97 旧態依然
その存在達は、とても不思議な生き物でした。
頭一つに手足が二本。辿れば、丸くなれば全てを包めるほどの体を持つ生き物でした。
よく見ると言えば、そうですが、よく見る事の無い能力をその生物達は持っていました。
それは、自分達の中で想像を生み出す能力。
これは、そんな生き物達のちょっとした一幕です。
「おいっす~、ペッペラペ」
ペッペラペに声をかけたのは、ペッペラス。二人は友人だった。
だというのに、ペッペラペは返事もしない。
妙だなと思い、よく観察して分かった。
「ペッペラペ、またのめり込んでるな」
やれやれとため息混じりに、ペッペラスはペッペラペの肩に手を置いて瞼を閉じた。
「おい、ペッペラペ。また失敗か?」
ここはペッペラペの精神の中。見れば大小様々な四角い物体が転がっていた。
「ん? ペッペラスじゃないか。遊びに来てたのかい?」
「そうだよ。で、ペッペラペは見た通りなのか?」
「ああ、そうなんだよ……」
今日だけではなく、もうずっと失敗続きだとしょげるペッペラペ。
「どれ、一つ参考までに自慢の一品を見せて進ぜよう」
そう言ってペッペラスが自分から取り出した二重らせん状の輪だった。
「ちょっと見て見ろよ」
ひょいッと気軽に投げて渡すペッペラス。
「わわ、これが壊れたらどうするんだよ」
落とさぬよう、割らぬようにと、慌てて受け取るペッペラペ。
「いくらでも作れるからな。大丈夫だ」
「気楽に作れる奴は良いよな。まったく……」
癪だと文句を言いつつ、ペッペラスの物体に目を近づけた。
中では自立した存在が自ら様々な物を生み出していた。
「どうしてペッペラスが作ったのは毎回こんなに生き生きしているんだろう?」
「別に特別な事はしていないぞ」
「形が違うだけなんだよなぁ。複雑な形で想像すれば良いのかな? ちょっとやってみる」
そう言って想像を始めるペッペラペ。
「幾つか試しに作ってみた。覗いてみてよ」
四角い箱が幾つも連なり、捻って捩じれてこんがらがっているようにしか見えない形を幾つも取り出すペッペラペ。
その一つ一つを覗いてみるペッペラス。
全て見終わった後にペッペラスは言った。
「ペッペラペの作った物には光が行き届いていない」
「え!? でも、ちゃんと最初は育つんだけど」
「光が通らない場所から駄目になってるんだ。これまで作った物体は全部どうなった?」
「真っ暗になって、何でも入るようになったよ。最近じゃあ、失敗したのを片付けるのに重宝しているよ。くっつければ吸引力も入れやすさを変わるしね」
「それ、なんか違うものに変わってないか? まあ、それは置いといてだな。四角という形を止めてみるのはどうだ? 試しに一つ作ってみろよ」
「四角の方が作りやすいんだけどなぁ」
けれども失敗続きというのも面白くないと、ペッペラペは別の形で作り始めた。
「よし出来た。ペッペラスのを真似して丸みに拘ってみたよ」
そう言って出来た球体をペッペラスに渡した。
「お、単純なだけあって、凄い速さで育っていっているぞ。成功じゃないか?」
「本当に!? よーし、もっと球体の形で色々やってみるぞー」
やる気を出したペッペラペは、その後、数えきれないくらいに様々な形の球体を作り出した。
余りにも作り過ぎた物体達は、場所が無くなって来たため、大きな四角い物体を作り、いつでも取り出せるようにと、ペッペラペが仕舞い込んだ。
そんな四角い箱の中に入れられた物体達は、不思議な調和を生み出し、今でも変化を続けている。そして、ペッペラペの物体作りは、際限無く果てが無い。