109 最終魔法少女
僕と契約した魔法少女は、コンパスを開いて魔法を使う。
最近流行のコスチュームや、集めて色んな事が出来るアイテムなんて一切無い。
今の魔法少女に比べると地味でしかないのだけれど、彼女は僕と契約をしてくれた。
「テペルピ テクナキ ブセタヌカ」
彼女は魔法を使うための呪文を唱え、今日も地域の皆さんのために魔法を使う。
ご近所お助け系魔法少女として活動を送り続けて数か月。
大事件が起きた。
「皆さん、急いで逃げてください。隕石が、隕石が落下してきます」
冷静が取り柄のニュースキャスターも取り乱す一大事。
そう、僕らが暮らす街に超大型隕石が降ってくる。
直撃したら大惨事な状況。
まず、大気圏を突破できる魔法少女達が宇宙へ向かった。
けれども全然壊れない。
次に空を飛べる魔法少女達が頑張った。
少しだけ小さくなっただけだった。
欠片は、地上に居た魔法少女達が、被害が出ないようにと頑張った。
けれども、元々が大きい隕石をどうにかしないと意味が無い。
一陣、二陣の魔法少女達が力尽き、三陣は欠片を処理するので手一杯な魔法少女しかいない。
そこに僕らも含まれていた。
皆、それぞれ隕石を攻撃したけれど、全く壊せない。
その時、僕と契約した彼女が皆に呼びかけた。
「お願い、皆。私に力を集めて」
彼女は魔法の呪文を唱え、隕石を攻撃した。
すると、隕石の落下と魔法の力が拮抗して落下が止まった。
「くっ……。お願い、皆……」
ほぼほぼ力を使い果たしている周囲の魔法少女達。これ以上は、魔法少女に変身出来なくなってしまう。
皆が沈黙していると、現在の魔法少女の中でもっとも人気のある魔法少女が声を挙げた。
彼女の名は、リリマジ。想像と夢の力の結晶であるドリマストーンを集める、現代の由緒正しき魔法少女だった。
「皆、思い出して。私達の力は皆の夢と希望の力だよ。その力があんな石に負けるなんてないよ。今、皆の力を会わせて、彼女と一緒にやっつけようよ。私達が夢見て、憧れた魔法少女は、何時だって最後には皆の力で奇跡を起こしてきたでしょ」
リリマジの言葉に、一人二人と魔力を送ってくれた。
そう。今、リリマジの言葉によって、僕が契約した魔法少女に、全魔法少女の力が集まっているんだ。
どんな宝石よりも、星よりも美しい光に包まれて、彼女は隕石に魔法を使う。
「テペルピ テクナキ ブセタヌカ 隕石よ、消えてしまえぇぇぇぇぇっ」
魔法の力だけじゃない。一緒に声援を送り、全魔法少女が彼女を応援していた。
彼女の放った魔法は、やがて直視出来ないほどの輝きになって、音も風も無く無音になった。
輝きが治まると、眼前に見えていた隕石の姿は無くて、見慣れた青空が広がっていた。
喜ぶ魔法少女達。けれども、その姿は特別なものでは無くなり、何処にでもいる普通の女の子のものだった。
「や、やったぁ。あっははははは」
唯一、僕と契約をしていた彼女だけが変わらない姿で立っていた。
「そ、そうね。やったわね」
リリマジだった少女が、悲しいけれど喜ぶべきだという表情で、彼女に同意した。
「やっと唯一の魔法少女になれたよ。長かったんだぁ。隕石を引き寄せるのにも苦労したんだから」
「あ、あなた、何を言っているの?」
元リリマジを含め、全員が理解出来なかった。
「魔法少女は私一人で良いって事。全ての魔法は私の中よ。もう誰の手にも届かないわ。私が最終魔法少女よ」
それは、彼女の魔法独占宣言だった。
ここから、彼女による魔法を使った支配が始まった。
全てが魔法で解決する世界。理屈なんて必要ない。
彼女が願ったのは、自分の魔法にかかったこの星の全ての存在が魔法で幸せに暮らせる世界だった。
僕はとんでもない少女を魔法少女にしてしまったらしい。
とは言っても、もうどうにもならない。
彼女によって強制されてしまったのだから。
しかし、これが後に始まる戦いの始まりでもあった。
そう。魔法少女バトルロボット大戦と呼ばれる、戦いの……。