87 寝込み煮込み
突然だった。
そうだ、寝込みドッキリをしよう。
俺の部屋の隣にはおあつらえ向きに姉が寝ている時間だ。
居ても立っても居られないこの衝動に突き動かされるまま、俺は姉の部屋に向かった。
そっと外開きのドアを開け、中に入る。
チャプっと汁の音。足の温度が下がるのを感じた。
ん? っと下を見る。チチチと何かが点きそうな音。
第六感が危険を知らせ、ツッコんだ足を持ち上げる。が、上がらない。持ち上げられない。
「うおっ、なんだこれ!?」
光源の無い部屋で起こった出来事に、俺は混乱していた。その混乱に追い打ちをかけるように、ツッコんだ足の下の方から赤い光が見えた。
「フフフ」
それと同時に部屋の奥から笑い声が……。
「お、お前は!?」
「そう、私よ!!」
顎の下から懐中電灯を当てて不気味に不敵に笑う姉。
「おま、何シャレにならないことをしてんだよ」
足と鍋の間にはとても強力な接着剤が挟まっている。その下ではコンロか何かで加熱中。
身内にする行いではない。
「眠っている姉の部屋に明かりも持たずにやってきて、シャレにならないですって? 良いわ、その性根、叩き直してあげる」
暗闇の中、謎の風きり音が聞こえてきた。
「お、おい。何の音だよ。やめ、やめろぉぉぉ」
「はい、という調教を済ませたのがこちらです」
「ぷぎぃぃぃ」
「生意気弟のタタキ。寝込み煮込み仕立てです。ほら、浅ましく鳴きなさい」
「ぷぎぃぃぃ」
そこには、鞭で叩かれた上半身と、片足だけ長湯で暖まって赤くなった男が四つん這いで豚の鳴きまねをしていた。
「それでは、調教三分クッキング。また明日もお楽しみくださ~い」
「お楽しみくださ~い」
「豚が人様の言葉を話すでないよっ」
鞭を一発。
「ぷぎぃぃぃ」
番組が終わり、映像が終った。
「深夜だからって、すんごいのやってんな……」
この番組を見た視聴者達は、慌てて明日の内容を調べた。
しかしそこには、年少探偵団という別の番組の名前があった。