149 タイムリミットヒーロー
「怪獣だー。巨大怪獣が現れたぞー」
人々が叫び、逃げ惑う。
そんな時は俺の出番だ。懐に忍ばせた真空加工で温度の変わらない水筒の蓋を外し、変身アイテムのインスタイマーにお湯を注ぐ。蓋をすれば変身完了だ。
巨大化し、巨人の姿で戦うこの姿の時の名前はタイマーメン。俺は正義の味方タイマーメンなのだ。
「ふぅ、今日も怪獣退治終了っと」
必殺技で怪獣に遥かな眠りの旅を捧げた所で、活動限界がやって来て、俺は本来の姿である岩清水に戻る。
変身アイテムのインスタイマーは、お湯を注ぎ、蓋をしてから三分間の間だけタイマーメンになれるという仕様だ。
インスタイマーのおかげで、俺は何度も世界の平和を救ってきた。けれど、最近思うんだ。
(敵、強くなってね?)
最初はピンチにならずに倒せていたけれど、最近は時間ギリギリだ。
俺はヒリヒリした場面は好きじゃない。それに、もしも時間内で倒せなかったらと思うと胃に穴が開きそうだ。
この世界には、怪獣退治に特化した国の組織なんて無い。だから余計に俺に世界平和が圧し掛かっていた。
ある日、俺の悩みを解決するヒントをテレビから得た。
その手が在ったかと、膝を叩くほどの衝撃だった。
丁度良く、怪獣も出現し、これは試す時だと、俺は変身を試みた。
すると、変身が出来た。
(ふう、かなりの強敵だったが、倒せたぞっ)
戦い済んで、ホッと一息。時間で言えば五分は戦っていただろう。
そう、三分の壁を超える強敵だったんだ。
(さて、これからどうしようか)
今までの活動限界を越えた事、閃きに有効であった事は嬉しいけれど、この後の事は考えていなかった。
色々試した結果、俺は新たな事実を発見した。
インスタイマーは途中で変身を解除する事は出来ない。
そう、時間が来るまで、タイマーメンの姿のままなのだ。
集まってくる人々。足元にはわらわらと人が集まり、取材だ、インタビューだと言っている。
俺は困り果てていた。
だって、まだ十分しか経っていない。
水を入れて作るカップ麺は三十分で出来るらしい。俺もそれに倣って水を入れてみた。
後二十分をどう過ごせば良いのか。
夕日に照らされ、気まずく途方に暮れた俺は天を仰いだ。