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なんだこれ劇場  作者: 鰤金団
22/166

20 茶ばしら立ったよ

 一人暮らしのモグラ君。

 仕事の後にお茶を飲むのが習慣です。

「あっ」

 嬉しそうな声のモグラ君。何と珍しい。茶ばしらが立っていました。

 こんなに珍しい事は中々ありません。モグラ君は、家の中を見ました。

 ですが、モグラ君は一人暮らし。この喜びを一緒に喜べる人は居ません。

 お話をする相手も居ないモグラ君は考えました。

「そうだ、外に行こう」

 家と仕事場以外にどこにも行かないモグラ君は、思い切って外に出ました。

 太陽がまぶしくて、モグラ君は目を細めました。

 このままではとても歩けないと思っていると、人が通りかかりました。

「あら、モグラ君じゃない」

「え、はい。そうですけど?」

 モグラ君には、相手が誰か分かりません。日の光で、というだけではありません。自分の家の近くで暮らしている人が分からないのです。

「私は菊針さん。近所じゃお世話さんなんて呼ばれているわ」

 尋ねてもいないのに、そう名乗る菊針さん。

「あなた、ちょっと待っていなさい」

 今度は何? と思い、尋ねようとすると、菊針さんは自分の家へ。

 何かと待っていると、家からサングラスを持って来てくれました。

「外に出るんでしょう? これ、掛けて行きなさい」

 親切な菊針さん。

 モグラ君は、この人ならと思いました。

「ありがとうございます。あ、これ、茶ばしらが立ったんです」

 湯飲みを見せるモグラ君。

「あら。じゃあ、さっそく御利益があったわね。良い出会いが出来たもの」

 菊針さんに言われ、ああ、そうだなとモグラ君は思いました。

 その後、モグラ君はまた歩きました。今度は眩しくありません。

 ですが何時もとは違う運動をしているためか、喉が渇いてきました。

 手に持った湯飲みでは足りません。それどころか、これを飲んでは、せっかくの茶ばしらが倒れてしまいます。

 どこかで飲み物を飲めないかと考えるモグラ君。

「おや、おやおや?」

 ジロジロとモグラ君を見て、確認するように近付いてくるおじさん。

「珍しい事もあるもんだ。とんと見なかったが、元気だったか?」

 距離感の近いおじさん。彼はモグラ君を知っているようですが、モグラ君は一度も見た覚えがありません。

「ああ、悪かった。近眼なせいで間違えてしまった。がはは」

 豪快に笑うおじさん。何だか分からないけれど、明るいおじさんに、モグラ君は茶ばしらを見せました。

「こりゃあ、縁起物だな。どれ。じゃあ、福分けに良い物をあげよう」

 おじさんはそう言うと、ここに来る途中で買ったのでしょう。コーヒーをモグラ君にくれました。

「ありがとうございます」

「良いってことよ。がはは」

 豪快に笑って歩き出すおじさん。

 一緒に楽しむって良いなと思うモグラ君。

 この後もモグラ君は、人と出会うと茶ばしらを見せました。

 皆が、良い物を見たと言って喜びました。

 モグラ君は、皆が喜ぶのがとても嬉しくて仕方ありません。

 ですが、そろそろ家に帰らないと暗くなります。

 なので、最後にもう一人に喜んでもらおうと思いました。

 周りをキョロキョロ。

 あ、見つけたようです。あれ、こちらに来ますね。

 どうやら、最後の一人にと思われたようです。

 さあ、何と言って分かち合いましょうか?

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