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なんだこれ劇場  作者: 鰤金団
125/166

119 話聞かない系勇者

「魔王様大変です」

 数時間前に復活したばかりの側近がえらい勢いでやって来た。

「何々、今午後ティータイムなんだけど」

「ま、魔王様?」

 オフタイムはラフにと決めていた魔王。その姿に戸惑う側近。

「いや、それりもうぎゃぁぁぁぁ」

 台詞の途中でバッサリ背後から切り捨てられる側近。

「え!? 何々?」

 突然の事に驚く魔王。優雅に構えていたティーカップの中身がこぼれて、下半身が色んな意味で大惨事。

「かくごぉぉぉぉっ!!」

 威勢の良い声で迫る不審者。

 防御するまもなく、魔王は一撃を浴びせられた。

「うわぁぁぁぁ……。って、痛くない」

 それどころか、ラフウェアも斬れてな~い。

「く、流石は魔王だ」

 一度下がる不審者。

「いやいや。これ、近所の人間の服屋で買った普通の服なんだが? そもそもお前は何者なんだ?」

「俺は勇者だっ!! 名前は」

 そのまま名乗る勢いでまた斬りかかってくる不審者。

「全然攻撃聞かないんだが。そもそも、不意打ちするとか勇者にあるまじき行為なんだが?」

 そもそも自身とまともに戦うに値しない実力に困惑している魔王。

「お前、レベルは幾つだ?」

「れ、れべ?」

 何一つ理解していないような表情。

「いや、勇者なら王様から説明があっただろう」

「お、おう?」

 何故疑問形なのか。

「だから説明があっただろう?」

 改めて確認する魔王。

「……会ってない」

「え?」

「会ってないっ」

 意固地になっているような反応をする勇者。

「え、王様から認められないと勇者では無いぞ」

「そんなの知らない。呼ばれるまで待ってられなかったし」

「まあ、勇者は量産品だからな。先ほども無限増殖する勇者を葬ったばかりだ」

 きっと今も増え続けているだろうと、背筋を震わせる魔王。

「そもそも、どうやってここへ来た? その実力だとここまで来れないだろう?」

「なんか、団体で魔王城に行く奴が居たから付いてきた」

 今日来た勇者に付いてきたと知る魔王。

「よくその実力で挑んだな」

「隙を突けば行けると思った」

 そう言ってまた仕掛けてくる勇者。

「いや、そもそも、防御を抜けれていないんだよ。その実力じゃ、地元の敵も倒せないだろ」

「は、ハエなら倒せたし」

(ん~、それはこちらとは無関係だ)

 外で戦うための実力自体に問題があると判断した魔王。

「もう、今日はオフだし。故郷まで送ってあげるから、勇者諦めな?」

「分かった。そうする」

 素直な反応を見せる勇者。

「休んでいる所を邪魔した。これ、地元の名茶」

 お湯で溶かして飲むタイプの丸薬を手渡す勇者。

「そうか。では、もらおう」

 空になっていたティーカップに入れ、飲む魔王。

「う~ん、とってもヘルシング」

 内面から綺麗になっていく感じがする魔王。

「だからと言って、攻撃が通じる訳では無いぞ」

 堪能している所をまた攻撃してきた勇者。

「本当に話を聞かないな。何処へでも行ってしまえ」

 何処かへとワープさせる魔王。

「全く、勇者の質が落ち過ぎだ。王に抗議しなければ」



 後日。抗議をした結果、裸踊りをする勇者や自分の体を鞭で打ちつつやって来る勇者など、怪しい者ばかりが魔王城を訪れるようになり、魔王は頭を悩ませ、人間に敗れ去った。

 こうして世界は、別の意味で危険な奴らが溢れる世界へとなり下がってしまった。

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