25 ピンポンダッシュ ダブルターボ 後編
覚悟を決め、瞼を閉じる利夫。しかし、攻撃が来る事は無かった。
何事かと思いつつ、ゆっくりと目を開けると、そこには少女の姿が。
「か、和江ちゃん!?」
「何をしておるのかと思ったら、こんな面妖なものと戦っておったとはのう」
「駄目だ、和江ちゃん。あいつらは危険だ」
コンクリートを凹ませる程の攻撃をする相手。少女には荷が重すぎると、利夫は避難を促す。
しかし、和江は引かない。
「ワシはその攻撃を弾いたのじゃぞ。こいつでな」
そう言って利夫に見せたのは、卓球のラケットだった。
「な、何で!?」
「友人の助けになれずして、友達と呼べるかのう」
そう話しつつ、和江は攻撃してきたピンポン玉を打ち返す。
「はは、凄いな。和江ちゃん……」
驚く利夫。
「早くこ奴らを倒し、またピコピコをするのじゃ」
一人では無茶でも、二人ならと、利夫の心に炎が燃える。
「そうだね、和江ちゃん。三時のおやつには、二人でせんべいを頬張ろう」
立ち上がり、肩を並べる利夫と和江。
ピンポン玉達も、新たなステージに入ったと思い、壁に反射して加速していく。
「奴ら、決着を付けるつもりらしい」
「ワシらが勝てぬ道理は無いのじゃ。真っ向から返り討ちなのじゃ」
利夫は和江の同意した。不思議な事だが、二人なら勝てるという根拠の無い自身が生まれていた。
「よし、来い。何時でも打ち返してやるっ」
二刀のラケット重ね、構えるとしお。
「では、ワシはここなのじゃ」
と利夫のラケットの前にラケットを和江。
それは危険だと言おうとする利夫だったが、その前にピンポン玉が玉突きで仕掛けてきた。
今までにない加速。間違い無く、最大の威力で仕留めようとしていた。
「のじゃぁっ」
和江のラケットが砕けた。
「う、うおぉぉぉっ」
利夫の手前のラケットが壊れ、もう一つのラケットも、堪えてはいるが、ミシミシと音が鳴っていた。
「和江ちゃん、持ちそうもない。離れて」
喋るのもやっとな利夫。
「ワシを甘くみては困るのじゃ」
逃げない和江。そして、利夫のラケットが完全に砕かれた。
「切り札は最後に使うのじゃ」
隠し持っていたのは、フライパン。
まさかの変り種ラケットの登場に、利夫も驚く。しかし、これならと、フライパンを両手で持って、二人で押し出した。
すると、第一のピンポン玉は第二のピンポン玉に向かって戻っていった。
その威力に、対消滅するピンポン玉達。
「か、勝った……」
「やったのじゃー」
戦いが終わり、御町内に平和が戻る。
「全く、一人で無茶をしおってからに。説教なのじゃ」
利夫を引っ張り、プンプン怒りながら家に入る和江。
「いやあ、助かったよ。でも、よく分かったね」
「様子がおかしいのは分かっておったのじゃ。じゃから、密かに調べておったのじゃよ。これも年の功なのじゃ」
少女に年の功なんて無いだろうにと、苦笑する利夫。
「そういえば、ピコピコは持ってきたの?」
利夫が尋ねると、あっと和江は声を出した。忘れていたらしい。
「す、すぐに持ってくるのじゃ」
急ぎ、駆けだす和江。
「うんうん。年の功だねぇ」
利夫は彼女の後姿を見て、勝ち取った勝利を噛み締めるのだった。