98 板前クラッシャー 前編
「はい、皆さま、18時ですよー。18時と言えば何ですか~? そう、板前クラッシャーのお時間です」
軽快なミュージックと共に始まるオープニング。
「はい、解説実況判定全ては私の思うがまま。MCの全種です。どうぞよろしくお願いしま~す」
お店の中から、お辞儀でご挨拶を済ませる全種。
「はい、この番組はですね、有名料理人に番組で用意したクラッシャーの妨害に屈せずに料理を作っていただこうという番組です。では、今回の料理人をご紹介しましょう」
紹介VTRが流れ始める。
本日の料理人はここ、原市下り町にお店を構える、繊細な味とよく見る料理で評判の割烹料理屋てづまりの料理長兼店主の千木良 多伊能さん57歳です。
料理で心掛けている事は何ですか?
「明日のおまんまのためにも、毎日通いたくなる衝動に駆られるような料理を作る事です」
何故、ありふれた料理でお店をやろうと思ったのですか?
「見た事も聞いた事も無い物を食べるのは少数なので、それなら全部分かった上でこれ以外は食べれないという料理を作った方がこれが溜まると思ったからです」
お金のために料理をしているのですか?
「将来的に、大金を持って来て懇願されて料理を作る地位まで登り詰めたいと思います」
ありがとうございました。最後に、意気込みを聞かせてください。
「ドンナボウガイニモマケナイゾー」
「はい、という事で、最後だけ酷い棒読みでしたね。千木良さんには、是非賞金を勝ち取っていただきたいと思います」
酷いVTRの後でも一切気にせず進める全種。
「それではいよいよ登場です。いでよ、我が息子、じゃ無かった。我が番組が誇る板前クラッシャーよ!!」
巨大バズーカを店の入り口の左右からぶっ放し、紙やら糸やらをまき散らす中で、外から普通に入ってくる黒マントの男。
「パパー、ママがいい加減、籍入れ直そうって言ってたよー」
「ば、馬鹿。今は本番中だろ。その話は後だ」
「でも、そう言って30年も逃げてるじゃんかー」
「逃げてない。戦略的撤退というやつだ。馬鹿ッ」
ぽかりと板前クラッシャーを叩く全種。
「はい、という事で、何時もの小ネタでしたー。では改めまして、板前クラッシャーの岩清水の登場ですっ」
相当痛かったのか、岩清水はまだ頭を撫でていた。そして、音は消されているけれど、口では「労災? ねぇ、労災降りるよね?」と言っているのがお茶の間に流れていた。
――CM
「新発売のなんだこれ消しゴムは凄い。伸びない、滲む、消えない、破れる。四つの力で君のハテナを刺激するぞ!! 同時発売のなんだこれ消しゴムDXは粘り付き。もう絶対に使えない。近日公開、なんだこれ消しゴムEXの続報を待て」