150 多発地帯
最近、スリ事件が多発している地域の捜査にやって来たが、現場は繁華街。
ウインドーショッピングが出来るようにか、店内が外からでも見えるようになのか、大きなガラスで中が見れるようにしている店が多い。
確かに人が多く、逃げやすいようにも思うが、人が多い分だけ目撃されるリスクが高い。更には店内の人の目も掻い潜る必要性がある。
犯人はよっぽどスリルがお好きらしい。
しかし、悪事は悪事。絶対に見逃しはしない。
そんな決意を胸に、俺は仲間と共に繁華街中の監視カメラを見て回った。
その数と膨大な時間を調べなければならず、捜査は難航し続けた。
何せ、被害者に話を聞いても何時取られたか分からないというのだ。
話を聞き、被害者が通った道にある店や繁華街のカメラを確認する。
精神が擦り減る作業が続き、疲弊していく仲間達。
その間にも被害者は増えていく。
どれほど細かく見ても、犯行の瞬間を見つけられず、迷宮入りかと思われた時だった。
「盗まれていた品が見つかりました。それも大量にです!!」
この一方に、俺達は皆で現場に向かった。
一体、犯人はどんな奴なのか。どれほどの凄腕だったのか。
挫けそうな日もあったけれど、追いかけ続けた犯人に辿り着いた。そう思い、現場に向かうと、異様な空気に包まれていた。
ガラスが盛大に飛び散り、気を付けて動かなければ靴底を貫通しかねないほどに舗装された道に巻かれていた。
「一体、何があったというんですか?」
俺は先に居ていた交番のお巡りさんに訊ねた。
「何と言えば良いのか……。信じられないかもしれませんが、突然こちらの店のガラスが割れたんです。そうしたら、割れたガラスの中からあれが……」
お巡りさんが指差したのは、山となったサイフや電話。
俺は、現場となった店の前を捜査で何度も通った。だから断言できる。詰まれているあれらが入るようなスペースがガラスの間にある訳が無いと。
それに、どのように見ても、この店のガラスを通して違和感無く、中も外も見る事が出来たと。
結局、どれほど調べても、俺達にはたった一つの事しか分からなかった。
犯人がスリガラスだったという事以外は……。