82 フライ・ド・ポテト
「あ~うめ~。油が内臓に溜まってくのがたまんねぇ~」
歯応え良しでサクサク食べ続けているそれはフライドポテト。
布団の上で塩たっぷりのフライドポテトをコーラ片手に食べるのが最高にキマる。
芋というスポンジによって吸収された油で、中から体重がアゲアゲになるこの感覚が堪らない。
けれども最近じゃどんな塩で食べてもマンネリ気味だ。
フライドポテトには塩。それ以外は認めない俺は、ネットで今日も未知の塩味を求めてひた走る。
「お、これは!?」
深く深くネットを探し続け、初めて見る塩を見つけた。
「フライ・ド・ポテトなんて、そのまんまだが、それが良い!!」
これはフライドポテトのためだけに開発された塩なんだろう。説明文なんて読まなくても俺には分かる。何故なら塩は俺のマブダチだからな。
と、金額も見ずに注文を終えてから数日後。
「来た……。来た来た来た来たぁぁぁぁぁ」
待ち焦がれていたフライ・ド・ポテトが届き、油焼けした声でテンションマックスで上げ始めたばかりのフライドポテトの周りの泡のように踊る俺。
巨腹がタプンタプンと右に左に上下斜めと自在に動き回る。
「おっといけねぇ。喜びすぎて汗かく所だったぜ」
揚げ物に水気は厳禁なのは、世界の共通常識だ。揚げ物を汁に浸すやつらは人間じゃねぇ。
と、俺の信条はさておいてだ。この日のために用意した最高に美味い素フライドポテトを、最高の油船になるように熱しておいた鍋の中に投入しなくちゃな。
「う~ん、この香りだぁ。この匂いだけで腹に溜まっていく感じ。俺の体に付いた皮下脂肪が新たな仲間を受け入れるために震えてやがる」
期待で急く気持ちを抑えつつ、ようやく揚がったフライドポテトに届いたばかりのフライ・ド・ポテトを振りかけ、待望の一口目。
「あぁぁぁぁぁぁ~。脳に塩がキマッていくぅ~」
これまでに無い塩の味に、鼓動が速くなり、体が震えだした。
「たまんねぇ。マジたまんねぇぇぇぇ」
何だか下半身がしっとりしているような気がしたけれど、それを確認するために下を見るなんて暇は無かった。
俺はの目にはフライドポテトしか映っていないのだから。
一口目を食べたら、もう止まらない。止められない。
まだ凶器な温度のフライドポテトをむさぼり食った。美味すぎて、高揚してきて体が浮いているような感覚だった。
「ああ~、しゅごしゅぎて天国いっちゃうぅぅぅ」
フライドポテトをキメ過ぎて、ここで俺の記憶は途切れた。
次に目が覚めた時には、全く覚えの無い真っ白な場所に居た。
何だここはと訝しんでいると、空から声が聞こえてきた。
「え~、あなたはフライドポテトの食べ過ぎで死にました」
余りにも唐突過ぎる一言。
どうやら俺は、フライドポテトが美味すぎて、魂が天に上っちまったらしい。
俺はため息混じりに言った。
「アゲアゲだぜ」
そう言った瞬間、足元が開き、真っ逆さまに落ちていった。