7.魔道具を探しに
ああ、なんて不幸なんだろうあたしって。ただ毎日平和にメダカを増やして暮らしたいだけなのに。
異世界転移が義務教育なんて信じられない!
おまけに、あたしだけ人でなく魔王だなんて。
おまけに、おまけに、メダカ同伴だなんて。
今のあたしの最優先課題は、メダカの餌の確保。
何とかしなきゃ・・・
餌の為に、人の街に出掛けます。もちろん、お忍びで。
新たに、巨大な仲間も加わります。
毎回ここに運び入れるのも大変だよなぁ。なんとか粉末に出来ないもんかな?
フリーズドライなんて魔法ないだろうから、天日干しで乾燥させるしかないか。
ん?ここは、魔法のある世界みたいだから乾燥の魔法 あるんでない?あるよねぇ?あるはず。
一応物知りそうなメリーさんに聞いてみるか。
「ねえ、メリーさんや」
面白そうに餌を食べているメダカを見ていた彼女が、ぱたぱたとやって来た。
「何ですか?魔おっ・・・ マリエ様」
今、危なかったねー(笑) あわててるし・・・ぷぷぷっ
「あの、沼から取って来た藻を乾燥したいんだけど、いい魔法 あるかな?」
お、不思議な表情で首をかしげている。ないのかな?
「あ、あの。かんそうって何ですか?」
そこかいっ!(笑)
「んーっとね、水分を無くしてカラカラに乾かす事だよ」
これで合ってるよな?
「ああ、そういう魔道具ならドワーフさんが持っているのでは?」
!!!!!!!!!!!!!!
「あるのっ!?そんな便利な物」
あたしは、バンザイしていた。さすが、異世界!やりたい放題!
だが、メリーさんは、腕を組んで考えこんでいる。
「前に聞いた事があるようなないような?いや、確かだいぶ前に聞いたような、いやいや昔の事だからなぁ」
「どっちなのーーーーっ!!!!!!」
思わず叫んでしまった。やばっ!!
メリーさんは、声の圧に吹き飛ばされて、くるくると回転しながら水槽のなかに ぽちゃん・・・
やってもうた・・・
「メリーさんっ、ごめんっ!ごめんねー」
「めだかさーん、騒がせてごめんねー!」
あたしゃあメリーさんを助け出すとひたすら両方に謝った。
あわれ、メリーさんは、ずぶ濡れになって目を回していたのだった。
ひたすら、ひたすら、あたしは謝った。
メリーさんは、立場的に怒るに怒れず、拗ねてしまったが。
みのちゃんが、何とかの木の実をあげたら機嫌が直ったようだ。
ナイス!みのちゃん。
でも、その実どこから出した?何で持ってた?おまえさんのおやつ? 謎の多いやつだ。
メリーさん今は、ひたすら貰った何とかの木の実をほおばっている。まるで、リスのようだ。
ま、それはいいんだけど、ドワーフかぁ。ファンタジーだわ。ほんまにいるとは、驚いたねぇ。
さっそく会いにいきたいんだけど、あたしはこの世界にドワーフの知り合いは居ない。
「みのちゃん、ドワーフってどこにいるの?知ってる?」
さっきから一言も発せず無表情で仁王立ちしているみのちゃんに聞いてみた。
「アルシアンの街で見かけたとの話は聞いたことがありますが。アルシアンは、城の北を流れるアルマ川の巨大な中州にある
人族の街で、この辺では一番大きな商業都市になります。」
ふーん、人族の街ねぇ。良く知ってるねぇ、人の街には立ち入らないんでなかったのかな?300年も経つとこんなもんかね。
じーっとみのちゃんをガン見すると、そっぽを向いた。自覚あるんだね、ま、とやかくは言うつもりはないけどね。
でも、魔王が乗り込んで行くのは、さすがにまずいだろうなぁ。思案顔で居ると。
「陛下であれば、人族に化身すれば問題ないかと」
「へっ?そんな事出来るの?」
あたしは、声が裏返ってしまった。めりーさんも呆れてこっちをみてるし。
「そんなの、簡単でしょうに」
もぐもぐしながら、めりーさんに言われてしまった。
「えっ?どうやるの?あたしゃあ魔法なんて使った事ないからー」
ぽろぽろこぼれて体に付いた食べかすをぽんぽんと払いながら立ち上がっためりーさんがこちらに飛んで来た。
そんな事も出来ないの?的な表情であたしを見ている。さっきまでのビクビクした態度はどこ行ったのー?
「まず、魔力を全身に巡らすのよ、わかる?こう、体全部に纏うように しゅっとやって、ぱーっと」
うーん、抽象的過ぎる。この世界にも長嶋さんの様な人は要るんだね。(人じゃないけど)、やってみるか。こう、全身に巡らすのね。
「んんんんんんっ」
「むむむむむむむっ」
こんな感じかっ!
「そうそう、いい感じいい感じ。そしたら、人族の形をイメージするの」
何がいいんだか分からないんだが、こうかっ!!
ぽんっ
あら、出来た。って、本来の姿に戻っただけなんだが・・・
やれば出来るもんなんだね。
「では、自分も」
ぽんっ
みのちゃんも人族みたいになった。ガテン系の大男だねぇ、イメージ通りだわ。なんかおっかしー。
皮膚の色も変えられるんだ。薄茶色のさらさらの髪の毛のイケメンに変身している。嘘はいかん、嘘は。
「あたしも行くからねーっ!」
めりーさんは、あたしの目の前でぴょんぴょんしてるし(笑)行きたいんだねぇ。
「ぷっ!」
あたしは、思わず噴き出した。だって、馬太郎が入口の所で顔半分だけ出して覗いているんだもん。
行きたいんかねぇ。
「あんたが行った後、城の管理出来る者はいるの?」
あたしは、馬太郎に聞いた。
馬太郎は、冷や汗を流しながら下を向いている。決まりだね。
あたしは、留守の間のメダカ達の世話のやり方を教えて、明日の朝一番で出掛ける事にした。
メリーさんは、あたしの部屋で椅子の上に丸めたシャツの中で既に寝息を立てている。泊まっていくんだね。
あ、そういえばこっちに来てから何も食べてなかった。
みのちゃんに言うと、野菜と肉のごろごろ入ったスープを持って来てくれた。パンとミルクも添えて。
小説に出てくる様な固いパンで無くてたすかったが、あまり美味しいものではなかった。スープに浸して食べるんだね。
スープは、それなりに美味しかった。
あたしは、明日に備えて早めに寝る事にした。
が、まだみのちゃんがあたしの部屋の前に立っている。
お気になさらずにって言われても気になるでしょう。ここの警護はいいから休んで下さいと何度もお願いして
やっといなくなってくれた。
はぁ、なんかとっても疲れる一日だった。環境も一転したし、驚きの一日だったなぁ。
まさか、魔王にされるなんて聞いてないっちゅうの。もう!ぷんぷん。
他のみんなは、無事転移出来たのかなぁ?まさか、明日行く街に居たりして。お互い出会って判るんだろうか?
あたしは、元の姿になって行くから見れば判ると思うんだけど、みんなはどうだろうか?
まさか!みのちゃんが実はクラスメイトだった、なんて事は ないよねぇ。
みんな、元の世界の記憶を持って転移してきてるのかなぁ?その辺は先輩達からは聞いてなかったなぁ。
みんなは、人間なのかな?あたしの事発覚したらみんなに笑われるかなぁ?なんか、みんなに逢いたくないような。
なんて考えていたら神経が高ぶってきて、寝れないよぉ~。どうしよう~!などと考えていたら・・・。
考えていた はずだった が、爆睡していたのかメリーさんに起こされる迄よだれを垂らして寝ていたのは内緒である。
メリーさんがクラスメイトだったら、、、やばい。ワイロを渡すか恐怖を与えないと だな。
こっちも要観察だな。
初めての作品になります。
本作品ががあなたの興味を引いて頂くものであれば幸いです。すごっく嬉しいです。
誤字・脱字は、ふふって笑ってやってねー。(笑)
気楽に勝手気ままで怖い物知らずなヒロインです。
暖かく見守ってやって下さーーい。
P.S.
我が家で産まれたメダカの稚魚が850匹を超えました。(笑)
水槽がたりませーん!