73 バナナフィッシュオレ
とあるカフェでのお話。
「ヘイヘイヘヘーイ。新商品が出たって見たぜ。店の看板でよ」
陽気に入って来たのはジョーイ。
「そうだぜ、ブラザー。看板でお知らせしてたんだ。ヘーイ。さっそく飲むか?」
店員で、ジョーイとは旧知の仲で、店の店員のジョベスターは言う。
「もちのろんろんだぜーい。オレっち新入りちゃんには必ず手を出すって決めてるからな」
「おいおいジョーイ。そんなこと大っぴらに言ったら、かみさんに張り付けにされちまうぜ?」
「世界のためさ。そのためなら俺は、かみさんと同じ行為だってするさ」
「店の売り上げに貢献するために随分と大袈裟に言うじゃないか、ジョーイ」
「真面目な俺もイケてるだろ?」
「そういうのは女に見せろよ。じゃ、用意してくるぜ」
店の奥へ戻るジョベスター。
程無くして彼は商品片手に戻って来た。
「待たせたな、ジョーイ。これが新商品のバナナフィッシュオレだ」
受け取り、まじまじと見るジョーイ。
「おー、これは生きが良いな。ピッチピチじゃないか? そーれ、ピッチピチ。ピッチピチ」
「あ、よいっしょ。ピッチピチ、ピッチピチ」
ジョベスターもジョーイに乗っかった。
「って、待て待て待て。ここはカフェだ。新商品は飲み物じゃないのか? これじゃあ魚じゃないか」
「はは、何を言ってるんだ、ジョーイ。新商品は確かに飲み物さ。ほら、口を指で摘まんで、向いてみろよ」
ペロンと。ペロンとだと、ジョベスターは動きで見せる。
ジョーイはこうなのか? と心配しつつ、魚の口を向いた。
「ワァオッ。中からバナナが出てきたぜ。こいつはクレイジーなバナナだな。新種か? 新種のバナナだろ。って、ちーがーうーだーろー。これじゃあ魚の皮を被ったバナナじゃないか。誰が食べるんだ?」
「注文した君さ」
「おーう。こいつは一本取られたぜ。バナナだけにな」
「なら一気にいっちまえよ。ほら、口に咥えて吸い込んでみるんだ」
「ば、バナナをか?」
「ああ、バナナをだ」
絵面が嫌だと思うジョーイ。しかし、これも何か意味がある行為だと思い、言われた通りにやってみた。
「おいおい、ジョベスター」
「どうした、ジョーイ?」
「オレだ。これ、オレだよ。バナナがジューシーだぜ!!」
「だから言ったじゃないか。バナナフィッシュオレだって」
「ジョベスター。お前って奴は天才だぜ」
「はは、今頃気付いたのか。さあ、存分に楽しんでいってくれ。魚もバナナもそいつで飲めるからな」
二人はがっちりと熱い握手を交わした。