36 けつ勉
「本日は噂のあの、塾講師の方に来ていただきましたー」
拍手で迎え入れられるゲスト。
「今日はよろしくお願いします。本日のインタビュアーの岩清水です」
「お願いします。後野次朗です」
ゲストの後野さんの来歴が紹介され、インタビューは本題へ。
「それでは、いよいよ噂の勉強法について聞かせていただきたいのですが。あの勉強法はどのようにして思いついたんですか?」
「あれはですね。昨今の子ども達の非力さを嘆いて生まれたんですよ」
「非力さを嘆いて、ですか?」
「はい。最近の子どもは運動する場所が無く、どんどん身体能力が衰えているというデータがあります。私は、これではいかんと思っていたのです。ですが、昨今は運動よりも勉強だと、机に縛り付ける親御さんが多いんですね。まあ、私も職業柄、その様な親御さんはありがたい存在なのですが……。私も子どもが居ましてね、一人の親として悩みの種でもあるんですよ。そこで、動いて学べる勉強法を作ろうと思ったんですよ」
「動いて学ぶというと、幼稚園や、小学校低学年が使うタイルが浮かびますが、それとは違いますよね」
「はい。やはり、高度化していくと、単純なもので表していく事が難しくなっていくんですね。そこで考えたのが尻文字です。手を動かすよりも全身運動になり、更には体感も鍛えられて、一石二鳥になるんです」
「これが受けて、今や後野さんの塾は生徒数激増でオンライン視聴も百万再生を越えていますね」
「動きと連動させる事で、通常よりも記憶に残りやすいのでしょうね。ですが、最近は困った声も寄せられているんです」
「困った声、ですか?」
「はい。思い出すのに体を動かさないと出て来ない、とね。皆さん、尻の振り過ぎで腰を傷めないように、重ねて気を付けてくださいね。はっはっは」
豪快に笑い、自身の腰に撒いたコルセットを見せるゲスト。このインタビューは、岩清水のどう返せば良いのか分からない困惑した表情で幕を閉じた。