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完結目指して頑張ります。

拙いとは思いますが徐々に読みやすくなれば幸いです。

よろしくお願いします。

雪が降り積もった森の中、既に陽の光は届かなくなった時刻。

昨日に引き続き今日も目的地であるクラムデリアに向けて移動をしていた俺、ウィレムと妹のレイラは夕食を終えて明日の移動について整理をしている所だ。

レイラが空中に表示した魔法の地図で目的地である北国:クラムデリアまでの進み具合を確認しているが、故郷の木々に囲まれた湖畔の家から西に向けて出発して3日目。

今日はずいぶんと魔物と遭遇したためか疲労が強く身体に現れている。


「今日は魔物との遭遇もありましたが進みは悪くありませんね。これなら明日にはクラムデリアに到着できると思いますけど、ウィレムさん的には明日は――」


おそらく俺に明日の進み具合について聞こうと思ったであろう言葉を止めて、じっとこちらを見つめるレイラ。

その眼は優しさを持ちながらも真剣さを感じる。

明らかに何か聞きたそうにしている。


「……どうした?」


そう聞いてもレイラは何も返さずに視線だけが上下して、最後に俺と目線を合わせる。


「もしかして……かなりお疲れなのではないですか?」


「そんなことないよ。元気に見えるだろ?」


そう言って軽く握り拳を作って見せるがレイラは納得してないようだ。

目線を変えずにこちらを強く見続けられるとさすがにばつが悪くなる。

隠せてないみたいだし、意地張らずにちゃんと言おう……。


「すまん、けっこう疲れてるみたいだ。もうちょっと頑張ろうと思ったんだけど、だんだん眠くなってきてる。」


そう言うとレイラの眼から先ほどまでの強い視線はなくなり、温かみのある眼に変わる。

同時に表情も柔らかくなった所を見ると怒ってはいないようだ。

子供の頃に似たような事でケンカになったからまた怒られるかと思ったが安心した。


「今日は魔物との遭遇も多かったですからね……。私はまだ大丈夫ですから寝ても良いですよ。」


「悪いな、じゃあ今日はもう寝るわ。火の番は昨日と同じで。」


「はい。そうしましょう。」


レイラが即答で承諾し、お互いの意見が一致したことで俺は就寝準備するために既に張ってあるテントの中に入って自分専用の毛布に身を包む。

テント内は幕に使っている布に特殊な魔法技術を使っているらしく、外との寒暖の差が大きすぎないよう程よく温かいため毛布一枚でも十分だ。

そのため、深い眠気の底に向かって落ちるように眠りについた。



………………

…………

……



3時間くらいで火の番を交代してレイラが5時間、そのあとまた俺が2時間のローテーションで睡眠を取る。

このローテーションについては初日に揉めた。

お互い、長めに寝て欲しいという譲り合いが原因だったが俺の睡眠時間が短めであることを納得してもらうことでローテーションは決定した。

あの時のレイラは正直、不服そうだったがちゃんと寝たあとに最高の護衛をしてくれればいいことを伝えると多少不服さは緩和されたように見えたが、とりあえずは仲直りできてよかった。



野宿の後片付けを終わらせてから移動を開始して2時間ほど、まだまだ澄んだ空気と陽の光の心地よさがある時間帯だが森を抜けた。

目の前には雪原が広がり、木のような身を隠したり視線を切るような障害物はない。

このまま北西へと進めばクラムデリアに到着する。

パッと見は敵の姿も気配も無いが、ここからは特に警戒が必要なため少し緊張する。

個人的にはエンカウントしたら敵を倒して先に進むっていうシンプルな考えでいきたいところだが到着まではまだまだある。

戦闘が何度・何時間続くか分からないこの状況では魔力も体力も温存した安全策を取らないといけない。

ここからはメンタルの消耗が激しくなりそうだが、今俺たちはお互いしか助け合える人がいない。

クラムデリアまでの道中、五感をフルに使っていこう。

そう覚悟を決めて一度深呼吸をすると、隣にいるレイラが真顔でこちらを見ていた。

真顔でも心配してくれていることはわかっている。


「大丈夫ですか?」


レイラも俺が緊張していることは感じ取っているようだ。

ありきたりな心配の言葉だが今は安心を感じる。


「うん、大丈夫だ。ここから魔力感知の範囲を広げていこう。」


「わかりました、でも30分で交代ですよ?」


「わかってる。さぁ、いこう。」


今日この日まで森から出たことのない俺たちは開けた世界へと一歩を踏み出した。

覚悟を決めたあと、適度な緊張のまま進んでいく。

レイラも同じように緊張しているのが肌で伝わるが顔を横目で見ると大丈夫なように見える。

まだ歩き始めたばかりだが、何事もなく着いてくれると助かるな。


…………


歩き始めて1時間ほど、歩みは森の中と変わらないスピードだ。

雪原の雪はそこまで深くなく、歩きやすいためだ。

魔力感知をレイラから交代して俺の番となる。

ここまでお互いにほとんど言葉は発さずに顔も見合わせることなく前を目指して歩くのは苦ではなく、それは前世から変わらない。

俺たちの転生前はどこにでもいる普通のサラリーマン(ウーマン)で同期であることをきっかけに仕事終わりの帰り道、最寄り駅に着くまでの間だけだったが今と似たように何も喋らず顔も見ずに歩くことが多かった。

ちなみになぜ死んだのかは覚えていない。たぶん思い出したくないんだろう。

凄惨だったのかどうなのかはわからない。

だけど異世界に転生してまで一緒にいられるのは運が良すぎると思った。

そして絶対に死なせてはならないと強く自分に誓った。

意外にも俺たちは鍛錬中に転生前の記憶が戻った時に別人である姿や環境を受け入れていて事細かに説明をしなくてもファンタジー世界を理解していた。

それに俺がウィレムで彼女がレイラであることは姿形や声が変わっていても自然と感じ取って分かったことも助かった。

なぜなのかはさっぱりわからないがお互いの名前を同時に口にしたことで確信に変わったが、傍にいた師匠からはいきなり名前を呼びあってアホかと言われてしまった。


前世のことを思い出し、物思いにふけられるほど緊張が緩んでいる。

そのことに気づいた俺は足を止めて気を引き締め直し、魔力感知の集中をし直した。

だがもうそろそろ30分経つので交代だ。


「ウィレムさん、交代です。」


ちょうどよくレイラからも声がかかり、魔力感知を解く。

そして歩き始めようと思った瞬間、強烈なプレッシャーと視線を感じて瞬時にその方向へと目を向ける。

すると俺の視線の先、真北の方角200メートル先には一体の狐の形をしたスカーデがこちらを微動だにせずに見ていた。

プレッシャーと視線の主をスカーデと理解した俺は腰に差してある双剣に手をかける。

レイラも俺に倣って刀に手をかけていたが抜かないように手で止める。


「凄い圧を感じるけど襲って来る気はなさそうだ。」


「機会を伺ってるのかもしれません。」


「とりあえずそのまま動くな。」


この狐のスカーデ、動く気配が本当にない。

ただ見てるだけ。そう感じ取れる。


「レイラ、動くなって言ったけど悪いけど周りの索敵を頼めるか。たぶんあいつは動かない。」


「……わかりました。」


息を呑みつつ承諾したレイラは後ろを向く。

こっちが動いたが狐のスカーデはやはり動きを見せなかった。


「……ウィレムさん、あの狐のスカーデ、やけに輪郭がはっきりしてませんか。」


「たしかに、パっと見で狐ってわかるくらいだもんな。」


スカーデとは魔物の上位種で全身に魔力のオーラを纏った姿が特徴だ。

揺らめく魔力は炎のようなこともあれば水のようでもある時がある。

魔物との違いはそれだけではない、スカーデから受けた傷は致命傷になりやすい。

一般的な致命傷とは頭や心臓などの急所、出血量、一部臓器の損傷が挙げられる。

だがスカーデからの傷はどこに当たっても致命傷になり得る。

それは濃縮され、汚染された魔力による刻印のせいだ。

もちろんスカーデの攻撃すべてが刻印になるわけではないが万が一にも受けてしまった場合は良くても治療できない傷として残る。

それほどに恐ろしい存在がスカーデだ。

そして今回の狐のスカーデは纏った魔力に揺らめきがなく、しっかりと姿形を表している。

だからなのか放たれているプレッシャーと視線は強烈だ。


「もしかしたら特殊個体とかいうやつだったりしてな……」


「ウィレムさんが前に言ってたすごく強い個体ってことですか。」


「そう、ゲームなんかだと特別に名前が付いたりしてる敵がいるんだけど――」


「それと一緒ってことですね。」


言い終わる前に最後のセリフを言うレイラの声色は緊張からの興奮を感じた。

もしかしたら精神的に消耗しているのかもしれない。

あれだけのプレッシャーだ、何も感じない方がおかしいか……


「索敵はどう?」


「今のところ周りにはあの狐以外にいませんね。」


「ありがとう、さて、どうしたもん……」


周囲に他の魔物やスカーデがいないことで一安心だがいつまでも膠着状態でいるわけにもいかないため打開策がないか言葉を口にしようとした時、狐のスカーデは不意に踵を返して歩き出した。

その姿を見て一瞬、背後からの攻撃を考えたが距離も離れていることや姿を認識されていることをすぐに気がつき、考えを辞めた。

それと同時に安堵感があり、瞬きをしてしまう。

すると、先ほどまで見えていた狐のスカーデは姿を消していた。

一応、周りを確認してみるも見当たらない。どうやら完全に去ったようだ。


「どうしたんですか?」


「もう大丈夫だ。あの狐はいなくなったよ。」


そう声をかけると警戒を解いて俺の顔を見るレイラは不思議そうな顔をしている。


「何が目的だったんでしょうね。」


「さぁね、さっぱりわからん。それに魔物の類だから目的あるとは思えないよ。」


「そうですね……」


レイラは少し納得してない顔をしていたがすぐに考えるのをやめたように元の表情へともどった。

どれだけの時間が経ったのかわからないが立ち止まっていてもしょうがないため、行こうとレイラを促してまた歩き出す。


「戦闘にならなかっただけマシだけど時間食っちゃったな。」


「そうですね、でもまだ日暮れまでには着けると思います。」


まだまだ今日中にはクラムデリアに着けると考えを合わせて元の魔力感知ローテーションを再開する。

正直、あのプレッシャーの後で多少気疲れしているが気を引き締めよう。

今日はもう魔物やスカーデと遭遇したくない。

そんな気持ちで胸はいっぱいだった。

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