10 対決ボルト
世界を混沌で包もうとする軍団が居た。
対するのは、剣の腕を見込まれた戦士と類まれなる魔法の腕を持つ魔法使い。慈愛の心でパーティを支える僧侶と全ての状況で最適なチョイスをしてくれるパーティの生命線の荷物持ち。
この四人は、幾多の苦難と強敵との戦いを乗り越え、遂に軍団のボスと雌雄を決する事となった。
相手の名はボルト。
敵は魔法に長けた魔法使いタイプ。武器は頭が二つに分かれ、片方が動く不思議な杖。
パーティは、何時ものように戦士が敵を引きつけ、魔法使いが遠距離攻撃をする作戦で様子を見ることにした。
「僧侶、頼んだ」
「何時もので行くわね」
敵に向かう戦士に、僧侶が補助魔法をかけた。
この戦いが終わったら一緒に暮らす約束をしたほどの、息の合ったコンビネーションで強化された一撃がボルトを襲う。
「小手先の攻撃など防いでくれるわっ」
残念。戦士の攻撃は、ボルトの防御魔法で防がれてしまった。
「なら、これはどうだ。サンダーボルトォッ」
魔法使いの強力な雷がボルトへと走る。
「良い電流だな」
ボルトが褒めた。そして、杖の頭が動く。
「締めてやろう」
ボルトは杖を魔法に向けると、回し始めた。
「サンダーボルトが消えた!?」
魔法使いの魔法が消えてしまった。
「こんのぉぉぉっ」
いきり立つ魔法使いは、自身のスキルを発動させた。
「トリプルマジック……」
魔法使いは高密度の魔力を込め始めた。
「往生性やぁぁぁぁぁ」
魔法使いはファイアーボルト、ウォーターボルト、ウインドボルトを唱えた。
「器用な事をする人間だ」
不敵に笑うボルト。また杖を操りだした。
杖の効果だ。三つのボルト魔法は消えてしまった。
「ぬぬぬぅ……。だったら四つ同時だ!!」
魔法使いはクアッドマジックのスキルを使った。
しかし、魔法が出ない。
「そんなっ。沈黙や魔力切れでも無いのに魔法が出ないだと!?」
魔法使いは冷静ではいられなくなった。
「落ち着け。きっとあの杖だ。あれを壊せば戻るはずだっ」
戦士はもう一度攻撃を仕掛けた。
しかし、ボルトの鉄壁の防御の前には無意味だった。
「そんな。ここまで来たのに、これのままでは……」
僧侶の心が折れそうだ。
「見極めたっ!!」
静観していた荷物持ちが動く。
期待を込めた仲間達三人の瞳。
「いっけぇぇぇ、海水っ!!」
荷物持ちは七つのボトルをボルトに投げた。七つの海を移動した記念の思い出の品だ。
的確なコントロールで、空中のボトルに小石を当てていく荷物持ち。凄い。
「ぐっ。塩辛いっ」
海水を顔に浴びるボルト。塩水が目に効いているぞ。
「戦士、今だ!!」
「おうっ。僧侶、頼む」
僧侶がもう一度戦士に補助魔法をかけた。
更に強化された戦士の一撃。ボルトの杖が真っ二つだ。
「魔法使い、やっちまえぇぇぇっ」
「見せ場をもらうぜぇぇぇ」
テンション最大の魔法使いのクアッドマジックが発動した。
ボルトは跡形も無く消滅した。世界に平和が戻った。
「今回も逆転は荷物持ちからだったな。あれはどんな手だったんだ?」
「戦士。軍団の奴らは鉄と同じ体だった。だから、塩水をかけたんだ」
「じゃあ、錆びたっていうのか? それにしては早過ぎるだろ」
「特製の錆促進効果のある海水にしていたからだよ」
「凄いな、荷物持ち。おかげで、魔法を封じられた仕返しと止めを注す事が出来たぜ」
こうして戦いを終えた四人は、吉報を待つ王様の元へと戻った。
もしもまた、世界を脅かす存在が現れたとしても、彼らが再び立ち上がるだろう。
その子孫達も、立ち上がるに違いない。
何故なら、彼らの勇気は時を越え、世代を越えて受け継がれるのだから。