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なんだこれ劇場  作者: 鰤金団
59/166

56 僕は必死に訴えた。

「すまない。このまま黙って帰ってくれないか」

 僕は必死に訴えた。

 彼女は無言で、扉の前に立ち、僕にそれを向け続ける。

「頼むよ。僕には出来ない」

 いくら頼んでも彼女は許してくれない。

 何故こうなったのか。きっかけは何だったのか。

 ああ、分かってる。全部僕が悪いんだ。

 でもさ、そういうもんなんだよ。

 誰だって試したくなる。だから彼女に何も告げずにやらせてみたんだ。

 彼女はあまりそういうのを見ないから、何にも警戒しないでやってくれると思った。

 言い方を変えれば、良いカモだったんだ。

 でも、それは遊びだったんだ。一緒に楽しくなれればと思っただけさ。

 配慮だってした。だから、多くの人の前じゃなくて、二人っきりになれる部屋まで来たんだ。

「そうだ、次は二人でやろう。それならどうかな?」

 彼女は首を横に振った。認めてくれない。

「お、おい。そんなのまで僕に向けないでくれよ。それ、撮ってるでしょ。絶対に後で皆に見せるつもりだよね?」

 彼女は首を横に振った。

 でも僕は分かっている。僕はしなかったけれど、彼女なら絶対にするって。

「んぐっ」

 いい加減、このやり取りにも飽きたとばかりに、彼女は俺に向け続けていたそれを頬にグリグリし始めた。

 痛い。ジョリジョリと髭が擦れる音が部屋に響く。

 僕は痛みから逃れるために、後ろに下がり、壁と彼女とに挟まれてしまった。

 彼女は、片手で機械を操作した。手順は簡単。履歴から呼び出せば良いだけ。

 僕が逃げないようにしつつの操作だから、器用なものだった。

 そして流れるメロディ。彼女は無言のままだった。

 歌うと必ず音痴になる曲。それを彼女に歌ってもらった結果がこの有り様だ。

 僕は、メロディが流れ続けても歌わなかった。

 そうしたら、また同じ曲を彼女が選んだ。

 繰り返していると、部屋の電話が鳴った。

 彼女は、やっと口を開いてくれた。

「延長で」

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