4.ここはどこ?あたしは誰?
ああ、なんて不幸なんだろうあたしって。ただ毎日平和にメダカを増やして暮らしたいだけなのに。
異世界転移が義務教育なんて信じられない!
おまけに、あたしだけ人でなく魔王だなんて。
おまけに、おまけに、メダカ同伴だなんて。
どうせなら、圧倒的な戦力をくれーーーっ!!
使える部下が2匹だけなんて。ぐれてやるーーーーっ!!
目を覚ましたくはなかったが、突然目が覚めてしまった。
目を開けなければ良かったんだが、反射的に目を開いてしまった。
はて、ここはどこ?あたしは、ベッドに向かっていたはずなんだけど???
周りは石の壁?床も天井も石だ。20畳ほどもある石の 部屋?
壁が薄っすら光っているから暗くはないけど、なんか寒々とした部屋だ。
高窓にはステンドグラスがはまっている。
なんかヒンヤリしていて生活感がまったく感じられないのよねー。
おまけに、見覚えの無い趣味の悪い黒メインの体にぴったりする服を着ているし、、、
コスプレかあぁ?
いつ、、、いや、誰が着替えさせたんだ?おぞぞぞ。思わず寒気がして来たんですけど。
仮想空間への転移かとも思ったけど、この趣味の悪い服は悪夢以外にはありえない。
なにげに、頭には角のようなものもはえているし。これじゃ悪魔やん。
転移は、田舎の農村だよね?人間として生活するんだよね?
これは、夢だ!うん、そうに違いない。
考えてもしょうがないから、もう一度寝よっ。深く考えないのがあたしの長所。何にも考えていないとも言うが・・・。
目が覚めればあたしの部屋のはず。授業の時間だけど、もういいや。
「おやすみなさーい」
・・・・・・・・・・・・・・・・
だめだ!周りが気になって いや、メダカ達が気になって眠れない。
取り敢えず、部屋の外にでて現状把握をしないと。嘆き悲しむのは後でいい。
自分で言うのもなんだが、あたしって動じない性格だったんだね。知らなかった。
妙に落ち着いているのって どうなの?
意を決してベッドから降りようとしたその時・・・
どおおおおおおおんんんんんっ!!
何事っ!?
突然大音響と地響きを伴い、巨大なドアが開け放され巨大な物体が飛び込んで来た!
さすがのあたしもこれには驚いてベッドから転げ落ちて頭 いや、角をしこたま打ってしまった。
「陛下ーーーーーーっ!!」
物凄い大声で叫びながら突進して来た物体 いや、人影をみてベッドによじ登ったあたしは固まってしまった。
身の丈はゆうに2メートル。丸太のような腕。全身青い体。ついでに言うと上半身はだか!
頭は、頭は、、、ありえない! あれは、あれは うし!?
うしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!
体は人なのに、頭が牛??? みのたうるすさんですかぁ?
昔、ネットで見たことがあるフォルムだ。
あたしは、冷静だ! 絶対に冷静だ!おそらく冷静だ!たぶん冷静だ!?
・・・・・・・・・ちょっと自信が無くなってきたぞ。
盛大にパニクッている間に突進して来た怪物はいきなり抱きついてきたっ!!
「ぐえぇぇぇぇぇっ! 痛い痛い!苦しいっ!」
あたしは、反射的にそいつを突き飛ばしていた。体格差を考えたらほとんど無駄だと思えるのだが、咄嗟の時ってそのへんの処は考えないらしい。咄嗟だから。
必死の抵抗であるが、哀れに思った神様が奇跡を起こしてくれたのか、牛頭はトビラの脇の壁まで一直線に吹っ飛んで
壁を突き抜けて部屋の外に消え去っていた。
?????
あたしって、そんなに怪力だった?んなバカな・・・
一体何がどうなってるのーーーー!?
ダレカセツメイシテクダサーーーーーーイ
そして、今硬直しているあたしが居る。
やがてがれきの中からみのたうるすさんとおぼしき人影が立ち上がってきた。
そして、何事もなかったように、再び突撃してきたーーー!
涙を流しながら・・・
「陛下ーーーーーーっ!!」
へ い か ?
誰が?
思わず周りを見回してしまったが、あたししかいない。
あたしの事?
不覚にも、見回した分対応が遅れ再び猛烈なハグ?をされてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しまった!
「苦しいーーーーーーっ!!」
「苦しいから離してーーーーーーっ!!」「中身が出るーーーーーーーっ!!!」
ふと締め付ける様な力が消えた。良かった、言葉が通じた!
腕を離したみのたうるすのみのちゃん(仮称)は、片膝を床に付けて頭を下げ服従の姿勢をとっている。
危害を加える気はない のかな?
ちょっと安心したのか、冷静に考える事が出来る様になってきた。
陛下って事はあたしの部下なのかな?そんな設定もあるんだ。びっくり。
・・・・・・・・・・・・・・・・
なんか、気まずい雰囲気が漂いはじめたので、あたしは耐え切れずに声をかけてみた。
だって、膝まづいたまま動かないんだもん、あたしゃ泣きそうだよー。
「あ あのぉ・・・」
みのちゃんの肩がぴくっと動いた。このまま声を掛けていいのだろうか?
「あなたは誰ですか?」
「あたしは、なぜここに?」
「うおっ!!」
いきなりみのちゃんが頭をあげたぁぁ!ビビったぁ~ 心臓に良くないよおぉ。
「わが君、復活おめでとうございます」
「われわれ配下一同、長い間お待ちしておりました」
こ 声がでかいぃぃぃぃっ!
「復活?」
復活って言ったよね、今。陛下?わが君?あたし、支配者?どゆこと?
それに、ここはドコ?あたしは、何でこんな所にいるの?
「陛下はお目覚めになられたばかりで混乱されているご様子、不肖私めがご説明をさせて頂きます」
ここで、みのちゃんのながーい、ながーい説明が始まったのだが、聞けば聞くほど頭の中が混乱してくる。
メダカの水換えたーーーい(泣)
みのちゃん(仮称)の説明はひたすら長かったが、あたしの容量の小さな頭で要約すると、大体こんな感じであろうか?
この世界には人族の支配する広大な大陸があり、そのはるか南に魔物の支配する大きな島国があるそうな。
長年、人族と魔族は争いを繰り返していて、ああよくあるファンタジーの話だねと聞いてたんだ。設定作った人、能がないね。
そんな時、新たにリーダーに就任した魔王様は超平和主義だったそうで、人側に提案したんだって。
生きとし生ける者は皆兄弟。争いはやめましょう と。 元神父様?
争いをやめる条件として、魔族軍が占領した広大な占領地の放棄と軍の魔国への撤退を掲げたそうな。
その際、大陸の南端にある魔王軍の出城クリューバー・バレラ城とその周辺のみ、魔王側が保有し人側の侵入は禁止とする。
人族の侵略に対する監視の為だそうだ。
城に配置する魔物は、最低数に限定して人の領地には立ち入らない。
この条件で和解が成立して300年前に魔王軍は撤退をしたとか。
もちろん、魔王軍内部での反対は物凄かったらしく、内戦につぐ内戦だったらしい。落ち着くまでに250年程かかったらしい。
つまり、最近まで揉めていたって事だよね。
反対派が全面的に折れて、仲直りの宴が行われる事になったが、その席で魔王は暗殺されてしまったのだと。
本来なら力の差は歴然なので暗殺なんて簡単には出来ないはずなのだが、何故か魔王様は無抵抗で殺されたらしい。
本気で抵抗してたなら、反対派も半数以上は道連れになる所だったんだって、強いんだねー。
仲間思いなんだねー。でも、、、馬鹿だ。
で、新しく反対派のリーダーだったブライアン・ロジャースが魔王を名乗り魔王軍をまとめて再度大陸進行を目指し軍備増強を始めたらしい。
ちょっと待て!!
ブライアン・ロジャースって、うちの担任ぢゃあないかっ! やはり、仮想空間転移、学校の仕業かぁ!
で、話を続けるとだな
今あたしが居るのが大陸南端の魔王軍の出城クリューバー・バレラ城で、ここに残っている者は前魔王様派の平和主義者ばかりで、
魔王軍からも人族からも敵視されているという、誠に面倒な状況にあるらしい。
魔王軍の侵攻が始まったら真っ先に攻略されるであろうと。本国?との連絡はまったく取れないらしい。見捨てられたか。ふっ。
そんな折、あたしが魔王として転生されて来たので、彼から陛下と呼ばれたらしい。
ここに来てまで ぐーるぐーるぐーる 頭ン中 ぐるぐるだよー。
いったい、あたしに何しろっていうんだよー。
あたしは、ただの女の子だよー!
あたしに出来るのは、メダカの飼育だけだよー!
学校は、何が目的なんだよーーーーーー!!
第一、魔王だって言うなら魔王の国に転移するんでないの?何で最前線の出城?
かしずく大勢の部下は?
突っ込み所満載ぢゃーーーーん!
ちなみに、みのちゃんの本名はカイルと言うらしい。でも、あたしは みのちゃんと呼称する事にした。(決定)この城においては、NO2だそうで、偉い人?だったんだね。
他にもグリメリウスと言うNO2の将軍も居るそうだけど、まだ見てないなあ。NO1? それは、あたしなんだって魔王だから。
補足として、魔物は自分達では増える事が出来ないらしい。増やせるのは、魔王の魔法もしくは人族の女性を使って増やすしかないそうだ。
内戦で、兵力が弱体化してしまった魔族は、大陸へ侵攻して人族の女性を奪取するのが目的のようだ。子孫を増やす為に。。
あたしには関係無いけど、酷い話しだよねー。教育機関がこんな設定をしていいのか?
教育上よろしくないのではないの?
帰ったら、教育委員会に通報してやるんだ。あたしは、強く心に誓った。
初めての作品になります。
本作品ががあなたの興味を引いて頂くものであれば幸いです。すごっく嬉しいです。
誤字・脱字は、ふふって笑ってやってねー。(笑)
気楽に勝手気ままで怖い物知らずなヒロインです。
暖かく見守ってやって下さーーい。