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なんだこれ劇場  作者: 鰤金団
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4  名探偵 謎解きかたくり子

 私の名前はくり子。職業は元料理人。最近までお店をやっていたけれど、そのお店が不味いと評判になって、頭にきて炎上させちゃった。あ、ネットでね。

 今は、傷心旅行中に知り合ったお金持ちの家にお邪魔している最中。

 出会ったばかりの私に、この家の長で富豪のおじいちゃまが紙のタワーでもくれないかなと期待していた所に事件が起こった。

 この家の家長のおじいちゃまと次期家長の弟が死んでしまったの。

 当然の事ながらやってくる警察。やって来た警部さんは、以前に私が解決した事件で顔見知りになった人だった。

 これはもう一度私が名探偵になるしかない。料理では振るわなかった腕が鳴るわ!!



「私の推理では、犯人は利恵さんです」

 名指しした犯人は、私が知り合い、私をこの家に招いた本人でした。

 長男と長女と男女一人ずつのお子さんがいる美人妻です。

「いきなり何を言うの? くり子さん」

「色々と調べた結果、利恵さんに何やら言い寄っていたそうじゃないですか」

「何だって!? 利光はそんな事をしていたのか!?」

 初耳だと驚いているのは、次期家長で、利恵さんの夫の利長さん。利恵さんは、言い淀んでいたけれど、沈黙で押し通せないと思い、口を開いた。

「誤解をしないで欲しいのだけれど、私は利光さんにしつこくされただけで、本当に何も無いの」

「ですが、しつこくされていたのなら、動機は十分ですね」

 私が言うと、利恵さんはキッと睨んできた。

「落ち着いてください。これは一般論です。ねぇ、腰抜け警部?」

「腰抜けじゃない。腑抜けだ。何度訂正させるつもりですか」

「どっちも余り変わらないじゃないですか。で、一般論ですよね?」

 私の発言に納得していない様子でしたが、腑抜け警部は頷きました。

「しつこくされ、カッとなったというのは、サスペンス物でよくある話です」

「作り物を例に出さないでください。これは現実に起こった事なんですよ」

 利恵さんが本職に詰め寄りました。

「落ち着いてください、利恵さん。公務執行妨害でしょっ引かれますよ」

「そうし向けているのはあなた達でしょ。違法捜査だと訴えますよ」

「国の法律で脅してきましたよ、腑抜け警部。これって、立派な脅しでは?」

「くり子さん。あんた、何がしたいんだ。さっきから、あんたの発言で場がしっちゃかめっちゃかになってるじゃないか」

「私は原因究明したいだけですよー。そうだ。もう、これを使っちゃいましょう」

 私は懐から一キロ相当の白い粉を出しました。

「おい、止せ。それを使うんじゃない」

 急いで止めに来る腑抜け警部。私はそれを華麗に交わし、利恵さんの元へ行きました。

「何をする気ですか。その見るからに危険そうな粉は何ですか!?」

「ふふふ。これはただの片栗粉じゃありません。謎解き片栗粉です」

「名前からして怪しいじゃないですか。いや、止めてください」

「良いではないか。良いではないか~」

 拒否されようとも関係無く、私は彼女に秘伝の粉を振りかけました。

 粉が十分にまぶされると、彼女は脱力し切った状態でその場に座り込みました。

「さあ~盛り上がって来ましたよ。利恵さん。犯人はあなたですね?」

「はい」

「じゃ、じゃあ、動機は? ズバリ言っちゃってください」

「利光さんに脅されたからです」

「ほうほう、なるほど。何で脅されていたんですか~?」

 謎がするする溶けていく感じが堪りません。

「利夫さんとの関係についてです」

「利夫さん?」

 ここにきて新しい人物の名前でした。

「あの~利夫さんについてご存知の方はいらっしゃいますか?」

 場に居た利長さんとお子さん達が驚きの表情で固まっていました。

「死んだひいお爺ちゃんです」

 長女さんが説明してくれました。

「ひいお爺さんとの関係とは何ですか?」

「私達は愛し合っていました。利治がひいお爺さんとの間の子だという事を、利光さんに知られ、脅されていたんです」

 ん~、とろみが出てきましたね。

「そ、そんな。ひい爺さんとって、何歳離れていると思っているんだ。それに、利治は俺の子だと……」

「どうなんですか? 利恵さん」

「利夫さんとの関係を隠すため、都合の良かったあなたと結婚したのよ。昔からの幼馴染でもあったから」

「そ、そんな。そんなぁぁぁ」

 利長さんが可哀そうになってくる話ですね~。

「お、俺がひい爺さんの子……」

 影が薄くて忘れていましたが、長男さんも打ちのめされていました。

「所で、おじいちゃまにも手をかけましたか?」

「二人は結託して、私をこの家に縛り付けようとしていたんです」

「なるほど。二人は絞るだけ搾り取って、飼殺そうとしていたんですね。警部さん、しょっ引いてください」

 全ての謎が明かされたので、もう興味はありません。

「おい、この空気をどうするんだ」

「知りません。換気すれば大丈夫ですよ。それじゃあそろそろ私は家に帰りますね」

 用事も済んだので、私は家に帰りました。



 後日、風の噂で聞いた話では、利長さんは風の吹くままにさすらっているようです。

 残されたお子さん達は、長男は家に籠っているそうです。そして、長女さんの方は、大きくなったお腹を擦っている姿を目撃されてるそうです。

 お相手が居て、産後の事を考えて実家に戻っているのでしょうね。

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