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なんだこれ劇場  作者: 鰤金団
132/166

126 将来の夢

「ねぇ、岩ちゃん。将来の夢って何?」

「ぼくはね、ロボット。巨大ロボットになって地球の平和を守るんだ」

「ロボットって、子どもね」

「笑うなよぉ。じゃあ、みっちゃんの夢はなんなのさ?」

「私の? 私のはね――」



 幼い頃の記憶だった。幼馴染だった彼女は、今どこでどうしているのか分からない。

 この会話の数年後、僕は事故に遭った。

 そして、目覚めた時には巨大ロボットになっていた。

 眠っている間に宇宙から強大な敵、アクドリアンが現れ、地球を手に入れようと襲ってきたんだ。

 この展開は、僕が憧れた巨大ロボットが活躍する場面。そして僕は巨大ロボット。

 これは僕が立ち上がるしかない。

 そうして二年戦い続け、遂にアクドリアンとの最終決戦。

 しかし、ボスだったアクドリアン大王はとても強く、このままでは僕の体も限界だった。

 その時だ。

「岩清水君。今、君の下に援軍を送ったっ!!」

 それは僕を巨大ロボットにした目海尻めかいじり博士の声。

「ええ!? だってここ、月ですよ。地球からどうやって……。はっ、まさか!?」

「そうだよ。そのまさかだ。君も男の子だ。そして、その体に夢を見た一人。この意味が分からない君じゃあないだろう?」

 そんな言い方をされたらもう、確定だった。

「そうら、到着だ」

 音声が切れ、近付いてくる熱量が。

「岩ちゃん。助けに来たよ」

「そ、その声はみっちゃん!?」

 忘れもしない。僕の幼馴染のみっちゃんだった。

「私ね、みっちゃんと同じ姿のアンドロイドだったの」

「な、なんだって!? じゃあ、僕の記憶にある君は?」

「本物の私だよ。記憶までコピーしてるから、私もみっちゃん。あなたと同じよ」

 僕も人の時の記憶をロボットに移し替えている。だからそこに抵抗は無かった。

「再会できてうれしいよ。さっそくだけど、良いかな?」

「うん。私達が一つになれば一千万倍だよ」

 みっちゃんも合体の何たるかを理解していたみたいだ。

 うれしくて、液漏れしそうだった。

「それじゃあ始めようか」

「うん。やりましょう」

 エンジンを吹かせ、飛び上がる僕ら。

 二つの体が一つになり、二つの心で無限の力を生み出す。

 そして完成する最高最強の僕ら。

「「究極アルティメットオメガナックル!!」」

 今までにアクドリアンがしてきた行いを許さないと、鉄拳制裁。

 合体した僕らの力で、ついに平和を手に入れた。

 合体を解除し、僕らは手と手を取り合い、平和と再会を喜んだ。

「ありがとう、みっちゃん。最高の合体だったよ」

「もう、岩ちゃんったら。合体って表現だけじゃ味気ないよ」

「そう? う~ん。じゃあ、夫婦合体ってどう?」

「め、夫婦!? それって……」

「うん。結婚しよう。この再会とこの体。絶対に運命だよ」

「久しぶりの再会なのに急展開過ぎるよぉ」

「色々押しているからね。子どもは何人欲しい?」

「ええ~、それって大きさによるじゃない。ほら、私達の部品を分け与えるんだし。まずはそこからね」

「おっとぉ、これは徹夜じゃすまないな」

「もう、私達に睡眠は必要無いでしょ」

「はは、早速パーツを一個取られた気分だ」

 そんなやりとりを見ていた目海尻博士の手は震えていた。

「は、博士?」

 その様子に気付いた助手が声をかける。

 博士は無言で何やら操作を始め、隠しボタンを出現させた。

「え、何考えてるんですか、はかせぇっ!!!!」

 ボタンに気付いた助手。しかし、一歩遅れ、博士は無言でスイッチを押した。

 ポチッという音と共に、月で二つの花火が上がった。

「はかせぇっ。あんた、何やってるんだ!!」

 助手の声に博士は言う。

「ロボットにも相手が居ると思うと、わしゃ悲しゅうて悲しゅうて……」

 研究に全てを注ぎ、その集大成を目の当たりにした博士の顔は涙に濡れていた。



 因みに元となった岩ちゃんとみっちゃんは今も元気に過ごしていて、この後に開かれた同窓会で再会する事になる。

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