9 トップハンバーガーマウンテン
「俺、ハンバーガーのバンズになりたい」
小さな子どもなら、将来の夢で食べ物になるという子が居るが、この発言をしたのは高校生だった。
彼の友人は、この発言に「おいおい、マジかよ……」という反応。
しかし、友人は優しくて、この発言を拾おうとした。
「高校生にもなって子どもかよ」
友人にはこの返しで精一杯だった。対して彼はこう返した。
「バンズはバンズでも、上の方な」
もう、どう拾えば良いのか、友人は分からなくなった。
沈黙していると、彼は理由を説明し始めた。
「人生はハンバーガーなんだよ。俺達はさ、生まれたら生という包み紙の中で生きるだろ。下のバンズはそうだな、人間だな。下のバンズは生物としての土台だ」
訳の分からない事を言い出したと思ったが、友人はどこまで行くのかと思い、そのまま耳を傾ける事にした。
「次に自分の方向性だな。これはマヨやケチャップみたいなソース系に例えるだろ。次はレタスか。これは学習だな。学ぶっていう行為だ。次にハンバーグは自身を支える学んだものだな。薄いよりも厚みがある方が良いだろ。しっかりずっしりしていると、それだけ安定するからな。そこからトッピングでチーズとかの色んな物が雑学やら技術だなそれらを積み上げて、高いハンバーガーの一番上に来るのは何だと思う? そう、押さえる上バンズだ」
どや顔の彼の説明を自分なりに、好意的に噛み砕こうと頑張る友人。
「中身がたくさんある方が人生は有利だから、そうなりたいって事か?」
色々と試行錯誤した結果の解釈が合っているか確認する友人。
「ああ。それに、厚みがあれば、色んな味を楽しめる。どんな場面にも対応出来るスーパー人間になれるって訳だ」
「スーパー人間って、めちゃくちゃださいな。この時点でお前のバーガー、薄くないか?」
「俺はまだレタスの段階だぜ。ありとあらゆるソースを塗り終えて、学んでいる途中だ」
「そうか。まあ、タワーみたいなハンバーガーに成れると良いな」
話を終わらせるには丁度良いだろうと、友人はそう言って会話を終わらせた。
「おいおい、ハンバーガーの話してたのかぁ~?」
席を外していたもう一人の友人が戻って来た。
「ああ、してたぞ。ハンバーガーは人生だってな」
「そんなにハンバーガーが好きだとは知らなかったぞ。そうだ、帰りにここ行かない? 新しく出来たバーガー屋なんだ」
もう一人の友人は、自分のスマホの画面を二人に向けた。
お目当ての店のバーガーは、絶対に一口に収まりきらない高さの商品を売りにしていた。
商品は、高すぎるバーガーなら約束と言って良い刺してバランスを取るタイプだった。
「う、うわぁぁぁ」
写真を見た途端、ハンバーガーになる事を夢見ていた彼が叫び出した。
どうしたのかと思い、友人は尋ねた。すると、彼は悔しそうに言った。
「どれだけ積み重ねても、突き抜けた奴には敵わねぇ……」
友人は、心配してこれほど損したと感じる事は無いと思った。