未発見種
「ガンガン叩いてうるさいなぁ。」
サソリは諦めることなく結界に弱点や脆い場所がないか、終始叩いて結界から出ようとしていた。
音が結界内で反響してよりうるさくなっていた。帰ったらそこを改善した方がいいなとヒッポは考えていた。
「見た感じ節の間は脆そうだね。」
「ですが、あのサソリは巨大の割に素早く、自分の弱点も認識する程に賢いです。そう易々と斬らせてはくれないでしょう。」
サソリの甲殻はさっきまでの攻防でサソリの魔物の中でも硬さは飛び抜けて硬い事を隊長は理解していた。
斬れなくはないが、この危険な西の森で時間が掛かりすぎるのはより危険なのでさっくりと倒せる方法を考えていた。
「うん?」
「どうしましたか?ヒッポ様。」
サソリの行動を注視していたヒッポは賢いサソリにしては違和感のある行動を取り出した事に気がついた。
「同じ場所を叩き出した。」
「確かにそうですね。しかも、さっきより雑に叩き出しましたね。」
ヒッポの結界に脆い箇所がない事を知れば体力回復とこちらに意識を向けるはずが焦っているのかこちらを一切警戒しなくなり出していた。
明らかにさっきまでの知能の高い生物とはかけ離れた愚行を行なっていた。
「何かを恐れている?」
「なら、焦っているのはその何かが近づいてきている事を察知して……………っ!」
「ヒッポ様!」
「分かってる!」
この場にいる全員がその生物の存在感に一瞬にして気がついた。進行方向から一直線にこちらに向かってきている事がはっきりと分かった。
そして、その生物は明らかにこのサソリより凶悪である事を直感が叫んでいた。
ヒッポは即座にサソリを捕まえていた結界を解いて自分達を守っている結界を強化した。
結界が解けたサソリは急いでこの場から逃げようとしたが、木々の間から飛び出してきたその生物に食い殺された。
「ギョァァァィァ!!!」
森にその生物の奇声が響き渡った。
「細長いトカゲ?」
「違います。アシアリヘビです。」
ヒッポは脚があることから胴の長いトカゲかと思ったが、魔物に詳しい騎士が訂正した。
続けてこの騎士は言った。
「ですが、この近辺には生息していない筈です。」
「つまり、このヘビは外来?」
「いえ、多分未発見種です。」
この巨大な生物が未発見種だとは思えなかった別の騎士が外来かと考えたが、そんな考察を魔物に詳しい騎士が否定した。
「それはどうして?」
「アシアリヘビは長時間移動しない上に今までアシアリヘビが外来として在来を脅かした事はない。それに近場でもアシアリヘビの目撃情報はない。」
この点からこのヘビはこの森に元から生息している種であると推測していた。
「でも、なんで今までこの森での目撃情報がなかったんだろう。」
どう見ても隠密には向いていない巨大な上に気配を消しながらこちらに来なかった事を考えれば見つからなかった理由が分からなかった。
「理由は簡単です。目撃者は全て食べられた。だから、報告が上がらなかった。」
「それなら納得がいくな。」
そうだとしたらこのヘビはかなり強い上にこの森で生息しているならこの個体以外もいるのは確実である。
「あのでっぷりとした腹からして西の森の生物を東に追いやっているのはこの種で間違いないな。」
「問題は駆除数が分からない事だ。」
この個体は調査の為に捕獲するとして、あとどれくらい駆除したらいいのか、騎士しかいないこの部隊では判断ができていなかった。
「原因は分かった。」
「いえ、まだです。」
隊長が話を締め括って捕獲に乗り出そうとしたのを魔物に詳しい騎士がストップを掛けた。
「なんだ?マライ。」
「原因はまだ分かっていません。この種が在来なら生態系を乱した原因がある筈です。」
森を追いやったのはこの種である。それは今もこちらを気にしながらサソリを堂々と食べているところから別の強大な生物に追われていないのは明らかだった。
それならこのヘビが森の生態系を乱す事になった原因がある筈だと魔物に詳しい騎士マライは考えた。
「捕獲はそれが分かってからが良いです。」
「だが、こいつがすんなりと私らを逃すと思うか?」
明らかにサソリを飲み込んだら次は自分らに襲いかかるのは見て分かった。
この個体はまだ満腹にはなっていない。
「なら、これではどうですか?」
ヒッポは二人の話を聞いて自分らを覆っている結界の種類を変えた。
「っ!」
ゆっくりサソリを食べていたヘビが周りを見渡してびっくりしていた。さっきより警戒度を上げているのは飲み込み掛けていたサソリを吐き出して臨戦態勢になっている事から分かった。
「どう言う事ですか?ヒッポ様。」
「結界を隠密用に切り替えた。強度は多少落ちるけど、追跡ならこっちの方が向いているからね。」
「確かにこれならヘビを追跡出来ます。」
その後ヘビは見えなくなったヒッポ達が襲って来なかった事から逃げたのだと断定して食事に戻っていった。




