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なんだこれ劇場  作者: 鰤金団
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58 ヨルナイト

 都内某所。

「キャァァァァ」

 真夜中の街に悲鳴が轟いた。



 翌朝。

「局長、局長」

 騒がしい青年の声。ドタバタと部屋に駆け込んできた。ここは怪奇全般を取り扱う政府のとある部署、通称MK(めっちゃ怖い)。

「どうした、岩清水。朝から騒々しいぞ」

「すみません、局長。って、謝る前に事件ですよ、事件」

 岩清水はそう言って情報のデータを局長に送った。

「また出たのか……」

「はい。今回もナンパ師が襲われています」

 最近巷では、騎士の姿をした存在に人が襲われるという怪事件が多発していた。

 MKでも捜査続けているが、未だ犯人逮捕に繋がる手がかりは無い。

「共通点は面識の無い異性に声をかけたという点か。俗に言うナンパをする者達が被害にあっていると」

「そうなんですよ。一体、犯人はどんな奴なんですかね?」

 岩清水がそう話していると、部屋のドアがゆっくりと開いた。

「おや、お揃いで。これは丁度良い」

 現れたのは、MKの開発主任。爆発に巻き込まれたようなボンバーヘアーで、ヨレヨレのハクイでの登場だった。

「丁度良いとは、どういう事かね?」

「はい、これを見てください」

 局長の問いに、ヨレヨレの白衣の中からパラボラアンテナを銃口に取り付けた玩具のような銃を見せる開発主任。

「何ですか、主任。徹夜で玩具を作ってたんですか?」

 サボりかと、岩清水。

「違うぞ、凡人。これは今回の事件のキーアイテムだ」

「こんな玩具みたいなのがぁ~?」

 岩清水は訝し気に銃を見つめた。



 その日の夜。三人は夜の街に繰り出していた。

「いや~、何だか遊びたくなりますね。どうです、局長、主任。これから一杯」

「おいおい、仕事という事を忘れるんじゃない」

「そうだぞ、凡人。我々はパトロール中なんだ」

「分かってますって。茶目っ気ですよ、茶目っ気」

 肩をすぼめる岩清水。

 その時、闇夜を切り裂く悲鳴が轟いた。

「おっと、おいでなすった。お二方、こっちみたいです。行きましょう」

 一番若い岩清水が颯爽と駆けだす。

 現場には、女と男。それと白馬に跨った甲冑を纏った騎士の姿があった。

「こんな夜中に白馬の騎士様ってかい。何時からここはおとぎの国になったんだよ」

 驚き、信じられないと岩清水。

「MK所属でまだそんな事を言っとるのか。主任、早速例の物を」

「はい。お任せあれっ」

 主任は自身が開発した銃を騎士に向け、引き金を引いた。

 リング状の光線が放たれ、騎士に直撃する。

 すると騎士の体は発光し、姿が見る見る消えていった。

「やった、成功だ」

 喜ぶ開発主任。

「凄いぜ、主任」

 退治成功を喜ぶ岩清水。

 こうして、今回の件は解決する事が出来た。



 一夜明け、MK内で三人は一仕事終えた後のコーヒーを飲んでいた。

「それで結局、あの騎士様の正体は何だったんです?」

 怪奇関係だとは認識していても、分からないと岩清水。

「ああ、それはこれだよ」

 主任が岩清水に渡したのは、ビニル袋の中に一本の赤い糸。

「糸くずなんか大事に入れて、何だって言うんですか?」

「全く、これだから凡人は……」

 呆れる開発主任。

「運命の赤い糸という事だよ」と局長。

「それって、小指に運命の相手との繋がりが、ってやつですか?」

「そうそれだ」

 昨今、想いを拗らせる人が多くなり、その結果、まだ見ぬ相手への想いから、自身が出会うで相手を守りたいというある意味で怨念のようなものが怪奇現象を引き起こしたのだという局長。

 話を聞いた岩清水は思った。

「つまりは、主任の今回の発明品は、二人の間にあった糸を断ち切らせたっという事ですか? それって、一生運命の相手とは出会えないって事じゃないですか。こわ~」

 自身を抱きしめ、震える岩清水。

「拗らせて市民に危害を加えるような念を持つ相手なら、速めに断ち切るに限る。悪縁なんて即断ち切るに限るという訳だ」

「正に悪・即・斬っというやつだよ、凡人」

「なるほどっ。じゃあ、この銃を量産して、一刻でも早く、本当の意味での事件解決をしないといけませんね」

「そうだな。我々の仕事はまだまだあるぞ」

 局長の言葉に、二人は頷き、コーヒーを飲み干すのだった。

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