115 スノーエンジェル
僕のクラスには天使が居る。
彼女が居ると、教室がパァーッと明るくなる。
彼女が笑うと、皆の表情が緩む。
彼女が話すと、誰もが耳を傾ける。
肌が透き通るように透明で綺麗な彼女。愛嬌があって、可愛いその子は、僕らの天使だった。
そんな彼女だったから、色んな人が彼女と親密になりたくて声をかける。
でも、未だに彼女の隣りに特定の相手は居ない。
校内で一番モテると噂の人さえ撃沈していったのだから、僕なんかでは絶対に無理だろう。
あの時まではそう思っていた。
ある日の放課後。僕は、彼女を呼び出していた。
「好きです。付き合ってください」
単純に真っすぐに思いを伝え、頭を下げた。
僕が一歩を踏み出せたのは、とある情報を小耳に挟んだから。
それは、僕は彼女のお兄さんに似ているらしい。
女の子は、父親と似た人を好きになるとかなんとか。
なら、その父親に近い存在であるお兄さんに似ていると言われた僕は、大いに可能性があるのでは!?
そう思い、僕は勇気を振り絞って告白をした。
「どうですか?」
彼女に訊ね、顔を上げる。
「はっ? お兄ちゃんに似てる人とか無理なんですけど。流石にお兄ちゃんは無いって」
そこには、素で引いて断る天使の姿が在った。