106 皆さんこんにちは
その日、人類は新たな隣人を得る事となった。
「皆さん、こんにちは」
それは誰の頭の中にも聞こえた声だった。
始めは何処かから聞こえてきている音声だろうと、ほとんどの人は気にしなかった。
「皆さん、聞こえていますか? あなた達に呼びかけています」
街中、ラジオ、テレビ。そのどれからも類似した場面が無かった事で、半分くらいの人が気付いた。
「皆さん。山に、川に、海に。それ以外の場所に居るあなた達にも呼びかけています」
電子機器の無い場所に居る人も、これで様子が違うと気付いた。
後は正気を疑ったり、正気では無い人達だけが声の存在を認めなかった。
人々が声の存在に気付いたと分かると、声の主は言った。
「始めまして、皆さん。恥丘のみなさんとお友達になりたくて、今、こうして伝達装置を使い、皆さんに呼びかけています」
皆がざわついた。
「もしかして?」「遂にその日が?」「今日がそうだったのか?」
そんな声が世界中に広がっていた。
「調べた所、恥丘の皆さんは、それぞれに違った言葉を話しているので、変換装置も使って呼びかけています。恥丘の情報を学習させているので、皆さんも違和感を持たず、理解出来ていると思います」
世界中は確かにそうだと、声の主が持ってきた技術に驚いていた。
それから声の主は、自身がヌトラ星系にあるポット星からやって来たメトピッピだと自己紹介を始めた。
自身の素性を明かし、何故人類に話しかけているのかを説明していく。
人類の許しがあれば、降りたって、直接的に積極的な交流をしたいと語るメトピッピ。
あれやこれやと人類と会話をし続け、メトピッピは人類に受け入れられる事となった。
「ありがとう、恥丘の皆さん。本当にありがとう」
メトピッピはとても喜び、降り立つ準備に入ると言って一度会話を終わらせた。
世界が宇宙人の友人を持ったと沸き立つ中、とある国の半分は、どの国よりも強く親近感を持ったという。
それは、唯一メトピッピの翻訳が誤訳された国。
日本の男子達は、メトピッピに会うその時を、どの国よりも楽しみにしていた。