打ち上げ
「それじゃあ、今回の討伐完了を祝して乾杯!!」
「「「乾杯!!!」」」
森でのゴタゴタを終わらした隊はそのまま村に滞在した後、ヒッポの代わりの結界役が来たその日のうちに次の依頼場所に出動。
それを5件繰り返してようやく都市に帰ってきていた。
今、隊長行きつけの酒場で飲み会を開いていた。
「ヒッポ様も来れた良かったんですが………」
「無茶を言うな。私らと違ってヒッポ様は次の隊と合流してまた、討伐だ。」
ヒッポは屋敷に報告してすぐ、ヒッポを待っていた隊と一緒に再度討伐に行ってしまった。
ヒッポの能力を活かすには実践経験が重要になってくるため、入学試験まで徹底的な実践を繰り返していた。
「そう言えば、あの開拓村どうなったんですかね?」
「開拓村?」
「忘れたんですか?ほら、最初の仕事で森に入って……」
「あぁ!あの異常の男の子がいた。」
隊長はスッカリ忘れていたようだが、他の隊員から言われてようやく思い出した。
異常とは男なのに攻撃魔法が得意だったり、女なのに結界や回復魔法が得意な特異体質な人のことを言う。
数年に一人くらいの確率で産まれると言われている。
それでも、男女では魔力の使い方に少しの誤差があるのか、教えられても上手く使えないと言われている。
「あの子もその例に漏れなかったな。魔力が分散しすぎていた。どんなに魔力が強くてもあれではヒッポでもなくても結界を破る事は出来なかっただろう。」
隊長は記憶を思い出しながら、酔いながら冷静に分析していた。
「まぁ、教えた人が悪かったんじゃないですか?」
「そうだな。うちに産まれていたら、ヒッポ様に勝てなくてもあそこまで無様な負け方はしなかっただろうに。」
心底残念そうに隊員達は言っていた。
「今回の不祥事の賠償にあの子を貰うとかしないんですかね?」
「しないだろう。」
「どうしてですか?」
隊長は隊員の意見に即答で否定した。
他の隊員にはなんでしないのか?の理由が分からなかった。少年の筋は悪くないように思えた上に教育したらヒッポ様の良い従者になると思ったからだ。
「お前達は珍しさから評価が上がっているだけだ。あの程度の才ならこの都市にいくらでもいる。私たちが育ててもその域を出ないだろう。あの子が強くなるにはより上質な師が必要だ。」
隊長が気づいた事は当主もヒッポも気がついていた。
この都市に来ても男に攻撃魔法を教えるのは容易ではない。難易度が高いものほど誤差も大きく修正が難しくなる。
この都市の最高位の騎士や魔法師なら教えられるだろうが、その時間があるなら別の人に回したほうがいい上に態々呼ぶ必要がない。
「へぇ、私にはあの子が強くなると思ったけどな〜」
「お前なら出来るだろうが、お前には他人を教える余裕はないだろう。」
「あはは!そうですね!でも……たしか…今はあの国にいると思うんですよね〜」
陽気に話す隊員はこの都市でも五本の指に数えられる魔法師だった。
「いるって誰が?」
「あははは!!酒美味しい!!」
「聞けよ………」
もう酔いが回った隊員から続きを聞くのは不可能になっていた。
「それで今回の不祥事を犯したあの国にはどんな賠償を支払ってもらうんですか?」
「正式にはまだ決まっていないが、賠償金に加えてあの西の森を正式に我が領土にするみたいだ。開拓村の即時解体に領主に今回の賠償金の全額負担が課されるらしい。」
それを聞いて、被害が軽微だった今回の不祥事だったとしても、隊の調査が早かったからの軽微であり、遅かったらより被害は広がっていたのは明らかだった。
だから、それにしては賠償が少ないように感じた。
「国王や当主様もそう思ったんだが、ヒッポ様が直談判して西の森を譲渡してもらえるように説得したらしい。」
「なんで?」
「そんなの知らん。」
隊員からしたら西の森は未探索領域が多いが、旨みが少ないと言われている場所である。
だから、中立の場所として放置されていた経緯もあった。
「何かを見つけたんだろう。本当に抜け目のない人だな。」
隊長はヒッポがあの調査で100%の確信はないにしても何か国の得になるようなものが見つかったのだと確信していた。
「そんな事より問題はこっちよ。」
隊長が見せたのはある調査資料だった。
「これは?」
「今回の西の森以外の討伐の本部で精査された調査資料だ。」
そこに書かれていたのはヒッポ達が調べた報告書を精査してまとめたものだった。
「この調査には共通する部分があったことが分かった。」
西の森以外の討伐にはやたら一部の種類が減っていることが発見された。
それも食物連鎖のピラミッドの頂上部分に当てはまる種だった。
だから、真ん中の種が急増してしまったから。その数を調整して終わった。
「減った種は違うが、肉質と味が似ていたことが分かった。」
「肉質?」
「つまり、同じ個体か分からないが、少なくとも同じ種の個体が荒らしている事が判明した。」
種が違うくても、味が似ている種は多い。
その種だけを食べている事から、同じ種か個体の仕業だと考えられた。
「そして、次に予想される出現ポイントはここだ。」
「ここって………」
「たしか……」
隊長が地図を指差した場所はヒッポ達が次に向かっている場所だった。




