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異世界転移は義務教育  作者: 黒みゆき
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6.めりーさん?

 ああ、なんて不幸なんだろうあたしって。ただ毎日平和にメダカを増やして暮らしたいだけなのに。

異世界転移が義務教育なんて信じられない!

おまけに、あたしだけ人でなく魔王だなんて。

おまけに、おまけに、メダカ同伴だなんて。

今のあたしの最優先課題は、メダカの餌の確保。

何とかしなきゃ・・・


 と、とりあえず全員の安否を確認しなくてわっ

あたしは、わたわたと水槽をひとつずつ確認して行った。だって、心配ぢゃあないかぁぁ・・・

親も針子(稚魚)も、いたって元気そうで一安心。のんきに泳いでいる。

 しかし、水槽がラックごと全て来ているとわ、一体どういう事だ?

水槽も電源も来ているのに、粉餌も餌用のゾウリムシもクロレラも無いとは、あたしのサバイバル野力能力が試されているのか?

とことん意地が悪い。あのやろーエゲレスから赴任して来たらしいが、日本に喧嘩売るつもりかぁ?受けて立とうぢゃないか!

あたしも大和撫子の一員でい、金髪やろーになんか負けねーからな。さっきも言ったけど、絶対に教育委員会に提訴してやる。ふんふんふん!!

 拳を握りしめて、肩を怒らせて床をドンドン踏みつけていたら、ふと後ろに気配を感じた。

「ん?」

 振り返って見ると、仁王立ちのみのちゃんと、みのちゃんの陰で震えているピクシーと思われる人影。

なぜ、そんなに震えている?あたし、そんなに怖い顔してたか?

「あ あたし、怖い顔してた?」

 おずおずとみのちゃんに聞いてみると、力いっぱい牛の頭を上下に振られてしまった。みのちゃんの腰の所ではピクシーさんも

ぶんぶんと頭を上下している。あちゃーっ、やってもうた。

「ごめんねー、怖がらせるつもりは無かったんだけど、怖がらせてしまったんだねぇ。ごめん、もうしわけない」

 あたしは、ぺこりと頭を下げた。これからお願い事をするのに、怖がらせてどうするよ。ねぇ。

 すると、こんどは、恐縮しきったピクシーさんが、みのちゃんからさっと離れて床の上で土下座をして頭を床にこすりつけている。

「ま 魔王様、どうか、どうか、食べないでくださいっ!」

「はっ?食べるって・・・」

なんでやねん。あたしゃあそんな悪魔みたいなのとちゃうねんでぇ。って魔王ではあるか。

 あたしは、土下座をするピクシーさんの前まで歩み寄り、片膝をついてその頭を優しくわしわしと撫でた。

どうしたらいいのかわからなかったので、親愛の情を示そうと思った。あたしなりに。

ピクシーさんは、一瞬ビクっとしたがされるがままになっている。まずい、まずいぞ。何とかしなければ。

 意を決したあたしは、ピクシーさんの脇の下に手を差し込みあたしの顔の高さまで持ち上げてみた。

 ピクシーさんは、手のひらに乗る位の大きさで、長い髪がサラサラしていて綺麗だ。背中には思ったより大きな羽が生えていた。

そして、そして、すんごく軽ーーい!たぶん目はぱっちりしていて可愛いんだろうな。

今は、涙でぐしゃぐしゃになってて可哀そうだ。って誰が泣かしたんでい  って、思わず自分に突っ込んでしまった。

大阪の友人が居るので、我を忘れるとついにせものの関西弁が出てしまう。

ピクシー、フェアリー、妖精 何が違うんだろう?名乗ったもん勝ち?みのちゃんがピクシーって言うんだから、ここではピクシーなんだろう。わからんけどね。

 ピクシーさんとしばらく見つめあってから、そっと下におろして涙を指で拭ってあげた。

「ごめんね、怖がらせて。あたしは新米の魔王らしいだけど、まりえっていう名前もあるんだ。あなたの名前教えてくれるかな?」

きょとんとした表情もまた可愛い。大きな目を目一杯開いて首をかしげている。

「マ  リ  エ  様?  私はこの森のピクシー、アルシアン一族族長が娘 メリー・アルシアンと申します。以後、お見知り置きを」

 メリー?ひ つ じ? めりーさんの羊?だんだん家に近づいて来る奴?後ろを見ると立ってる奴?

 メリーと名乗るピクシーさんは、再び土下座へと戻っていった。

 まいったね、こりゃ。

「あのねメリー、普通にして貰えるかな?あたしは、脅している訳でも脅迫している訳でも、威嚇している訳でもないの。

困った事があって、メリーの知恵を借りたくて来てもらっただけなので、そんなに恐縮されると話が出来ないよ」

 ため息をつきながらメリーさんの事を見ていると、ややあってそろりそろりと上目遣いでこちらの様子をうかがいながら

恐々と頭を上げてくる。

 メリー、上目遣いじゃせっかくの可愛い顔が台無しだよ。

まだ、そろりそろりと上目遣いをしている。ぷっ、おかしい ちょーおかしい。上目遣いでちらちらとこちらをうかがう表情が

だめだ!もう我慢できないっ!!

「ぷうーーっ!!あっはっはっはっはっはっ!!」

「ひーひーひーおっかしーーー!!」

 あたしは、我慢できなくなり膝に両手をついたまま吹き出してしまった」

メリーは、何が起こったのか理解出来なくて、呆然としている。みのちゃんは、相変わらず無表情だが。

ひとしきり笑った後、あたしはメリーさんの前にぺたりと正座して優しく、出来るだけ優しく、天使の様に優しく話しかけた。(魔王なのに?)

「あたしは、この世界に来たばかりだから話し相手がいないんだ。初めての話し相手になってくれないかな?」

「これは命令でなく、お願いよ。あたしからのお願い。無理かな?」

 メリーさんはまったく想定外の言葉を聞いたという様な顔をして、恐る恐る聞いてきた。

「話し相手・・・ですか?」

「そう、まずはメリーと仲良くなりたいんだ。その上で相談に乗って欲しい」

 食べられないと分かって少し安心したのか、表情の硬さが取れてきたメリーさん。

「私で魔王様の相談なんか乗れるのでしょうか?」

「マリエだよ」

「マリエ   様」

 ま、いいか。とにかく餌の問題を解決するのが最優先事項だ。

あたしは立ち上がって手を差し出す。メリーはさん、恐る恐る手を出してきた。あたしは、手を引いてメリーさんを立たせ部屋の中に誘った。あたしのメダカ部屋(今、命名)に。


 部屋に入ったメリーさんは、見たこともないガラスの水槽群を前に言葉を無くしていた。そりゃあそうだろうなぁ。

ガラスなんか見た事もないだろうし、魚は食べる物ではあっても鑑賞の為に飼うなんて発想自体がないと思うよ。

これは、人間のエゴだもんなぁ。軽蔑されたかなぁ?いや、大丈夫そうだ。メリーさんは、目をうるうるさせながら

水槽に顔をこすりつける様にして、と言うか水槽に張り付く様にして見入っている。食べないでよねぇ。

メリー 口が開いたままだよー。((笑)

一つ一つ順番に水槽を観察しているので、なんか声を掛けずらい。満足するまで見守ってあげるか。

 この世界には、メダカはいないのかな?こんなに食いつくとは思わなかったよ。見ていて微笑ましい。

まるで小さい子供を見ているみたいだ。確かに小さな子供みたいではあるんだがねぇ。


 まずは、餌の確保でしょう?それから、ろ過器のフィルターだけど交換出来ないから毎回洗うしかないかな?

落ち着いたら代用品探さないとねー。水槽の増設は、、、、絶望的だよなあ、庭に池でも掘るしかないか。

魔王の権力で労働力を集める のは、さすがに職権乱用になるか。


 なんて考えていたら、水槽を観察し終え満足したメリーさんがこちらを見ていた。

「どう?満足した?」

「お待たせしてしまいまして、申し訳ございません」

 まだ硬いなぁ。

「この魚は何なのでしょうか?食用にしては小さくて食べる所が無いように見受けられますが?」

 やはり、鑑賞という概念はないんだね。

「この子達は、メダカと言って見て楽しむ魚なんだ。あたしの趣味ね。あ、趣味って解るかな?」

「はい、なんとなく理解できます」

 頭の回転の速い子だね、よかった。


「それで相談というのは、この子達の餌に困っているんだよ」

「餌 ですか?」

「そう、何かないもんだろうか?雑食性だから口に入る大きさなら何でも食べると思うんだが」

 んーっと暫く考えていたメリーさんが、何かを思いついたように手を叩いてこちらを見てきた。

「いいものがありますよ。ここの南の森の中に沼があるのですが、その沼は藻が一杯生えていて水が緑色をしているんです。

よく、魚がぱくぱくと水面の緑色の藻を食べているんです。それなら食べられるのではないでしょうか?」

 おーっ!なんて満点な答え。

「すばらしい!メリー、よく思い出してくれたねー。ありがとうっ感謝するよ」

 あたしは、思わずメリーさんに抱きつき頬ずりをしていたんだ。だって本当に嬉しかったんだもん。

メリーさんは、痛そうだったが、気にしない。あたし、性格悪くなったかな?悪魔になりつつあるのかな?

そんな事は些細な事よ。すぐに採取しに行かないとっ。

「メリー、あたしをその沼まで案内してくれる?」

 こくこく頷いたメリーさんは嬉しそうに満面の笑みで胸を張ってあたしに即答してくれた。

「ハイッ!喜んで。すぐに案内しますね」

 そんなに食べられなかったのが嬉しかったのだろうか。喜怒哀楽のはっきりした子だ。あたしの好みだな。


 あたしは振り返って、仁王立ちのままのみのちゃんに声を掛けた。

「あたし、メリーと沼に行って来るから」

「承知致しました、それでは採取用の壺を用意しましょう。わたしがお持ちしたい所ですが大きく重いので

あの沼の周りのぬかっている地面ではわたしの体重ではもぐってしまうので、他の者を選抜して随伴させましょう」

「城の門の所でお待ち下さい」

 そう言うと、みのちゃんは部屋を出て行った。有能な秘書って感じかな?頭は牛だけど。


 あたしは、メリーさんと城門へと向かったのだった。

 勿論出口は分からないから、メリーさんに案内して貰ったけどね。


 城門でメリーさんと話しながら待っていると、人型の魔物が4人、各々が一抱えもある壺 と言うよりも 瓶を抱えて現れた。

全身は緑色で耳は尖っている。鼻も凄いわし鼻だ。身長は大人の人間よりもやや小さいかな?


「あれは、ゴブリンよ。知能は低いんだけど、命令にはきちんと服従するの」

 メリーさんが教えてくれた。

 彼らは横一列に並んだまま、こちらを見ている。表情の無い顔で、何を考えているのかわからないなぁ。

どうしようか。何かいう事は無いのかなぁ?一応上司だよ、あたしゃあ。

「彼らは具体的にわかり易く命令を出してあげないと動きませんよ。知能がそれほど高くないので、命令は一つずつ簡潔に  です。

命令された通りに動きますから。複雑だと、訳が分からなくなってパニックになります」

 なるほどぉ、まるでコンピューターにプログラミングするようだね。


 あたしは、コホンと咳ばらいをひとつ。緊張するねー。

「じゃあ、これから南の森の中の沼まで藻を取りに行くから、みんな瓶を1個づつ持って一列でついて来てね」

 ゴブリン部隊は、黙ってのろのろと動き出した。

 メリーさんは、自前の羽でぱたぱたと飛んで先導してくれている。

下草が腰のあたりまで生えていたが、苦も無く歩けた。ゴブリン達はあたしの作った道の跡を歩いて来ている。

大丈夫そうだね。良かった。

 途中何事もなく20分位で目的地の沼に着いた。

本当に緑の沼だねえ。これ、クロレラでね?見た感じはあたしの培養していたクロレラと一緒な気がするんだが・・・

とりあえず、バケツの様な容器を持って来たので、これを使っで緑の水を汲んだのだが、なんかかなり重そうなんですが。

瓶は高さが1メートル位あるから30リットルは入っていそう。30キロかあ、かれらに持てるかなぁ?

「戻るよー。重いから気を付けて持って来てね」

 と、声を掛けて来た道を戻った。帰りはさすがに、倍の時間がかかったが、彼らはよく頑張ってくれた。

メダカ部屋に瓶を運び込んで陽の入る窓の下に瓶を置いて貰った。彼らに礼を言って休んでもらった。

今後は定期的に運んで貰おうっと。ごめんね、ゴブリン君達。


 さて、このまま与えて良いのだろうか?あたし、何の知識も無いからなぁ。

あたしが味見してもしょうがないもんねー。

うーん、悩んでいてもしょうがないか。試しに白めだか1号水槽で試してみるか。

毒だったらごめんねー。あの馬鹿担任を力一杯ぶちのめすから許してねー。

なむなむなむと手を合わせてから、まずは少量を木のスプーンで水槽に入れてみた。

 ドキドキドキ・・・

 おそるおそる覗いていると、そんなこちらの心配なんて知らない彼らは水面に群がってぱくぱく食べ始めた。

だ 大丈夫 かな? 今の所変化は無い様だけど  まだわからん。

暫くは要観察だな。

 あたしは、水槽の前で、メリーさんと座り込んでメダカの観察をするのだった。


初めての作品になります。

本作品ががあなたの興味を引いて頂くものであれば幸いです。すごっく嬉しいです。

誤字・脱字は、ふふって笑ってやってねー。(笑)

 気楽に勝手気ままで怖い物知らずなヒロインです。

暖かく見守ってやって下さーーい。


P.S.

我が家で産まれたメダカの稚魚が800匹を超えました。(笑)

水槽がたりませーん!


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