもこの時期を狙って敵国の暗殺者が襲ってきた事があった。

 勿論、返り討ちに出来たが、無駄にヒッポに負担をかける結果になったのである。

 敵国にヒッポの情報が漏れている事は分かり切っていた。ナイトヘブンは元々諜報が並程度、大国クラスには最重要クラスな秘匿しているものならともかくヒッポの存在は秘匿することは出来ていなかった。

 だから、ヒッポの力が漏れていても不思議じゃない。問題なのはナイトヘブンに喧嘩を売ってでもヒッポの命を取りに来た事である。

 それほどヒッポの全体に対しての継戦能力向上は他国からはしたら恐ろしさしかないのである。


「軍事力最強な我が国にヒッポ様という世界一になる聖者が産まれた。はっきり言ってヒッポ様が完全に成長したら我が国に戦争での敗北はあり得ない。」


「そんな他国からしたらたまったもんだじゃない存在のヒッポ様を殺そうとするのは当たり前なのよ。」


「だから、こうして警護するの。」


 先輩騎士達は新人騎士達にヒッポの重要性を懇切丁寧に説明した。

 サラビア達はヒッポのことを天才聖者としか思っていなかった。その評価でもヒッポに対しては過小評価でしかなかった。


「そして、敵は何処にでも居るわ。こんな風にね!」


 先輩騎士はそう言うと床を踏み抜いた。


「え?血?」


「もう囲まれているわ。」


 先輩騎士達は侵入者の気配を感じて瞬時に臨戦体制に移った。新人達も先輩達に一瞬遅れて周囲に警戒し始めた。


「仕留め損ねたけど、四肢の何処かは貰ったわね。」


 先輩騎士の踏み付けが強すぎてもぎ取った四肢はミンチになって何処の部位かわからなくなってしまった。


「多い。」


「何処に隠れていたのよ!」


 気配の多さに新人達は明らかに可笑しいだろうと裏切り者でもいるのではないかと疑い始めていた。


「狼狽えるな!」


「そうよ。さっきも言ったけど相手も本気なのよ。」


 先輩騎士達は狼狽える新人達に喝を入れて落ち着く様に宥め出した。


「死の片道切符よ。」


「嘘でしょう。転移装置による特攻?あんな自殺行為を暗殺の為にするんですか?!」


 死の片道切符。

 それは転移装置が開発されてから一時期流行っていた極悪な戦法である。

 その敵地へ確実に侵入できる代わりに確実に殺される特攻である。だか、使われすぎたため、対策が完璧に行われる上に元々の成功確率も高くない為に一瞬にして廃れたものである。


「そんな廃れたものに頼るほど恐怖していると言うことよ。」


「無駄死にしにご苦労なこった。」


 先輩騎士達はこれから行われる虐殺に何の感情もなく淡々とヒッポを守る為に気持ちを切り替えた。

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