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なんだこれ劇場  作者: 鰤金団
23/166

21 としお オン ザ ベッド

「やあ、全世界の皆さまごきげんよう。世界のホットなスポットを紹介する時間になりました。司会はおなじみ、かめだです」

 陽気な口調で喋り出す彼は、この番組のメイン司会者であると同時に、現地でのリポートも行っている。

 その理由は、自分が行かなきゃ伝わらないホットスポットがあるという信念を持っているからだ。

「今回ご紹介するスポットはこちら。石清水さん家のとしおくんのベッドでーす」

 アルミフレームのベッドにカメラがズームアップ。

「こちらのベッド、どこの家にもある普通のベッドに見えますが、実は老若男女問わず通うホットスポットなんですね~。それでは、経験者のお話を聞いてみましょう。ブイティィィィアァァァルゥ。ストゥートゥゥゥゥ!!」

 テンションフルスロットルでブイ紹介に移るかめだ。


 ケース1 高齢者夫婦


 どういった経緯でこちらに?

「孫達が楽しいからと誘ってくれたんです」

 お孫さん達は今どちらに?

「既にあちらに行ってます。熟練者向けの場所に行くと言っていました」

 熟練者向け?

「何でも、中心地に近いほど良いそうです。どういう事か、私達にはまだ分かりません」

 ありがとうございました。


 ケース2 重めな人


 どういった経緯でこちらに?

「仲間内で良い場所がある持ちきりでさ。来てみたんだ。うちならもっと楽しめるらしくて」

 あなたなら?

「体を突き抜ける衝撃? がダンチらしくて。より楽しむために太ろうとしてるのも居るよ」

 無理矢理食べて、という事ですか?

「簡単に言うとそうだね。食べれば良いと思ってるんだから、そこは複雑だよ。苦労してこの体を作ったと思ってるんだからね」

 苦労はしていないのですか?

「もちろんさ。楽を追及するのが成功の秘訣だからね。その結果で他より楽しめるっていうんなら、こんなに嬉しい事は無いよ。ほら、体が弾んでいるよ」

 確かに、振動が伝わってきます。是非、楽しんでください。

「うん、ありがとう。それじゃあ、取材頑張って」

 ありがとうございました。


 ケース3 若い男女達。


 どういった経緯でこちらに?

「デートです。何度も来てるけど、ここ以上にスリリングな場所は無いので」

「そうなんすよ。スリルと衝撃が癖になって、ここ以外考えられねぇっす」

 場所取りが重要だと他の方達は口にしていましたが、お二人は何処に?

「もちろん、中心の真下です」

「あそこがマックスにやべぇんすよ。もう、オムツ推奨っすね」

「ちょっと止めてよ。でも、思い出すと私も出ちゃいますね」

「心配すんなって。皆出してるんだしよぉ」

 そうですか。ありがとうございました。



 ブイが終わり、それを確認するとかめだは話し始めた。

「はい、という事で、大人気な中心の真下にやって来ました。いやあ、一体どのような大剣が待っているのか、楽しみで仕方ありません」

 そう言って、かめだはその時を待つ。

「皆さん。今、部屋のドアが開きました。いよいよ始まるのでしょうか?」

 ベッドの上に重い物が乗り、数度揺れる。

「これはただベッドに寝転がっただけでしょうか? ん? 何だか、軋む音が聞こえてきました。だんだん。だんだんと揺れが激しくなってきましたよ」

 と言い終わった直後から、かめだがリポート出来ないくらいに揺れが激しくなった。

 その間、周囲に居る全員が静かに揺れに耐えていた。

 揺れは体感ではとても長いものだった。

 収まると、再びドアが開き、出て行った。

「どうやらアトラクションは終了のようです。いやあ、凄い。ただしがみ付く事しか出来ませんでした。ですが、普段感じる事の無い刺激に、皆さんが言うように漏らしてしまいました」

 自分の周りを仰ぎ、臭いを飛ばそうとするかめだ。

「ご覧ください。私と一緒に参加していた皆さんも仰いでいます。ですが、これはすっきりして良いですね。悪い物が全て出ると表現すれば良いでしょうか。これは確かに癖になります。これは確かにホットスポットでした。皆さんも、ぜひ一度、体験する事をおすすめしますよ」

 かめだはそう言うと手を振って番組が終了となった。



「どうも、お疲れ様でしたー。お客さん達も、ご協力ありがとうございましたー」

 かめだはそう言って、周囲に感謝と労いの言葉をかけた。

 後は撤収するだけなのだが、部屋の外でとしおともう一人の会話が聞こえてきた。

「これはスクープの予感ですね。撮ってくれますか?」

 かめだに言われ、クルーは撮影を始めた。



「あんた、部屋であばれすぎ。家が揺れるのよ」

「あ、あばれてねぇし。家がボロいだけだろ。トラックだよ、トラック」

「あんたねぇ、場所考えて言いなさいよ。工事中の土地なんか無いのに、トラックなんて通らないよ。それにね、最近じゃくっさくて仕方無いのよ。換気ぐらいしなさいよ」

「お、おれ、臭くねぇし。奴らだよ。なんでか最近、カメムシが大量発生してんだよ」



 この会話を聞いたかめだは、カメラを止めさせた。そして、一目散に部屋を出た。

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