5.お前達まで?
ああ、なんて不幸なんだろうあたしって。ただ毎日平和にメダカを増やして暮らしたいだけなのに。
異世界転移が義務教育なんて信じられない!
おまけに、あたしだけ人でなく魔王だなんて。
おまけに、おまけに、メダカ同伴だなんて。
どうせなら、圧倒的な戦力をくれーーーっ!!
使える部下が2匹だけなんて。ぐれてやるーーーーっ!!
とりあえず、メダカの餌なんとかしなくちゃ。
とりあえず、あたしの立ち位置は 魔王 だそうな。
納得は出来ないが、事態は変わらなそうだから納得する事にした。
考えてもしょーがないから、城内を見て回る事にした。
町民の娘にでもしてくれれば、楽ができたのに、何であたしが困難を背負わなきゃならないんだ?
ま、畑仕事に明け暮れるよりは、あたし好みではあるが、この状況は大群相手の戦略の試験なんだろうか?
そんなの、意味ある?学校の意図がわからないよ。
ぶつぶつ文句を言いながら部屋から出てみると、今度は下半身が馬の人が居た!
なんか、偉そうに見下ろしてくる。こいつはケンタウロスか?
もう驚かないぞ。眼つきが悪くて少しビビったが・・・こいつがグリメリウスか?
「ちっ、今度の魔王様は小娘かっ!]
言うに事欠いて、それ?失礼じゃない?あたしだって、来たくて来たんじゃ無いわよ。むかつくーー!
「おいっ、グリメリウス!いくら何でも失礼だぞ、控えよ!そういう事は、思っても言わないもんだ」
すかさずみのちゃんがフォローに入ってくれるが、フォローになってないぞっ、おい。
「ふんっ」
うまさん(仮)は、みのちゃんの注意を無視して走って行ってしまった。
あたしは、事態に頭の処理が追い付かず呆然と走り去る馬男の後ろ姿を眺めていた。あいつ、あたしの部下なんだよね?とんでもねー奴だ。
馬の人はグリメリウスで良かったらしい、でもむかついたから絶対呼んでやらない。馬太郎でいいや。
決まりっ、お前の名前は、馬太郎(決定)だ。
「馬太郎は、いつもあんな感じなの?」
あたしは、なにげに聞いてみた。
「大変申し訳ございません、若干へそ曲がりで頑固のところがありまして、根は良い奴なのです。よっく言い聞かせておきますれば
本日のところは、平にご容赦を?」
「馬太郎・・・ですか?」
すまなそうに首を垂れながら、首を捻るみのちゃんであった。
「あんたも、そう思ってるんだ」
「滅相も御座いませぬ、わたしはその様なことは決して思っても申しません」
「!?」
「思ってるんだ・・・」
あわあわしているみのちゃんを置いて、てとてとと歩き出したあたし。みのちゃん決定!
ま、しょうがないか、威厳も実績も何もないからねぇ。威張りたい訳でもないからいいんだけどねー。
さほど広くない城だが、それでも昔あった東京ドームとやら3個分位はある。
歩いてみると意外と疲れるものだなぁ。
城自体は、基本石で出来ており、中世の西洋の古城チックではあるが、装飾の類は全然なく
いかにも、最前線の出城?そんな感じだねぇ。城の周りには堀が巡らされていて戦いを想定されているのが感じられる。
塔の高さは200メートルはあるだろうか?あたしの住んでいたマンションより高い感じかな。
中は5階層になっているようだ。
階段を登ったり降りたり、扉をいくつかくぐり抜けたりしてたら塔の最上階に着いた。
ビルに囲まれて育ったあたしには、とても新鮮な感じがした。こんなに空が青いのもびっくりだ。
塔の最上階からの眺めは抜群で、遥か彼方まで見渡せる。建物がないからねぇ、まわりには、森が広がっていて森に沿って大きな川が流れている。
その先は、見渡す限り荒野が広がっている。この森がこの城のテリトリーらしい。
この城にはみのちゃんと馬太郎の二人の将軍と小物のまものが少数しかいないようだ。
魔国には、万単位で強者が終結しているとか。勝てる訳ないじゃん攻めて来たらさ。さっさと逃げ出すのが賢明だな。
みのちゃん達には悪いけど、ここで討ち死にする義理ないもん。家に帰るまでの1年間どこか静かな所でスローライフでも
して時間をかせぐさ。頭に角があるから、人里には行けないしね。
ちなみに、異世界転移ってチート能力が付いていたり、ギフトと呼ばれる様々なものがあるって本で読んだけど
あたしにも何かあるのかな?
魔王なんだから、膨大な魔力と膨大な魔法の数々。体力なんかも凄いんだろうなぁ。
魔王の剣に魔王の鎧、切られてもダメージを受けないスキルとか、一瞬で体力が全回復するとか。
なんか、わくわくしてきた。あたしってたーんじゅーん(笑)
ちょっと、いやかなり気になる。どうすれば確認出来るんだろう?
異世界転生小説で読んだことがあるぞ。すてーたすおーぷん っていうのが定番 だったかな?やった事が無いし、自分が使う立場になるとは、お釈迦様でもわけるめぇ。
なんちゃってね、えへへ。
試しにやってみるか。でも誰かに見られたら恥ずかしいから、塔のてっぺんでこそっと・・・
「ステータス オープン」
おおっ!出てきた。
目の前の空間に、3D映像の様な画面が開いた。
名前 : シオリ そのまんまやん!
職業 : 魔王 魔王って職業なの?
体力 : 10 HPとかの表記じゃないんかい! おまけに、ザコぢゃんこの値
魔力 : 10 魔王の能力 ちゃうやん(泣)
レベル : 1 1? いち~~~~~~~~~~~~?????
特殊スキル その内 その内ってなんやねんっ!!ばかにされてる?ねぇねぇ、ば かにしてるぅ?
装備 : 魔王の服 手ぶらかいいいいいいぃ!!
魔法 : 魔物創造 使用魔力量 10 1回しか使えないやん!!
レベルが上がるにしたがい、強い魔物が呼び出せるが、今はスライムのみ
なんなの?なんなの?なんなの?なんなの?これって、一体なんなのおぉぉぉぉ!!!!!!!
ま まるで、昔書籍化されていた本に書いてあった、かわいそうで、生きててもしょうがない生き物みたいじゃないっ!!
あたし、巻頭カラーで見開きで掲載される自信 あるかも。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! これっていじめぢゃん!! 死ねっていうんかいいいいいいぃ!
もう いい。 学校側の物凄い悪意を感じる。素直で真面目な生徒だったのに、成績も上位だったのに、
なんか、いっきにやる気失せた。最初からやる気なんてなかったけど。
元の世界に戻りたくなくなった。もし、戻る事になったら担任を殴ろう!あたしは、心に強く誓った。
今すぐにここから逃げ出そう。もう、1分も居たくないっ!こんな所に居たら殺されちゃう。
体力無いけど、走って逃げる事くらいは出来るだろう。野生動物も魔王の恰好しているから襲っては来ないだろう。
うん、大丈夫。きっと大丈夫 のばず。 大丈夫であって欲しい。
料理はやった事ないけど、なんとかなるはず。きっと。根拠は無いけど・・・
魔王だから、何喰っても大丈夫だろう。貢物もあるかもしれない。
あたしは、塔の階段を一気に駆け下りた。途中、驚く魔物に何匹か出会ったが、気にしない。
今、一番気にしなくてはならない事は、、、、、出口を探す事。城内で迷子になった様だ。
階段を闇雲に駆け降りていたら、どこに居るかわからなくなった。降りる階段が無くなった。
自慢じゃないが、あたしは方向感覚が まるで無い。いった道を真っ直ぐ戻って来る事も怪しい。
だからという訳ではないが、家からほとんど出ずに引きこもっていた。
メダカ用品もネット注文だったし。
なんとかせんと、担任を殴りに行く事も出来ない。くそう。。。
階段を何度も昇り降りして、片っ端からドアを開けまくって、何個目かのドアを開けた時だった。
あたしは、見てはいけない物を見てしまった。
なぜ?どうして?なんで?ほわい? あたしは知ってる限りの疑問の言葉を投げかけた。
誰に対して投げかけているのか自分でもわからないが、口から漏れ出していた。
叫ばずにはいられなかった。この世界に来てから、何でこんなに驚いてばかありなんだろうか?
ドアを開けたあたしは、そのままの態勢で固まってしまった。ここに来てから、何度目のフリーズだろう。
目は開いているが、既に何も見えていない。思考が頭の中でループしていて、何も考えがまとまらない。
思考が停止するってこういう事なんだ・・・などと、とりとめもない事を思っていた。
だって、だって、そこにある物は、、、あるはずの無い物。ある理由の無い物。
「 お お前達、なんでここに居るんだよーーーーっ!」
そこにあったものは、あたしのメダカ達なんだよーーっ!!
メダカ達が、水槽ごといるんだよーーーーーーっ!!
メダカ達が、ラックに積んだ水槽ごといるんだよーーーーーーっ!!
ねっ?理解不能でしょ?こんなのありえない!なんでこの子達があぁぁぁぁぁっ!
思わず、膝から崩れ落ちたあたしの後ろ上方から聞き覚えのある大声が。
「陛下、これは一体何なのでしょう?」
不思議そうに覗き込んでいるみのちゃんだった。いつの間に追いついて来たんだ?
足音、聞こえなかったぞ?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
気を取り直すと、おもむろに立ち上がりあたしはみのちゃんに宣言した。
「これは、あたしの大切なものだから、誰もこの部屋に入らないように」
母は強し なのだ。めだかの母はメダカを守らないといけない。ぱにくってばかりいられない。
「かしこまりました」
不思議そうな顔(たぶん)をしながらも、みのちゃんは了解してくれたようだ。
そして、あたしより冷静であったみのちゃんは、とてもとても大切な質問をするのだった。
「これは、魚のようですが、餌はどうするので?」
「!!!!!!!!!!!!!」
オーマイガー! 餌!ここは異世界、餌なんてあろうはずもないし、配達もありえない!
どうしよう、どうしよう、考えるんだ。何か方法があるはず。
餌になりそうな物を探さないと。メダカは雑食だから何でもいいはず。野菜?虫?
この世界の物を食べさせてもいいのだろうか?いや、何かしら食べさせないと餓死するし。
そんな物をどこへ行って調達したらいいんだ??
うおーーーーっ!考えれば考える程わからーーーーん!
頭を抱えて悶えているあたしにみのちゃんは一つの提案をした。
「陛下、この城の森には、ピクシーが居ります。彼女達なら餌の心当たりがあるかもしれません。
呼んで参りましょうか?」
「ほえ?ぴくしぃ?」
思わず変な声を出してしまった。みのちゃん、なんていい人?なんだろう。
うるうるしながらも、お願いする事にした。他に方法が思いつかないんだもん。
「お願いします、出来ますれば大至急」
「承知いたしました」
そう言うと、みのちゃんは音もなく部屋を出て行った。
とりあえず、家出?は保留となった。この子達を何とかしなくちゃ。一人で逃げ出そうと思っていたのに
動けなくなっちゃったじゃないかぁぁぁぁ。くそー、あのバカ担任め!絶対に許さないからね。
その時、不思議な違和感を感じた。ぶくぶくぶくぶく・・・
なんで、エアレーションが動いているんだ?もしかしたら、ヒーターやろ過器も動いてる?
よく見ると何故かコードが壁まで延びていて壁の中に吸い込まれている。壁から電源が供給されているようだ。
電気、、、、来ているの?周波数大丈夫なのかな?電気代請求されないよねぇ。
んんんんっ もう深く考えるのはやめよう。ばかばかしくなってきた。
とりあえずは、餌だ。餌を何とかしないと。
まさかこの子達を送って来たのは、あたしをここから逃がさない為か?だとしたら、かなり有効な手段だ。
敵ながらあっぱれ、腕によりをかけて往復ビンタだ!蹴りも加えてやろう。半殺し決定だ!ふっふっふっ どうせ、あたしは魔王さっ 何したってOK!
初めての作品になります。
本作品ががあなたの興味を引いて頂くものであれば幸いです。すごっく嬉しいです。
誤字・脱字は、ふふって笑ってやってねー。(笑)
気楽に勝手気ままで怖い物知らずなヒロインです。
暖かく見守ってやって下さーーい。
P.S.
我が家で産まれたメダカが800匹超えました。(笑)
水槽が足りなーい!