112 愚問の神
「それでね、ちょっと質問させて」
「あの、何がそれでね、何ですか?」
いきなり始まった物語。それは突然話を振られた石清水も同じだった。
「ふふ、愚問ですね。あ、わす、愚問の神なんですね」
「あ、神様だったんですね。いや、人じゃないのは何をどういえば良いのか分からない外見だったので分かったんですけどね」
「よく神様には見えないと言われますね」
「そうでしたか。それで、どうして私の前に? 私の人生をこの先、ツキまくりな人生にしてくれるためにやって来たんですか?」
「ふふ、残念ながら違うんですね。わす、愚問の神なのでね」
「ああ、違うんですね。何だぁ……」
希薄な感情でも表に出るほどにがっかりする岩清水。
「期待に応えられず、すみませんね。それで、ちょっと質問させてね?」
「もう、どうあっても質問するんですよね。良いですよ」
「ふふ、では質問ですね。うんこ味のうんことカレー味のカレー。どちらを選ぶね?」
「……」
石清水は、自称神から出た質問に言葉が出て来なかった。
「難問過ぎたようですね」
「いやいや、そうじゃなくて。あまりにもしょうもない質問だったので開いた口が塞がらなくて」
「ふふ、そうだったんですね。わす、愚問の神なのでね。では答えをね」
「ああ、はい。考えるまでも無く、カレー味のカレーに決まってますよね」
「あなたは多数派ですね」
「え、これ、少数派も居るんですか?」
「愚問ね」
自称神はそう答えたが、石清水は、愚問だろうかと思った。
「では第二問」
「あ、まだ続くんですね」
「今現在、一切の予定があなたが寝ていました。途中で目が覚めましたが、まだ眠いです。寝ますか? 起きますか?」
さっきからなんだこれはと岩清水は思った。
「何も用事が無くて、眠いのなら寝ます。体が求めているみたいなんで」
「求められたら寝る、と」
「ちょっと語弊が酷過ぎませんか?」
「内なる声に耳を傾けるのはとても大事ね。心と体が合わないと壊れていくのが人間ね」
ちょっと神様っぽい事を言い出したなと、岩清水は思った。
「続けて第三問ね」
まだあるのかと思ったが、岩清水は先ほども流されたので、何も言わなかった。
すると愚問の神は言葉を続けた。
「あなたは感謝されたいですか? 嫌われたいですか?」
「そんなの決まっていますよ。生きているのなら、嫌われるより感謝された方が良いに決まってます」
「分かったね。では、問いに答えてくれたお礼にね、その願いを叶えるね」
「は? え? それはどういう――」
突然現れた神を名乗る存在は、これまた突然に消えてしまった。
あれからもう五〇〇年が経った。
私はあの出来事の後、体にありえない事が起こっていた。
ただの人間だったというのに、調べるほどに未知の成分や寿命を伸ばすための手がかりが発見されるようになった。
私の体を通せば、どのような病気でも治る成分が見つかる。
そのような特殊な退室になり、私は多くの人から感謝されるようになった。
そのまま天寿を全う出来れば良かったのだが、私は生き続けた。老いる事無く、若い肉体のままで。
あの神はとんでもないものを私に残していった。
感謝され続ける限り、生き続けられる体だ。