23 ネギス 巻
茶色く伸びたヘアーを靡かせ、くすんだ白い肌の年寄りが今日も行く。
彼の名前はネギス 巻。
「ネギスさん、こんにちは」
「今日も散歩かい? ネギスさん」
彼が歩けば、人が声をかける。
地域の有名人。その顔の広さは市議会議員にまで広がるという。それがネギス 巻。
そんな彼がある時、誘拐された。
人通りの少ない道を歩いていると、黒塗りのワゴンが彼の前で止まり、四人であっという間にネギスを簀巻きにし、連れ去ってしまった。
「さてと、どこから攻めていくか?」
市議の事務所の電話番号を見ながら、主犯の男が言った。
「ちまちま行くよりも、大物からがっぽり貰おうぜ」
「いやいや。ちりつもだろ。全部行くべきだろ」
莫大な利益を想像し、犯人達は浮かれていた。
が、悪事がそう長く続く訳が無い。
「お前達、私を誘拐した事を後悔するが良い!!」
威勢の良い声に犯人達が振り返ると、簀巻きが潰れ、その隣には若い男が居た。
「だ、誰だ!? お前は!!」
主犯が問う。
「誰だだって? 私の名前はネギス 巻。お前達が攫った者だ」
そう言って簀巻きを投げつけるネギス。
「なんかしなびた皮みたいのしか残ってないぞ。しかも、なんか中が滑ってる。きもちわりぃ」
「ネギスは年寄りのはずだ。ありえねぇ」
「一皮向ければスッキリはつらつ。それがこの私、ネギス 巻なのさ」
鮮やかに輝く緑の頭髪に、煌めくパールホワイトな肌。
「かまわねぇ。やっちまえ!!」
主犯が指示を出すと、仲間がネギスに襲い掛かった。
しかし、立派に硬いボディで悪人共はなぎ倒された。
「さあ、残るはお前だけだ」
「こ、こなくそぉぉぉ」
やけっぱちになった主犯。しかし、高く飛びあがり、くるっと一回転して主犯の男に体当たりしたネギスの攻撃により、あっさりのびてしまった。
こうして地域の悪党を対峙したネギスは、犯人達を警察に突き出した。
そう、彼は一皮剥ければ若さと力を取り戻すネギ人間だった。
今日もネギスは行く。地域の平和のために。
行け、ネギス 巻。皮を剥く必要が無くなるその時まで!!