18 七草 かよ
俺の幼馴染の七草かよは、国を人種を越えた美貌を持っていた。
ある日、彼女がこんな事を言い出した。
「最後の一人になったら、私を食べて良いよ」
場に居た男達に衝撃が走る。
彼女の体は、例え相手の趣味嗜好に合わなくとも、皆が触れたいと、手に入れたいという欲求を刺激するものだったから。
女子達は、血走る男達を見て「男子、最低~」と冷ややかに見ていた。
彼女の発言は、市を越え、海を越え、国を越え、広がっていった。
始まる七草かよ争奪戦。自身が最強だと、最良だと、アピールするために繰り広げられる様々な合戦。しかし、それはまだ最悪の序章でしかなかった。
容姿、権力、財力。そんなアピールが終わった後に残されていたのは力。
そう、腕っぷしでの戦いだった。
男達は次第に七草かよが暮らすs市に集まっていった。
俺もまた、幾つもの死線を乗り越え、ついに最後の一人まで勝ち上った。
「とし君がやっぱり残ったんだ。うん、私の予想通り」
彼女は笑みを俺に向けた。
「ああ、そうだな。俺もこの時を待ち続けていた。さあ、始めようか」
俺は構えた。すると、彼女は高笑いをした。
「私を誰だか知ってるのに挑むんだぁ」
「分かっているさ。七代目七草。歴代最強の七草だってなぁっ!!」
「いいよ。さあ、私を喰らってみなよっ!! セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロの七つの印の重さに耐えられるならね」
俺達はぶつかり合った。裏世界ではその暗殺術で知られる七草。彼女はその頂点に君臨する七代目だ。
一方の俺は、彼女の幼馴染というだけで、優れた実力など無い下っ端。けれど俺は、そんな実力の差を理解して彼女に挑んだ。
戦いは七日七晩行われた。これまでの経験が、戦いが、俺を成長させていた。
そして決着が着く。
「俺が、俺が八代目七草だっ!!」
勝ち取った栄光。上げた勝どき。
けれど、全てが空しい。
俺の隣には、最愛の人が居ないのだから……。