153 罪の教室
「はい、全員大人しく縛に就けー」
それは何ら変わらぬ何時もの朝の一幕だった。
担任教師の一言に、ざわつかぬ生徒は一人も居ない。
「せんせー。どうして捕まらないといけないんですか?」
「無知は罪なので、縛に就きます」
「先生。今のは罪では無いと思います」
「目上の者に対して意見するなど言語道断だ。縛に就けー。しかし、何故そう思うのか話を聞こうじゃないか」
「一切の説明も無く逮捕する事は法で認められていません。なので、一方的な逮捕はこの法社会において、法を蔑ろにしていると思います。なので、説明を求めます」
「おう、そうか。よく勉強しているな。偉いぞー。では説明しよう」
担任教師の口からどのような理由が出るのか、生徒達はその時を待った。
「えー、簡単です。君達は正し過ぎた。以上」
意味が分からないと、生徒達。
「私達が無遅刻無欠席なのがいけないんですか? 病気をしないように健康を守って学校に通っていることが駄目なんですか?」
「授業だって誰一人眠る事無く受けています。皆で助け合い、先生方から教えていただいた知識を欠片も落とさぬように記憶し、習得し、テストも全教科満点だったではないですか」
「そうです。皆、親の言う事をよく聞き、下校時の寄り道もしていません。仮に寄り道をしたとしても、それは非常時です。買い食いをする時も、夏場や緊急時の時ですし。こんな自分達を捕まえるだなんて、どうかしていますよ」
生徒達からは次々におかしいと声が挙がった。
そこの声に対し、先生は言う。
「全員の思いは先生にしっかりと届きました。だから言いましょう。人は正しさだけでは生きてはいけません。正しさのみで生きる人は罪なのです」
どこまでも自分達を罪人扱いする担任教師に対し、生徒達はある一つの決断をした。
言葉や文字など必要無かった。場の空気だけで、生徒達は皆でする事を把握した。
「よし、皆行くぞっ」
学級委員長が席を立って動くと、後に続いて生徒達が担任教師の動きを封じた。
「こ、これはクラス社会においての反逆。社会を崩壊させるだなんて、なんて悪だ。誰か、誰かー」
担任教師が人を呼んでも誰も来ない。
それどころか、生徒達が丸太を担ぐように校長室へと向かった。
その後、新しい担任を迎えた生徒達は、何時もと変わらぬ日常を過ごしている。