15 コント 出会い
「はい、どーもー。今日はですね、異性との出会いについてお話していきたいと思いますー」
「つまりはナンパですね? そうですね?」
「ちょっと、お前さぁ。そんな直球で言うの止めてくれる? 品位ってもんがあるでしょうよ」
「あー、そっかそっか。フィィィィシュって言うわ」
「んー、それならよ……てぇなるかぁ。釣るとか言うな、釣るとか」
「駄目? まあ、表現について話していると持ち時間無くなるから、本題に行こうや」
「急に真面目な事言い出したな。まあ、良いわ。じゃあ、本題に。あなた、ナンパする時、なんて声をかけますか?」
「お嬢さん、落とし物ですよ。僕との出会いを落としましたよ」
「うわ、気持悪っ。ほんとにそんな事言ってナンパしてるの? てか、急に僕とか言うな」
「え、してないけど。それによ、僕って言うと素朴感というかピュアボーイ感出ない? 僕とお茶しませんか? みたいな」
「出るか~? 出ないだろ~」
「駄目か。じゃあ、こんな出会いはどうだ?」
「お、何やるんだ?」
「俺の名前は俊也。花も恥じらう46歳。今日もジャムパンを咥えて急いでいた」
「俊也って、俺の名前じゃないか。しかも、46って……。まだ25だぞ」
「そんな事は良いから、ほら、曲がり角でぶつかる設定で行くから、あっちからこっちに来て」
「ああ、べたなシチュだな。まあ、良いわ。行くぞ。ああー、遅刻遅刻ー」
「角でぶつかり合う俺達。俺は彼女に言うんだ。大丈夫? 怪我は無い?」
「急いでて、ごめん。怪我はしてないよ」
「互いに無事を確認する俺達。この時、甘酸っぱい匂いが二人の間で香っていた」
「ああ、青春の予感って奴だな。ってぇ46との青春!?」
「彼女の顔には、俺が朝食で咥えていたイチゴのジャムがたっぷり塗られたパンが顔面にべったり張り付いていた」
「おい、さっきのジャムパンって、食パンに塗った奴か。それ、彼女家に帰る状況じゃないかよ」
「彼女を心配した俺はこの後、彼女の家まで付いて行った」
「いや、付いて行く必要無いだろ。初対面の男を招く方も招く方だけどよ」
「今夜は冷たい床で動物園の動物気分を味わう事になりそうだ」
「おい、掴まってる。掴まってるって、俺。いや、俊也」
「こんな出会い、駄目か? 俊也」
「ここで俺の名前を呼ぶな。俺がやらかしたみたいになるだろ」
「あー、これ駄目か。なら、これはどう? ちょっと曲がり角でぶつかるシーンまで戻って」
「またぁ? まあ、良いけど。あーん、遅刻遅刻ー」
「はい、ビターン。君の顔が宝石みたいに輝いてプルプルしているよ。この甘酸っぱい匂いは、恋の匂いかな?」
「それ、食パンに塗りたくったイチゴジャム。しかも、自分でビターンってパイみたいにぶつけに行ってるじゃないか」
「お気に召さない? じゃあ、次行こう。ちょっと街歩いてる感出して」
「おお、別シチュか。良いぞ」
「そこの人ー。少しお話良いですか?」
「はい、何でしょう?」
「ちょっとこれ買ってくださーい。壺、壺でーす。縄文風でーす」
「壺売りじゃないか。強引な客引きは禁止されてるんだぞ。それに縄文風って何だよ」
「ガシャーン」
「今のは何の効果音だよ」
「お前に被せた壺が割れた音。これであなたはドッキドキ。君の心をお縄にしちゃった♡」
「怖い事するなよ。別の意味で心臓に悪いわ。それにならないって。上手い事言った感出してるけど、つまんないからな。ちゃんと道路、掃除しとけよ」
「あー、待って待って。絵、絵画要りませんかー?」
「今度は絵のセールスかよ。どうせ高く売りつけるつもりなんだろ。絶対買わない」
「ガバーン」
「ちょっと待て。それ、絵画で俺を叩いた音か?」
「そう。突き抜けて、今のお前はエリザベスカラー。女王様ー」
「ペットのじゃない本家の方かよ。どんな人か知らないから反応出来ないわ」
「その絵の通りですよ」
「ん? うわこれ、顔ハメかよ。なら、さっきの音は何だったんだよ」
「先ほどので顔ハメ部分の板抜けたんだよ」
「なるほどなー。って、絶対にああはならないよっ。ったく、碌な出会いが無かったぜ」
「なら、これはどうだ? 満席の喫茶店。お前は真冬にコーラフロート。俺はソーダフロート。今日は冷えますねーなんて世間話して意気投合するっていうのは」
「それ、俺達の出会いじゃないか。笑い話にもならないよ」
「いや、ここから笑いの話になるんだよ」
「もういいわ。ありがとうございましたー」