5 シュガースポット
私は、へそ曲がり署で刑事をしている。
最近、国内で連続行方不明事件が多発している。
今回、私とベテラン刑事の寺さんと共に、管轄内で起きた行方不明事件の操作をする事になった。
国内での事件では、まるで神隠しにあったように人が消えている。
友達と歩いていて、被害者の方を見た時には消えていた。
前方に人が居たはずなのに、ふと視線を外している間に消えていた。
誰もがそう言って、相手が消えた瞬間を見ていない。
酷いものだと、何日も連絡もせずに会社に来ないので、不審がった同僚が自宅へ行ったら、たった今消えたかのような状態の部屋が残されていたという話もある。
とにかく全てが謎だらけだった。
私達は、同一犯の可能性を視野に入れつつ、聞き込みを開始した。
けれど、消えたという事実が把握され、実際に消えているというのに、消える瞬間を見た人は居ない。映像すら残っていないという不思議で気味の悪い事件だった。
「寺さん。何か、私達が見落としているものがあるんでしょうか?」
「全国の警察が気付いていないものか……。分かりやすい共通点ならあるんだがな。なぁ、佐藤。ん? 佐藤?」
寺さんが私を呼んだ時、私は遥か真下に落ちていた。何がなんだから分からない。
何の前触れも無く、スポッという吸い込まれるような音と共に私は落ちていた。
明らかに人外の力が働いている。
(これが連続行方不明事件の真実……)
しかし、分かった所でもうどうする事も出来ない。私はただ落ちていく。終わりすら分からないこの穴の中を……。
寺は迷宮入りしたこの事件についてこう語っている。
「あの事件は、人知を越えた力によって引き起こされたのだと思う。かつてはありふれていたさとう姓が今や珍しい苗字になってしまった。今や、誰もさとうを名乗ろうとはしない。結局、同僚の刑事も見つからないままだった」
現在では、このさとう姓の行方不明事件は、シュガースポットと呼ばれ、語り継がれている。