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なんだこれ劇場  作者: 鰤金団
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117 コピペ勇者

 知らせは突然やって来る。

「魔王様、勇者です。勇者達がやって来ました」

 側近が大慌てで我に知らせに来た。

「そうか。遂にここに来るまでになったか」

 今、この世界は二つの勢力が争そっている。

 一つは我率いる魔王軍。そしてもう一つは勇者を筆頭とした人類軍。

 勇者とは、人類の中でも秀でた才を持つ者が選ばれるという。

 今日この時、ついにその勇者が我が城へとやって来たのだ。

 しかし、我が恐れる事は無い。我が魔王であるからというのも理由だが、魔王城の入り口には強力な火を吐くドラゴンが門を守っているからだ。

「側近よ。今、勇者はドラゴンの炎に苦戦しているのであろうな」

「いえ、魔王様。ドラゴンは火呼吸になり、その隙に倒されました」

「何だと!? 過呼吸で?」

 屈強なドラゴンがそのような状態になるとは、どういう事か。

「いえ、魔王。過呼吸では無く、火呼吸です。ドラゴンは火を吐き過ぎてしまったのです」

「ああ、それで火呼吸か。っと、馬鹿者。上手い事言わなくてよい。しかし、勇者達は四人組だったな。それほど強力な防御魔法の使い手が居たのか?」

「いえ、居ません。とにかく焼かれていました。もう、ドラゴン戦の現場は消し炭だらけで大変です」

「んん? たかが四人だけのパーティーで、何故そのような状態になるのだ?」

「魔王様、そこから間違っているのです」

「何? 勇者、戦士、僧侶、魔法使い。この四人で旅に出ていると報告をしていたのはお前ではないか」

「間違ってはいません。ですが、それは数時間前の話です。今は、勇者だけです。もう、幾つ子なのかというくらい、勇者だけです。全員同じ顔です」

「何を馬鹿な事を言い出すのだ。勇者の侵入を許し、気でも振れたか?」

「いえ、そうではありません。グギャアッ」

 側近が背後から襲われ、倒れてしまった。

 頭脳明晰なとても優秀な側近だったというのに……。己許せん。後で防御に長けた希少種に転生させて生き返らせておくとしよう。

「背後から斬りかかるとは、それでも勇者かっ!!」

 このような行為をするのはこの場において一人しか居ない。

「おまえぶあbらyghだsだら」

 幾つもの声が重なり、頭の部分しか聞き取れなかった。いや、そんな事よりも驚く事がある。

「貴様、何人いるんだ!!」

 そう、側近が言っていた通り、装備まで全て同じ人間が入りきらないほどに居たのだ。

「俺は新しいスキルを身に付けた。それはコピペ。どういう意味かは分からないが、使うと俺がどんどん増えていったんだぜ」

 本物? らしい一人が喋り、後は全員で腕を前に出すポーズを決めていた。

(き、気持ち悪い。なんだ、この勇者……)

 分身と言うには数が多すぎる。いや、それよりも尋ねておこう。

「貴様が共に旅をしてきた仲間はどうした? まさか、そのスキルを手に入れ、切り捨てたのか?」

「ち、違うっ。仲間は皆、里に帰っていった。これだけ居ればもう自分達は必要無いだろってさ」

 俯き、涙をこぼす勇者。

「共に歩んだ仲間だというのに、随分と薄情だったな」

「……そうだな。それと、たくさん居てなんか気持ち悪いって言われた」

 ああ、それは我も思った。

「そうか。だが、同情はせんぞ。我らは敵だ。そして、邪魔なので全て異空間送りだ」

 指をパチンと鳴らし、勇者軍団の足元に大穴を開けてやった。

「な、何だこれは!?」

「それは全てを飲み込む異空間だ。お前はそこで永遠に彷徨うが良い」

 高笑いで沈みゆく勇者を見送る。

「くそう。絶対に数を増やしてここから出てやるからな。覚えていろ!!」

 その増えた数を想像し、背筋が冷えた。実に嫌な捨て台詞だった。

 しかし、こうして勇者は倒れた。

 そう、魔王城に平和が戻ったのだ。

「ああ、気持ちの悪い集団であった。結界を貼っておくとしよう」

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