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なんだこれ劇場  作者: 鰤金団
89/166

84 私は泣いたことが無い

 突然だけれど、私は泣いたことが無い。

 とは言っても、欠伸が出れば涙が出るし、目を開き続けていても涙が出てくる。

 ここで言うのは、喜怒哀楽でということ。

 皆と力を合わせて頑張って取った賞に、クラスメイト達が泣いて喜ぶ中、私一人が涙を流さずに喜んでいた。

 感情が高ぶると涙が出ることがあるけれど、私はそういったことは無い。

 悲しくて涙を流すなんて良くある話も、私には関係無かった。大好きなお爺ちゃんが死んだ時には、泣かなくて怒られたなんて理不尽な目にも遭った。

 皆が涙を流して大笑いする芸人のコントでも、笑いはしたけれど涙は出なかった。

 急ハンドルや、ジェットコースターに乗っても私は泣いたことが無い。

 そう、私は泣いたことが無い。



 そんな私は今日、友達と絶対に泣けると噂の映画を見に行った。

 友達達はティッシュを持参で映画を見ていた。

 友達だけじゃない。周りも聞き耳を立てればグスンと涙系効果音が聞こえる聞こえる。

 結局、私は涙を流さなかった。

 映画が終わり、部屋が明るくなる。

 友達三人が目を真っ赤にしていた。

 けれども私は普通だった。

「じゃ、お昼食べにいこっか」

「も~、泣き過ぎて水分必須なんだけど~」

「そうだね。でも、その前に……」

 友達が会話し、私の方を見る。

「着替えだね」

 友達が頷く。

 私の鼻が真っ赤になっている上に決壊し、服がとんでも無いことになっているから。

「良い映画だった?」

 友達の一人が私に尋ねた。

「良い映画だったよ。でも、泣けるかもって期待したけど、そこが残念だったわ」

 私の言葉に、友達三人はそっかと言った。

「過去一垂れ流してるから、やっぱりこの映画は本物だったね」

「たしかに~」

「じゃ、渇く前に着替えよっか」

「そうね。全く……。着替えを六枚持って来て正解だったわ」

 私は、五枚目の上着に着替えた。

 そう、私は泣いたことが無い。

 ただ、鼻腺が緩いだけ。

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